時代が大きく動くのか?
新規参入する4歳世代がマイル界の一変を目指す。
2022年のマイル界は時代が切り替わる年でもありました。
安田記念はソングラインが制しましたが、同馬は秋に米国遠征を予定していたものの取り止めに。2着だったシュネルマイスターは秋のマイルCSで5着に敗れ、同レースを制したのは現4歳世代のセリフォスでした。際どい勝負になった2着争いを尻目に、2着に明らかな差をつけて勝ったセリフォスの強さが光った一方、昨年春のNHKマイルカップを勝ったダノンスコーピオンが11着だったので現4歳世代の評価が定まっていないとも言えます。
2023年になり、そんな状況下で行われる東京新聞杯に現4歳世代の有力馬が古馬のマイル界に多数の馬が初参戦してきます。このレースで4歳勢が上位を独占すれば、一気にマイル界の勢力図が変わっていくでしょう。
4歳馬の立ち位置を確認するという意味でも今年の東京新聞杯は今後のマイル界を占う重要なレースと言えます。
2023年 東京新聞杯 有力馬紹介
ナミュール - 直線での切れは世代屈指! 得意のマイル戦で真価を見せるか。
このレースで最注目なのがナミュールです。
昨年はチューリップ賞を制して桜花賞でも1番人気に推されましたが、大外枠に入ってしまい、前半がスローの流れで内、前が有利の展開になってしまって10着と大敗。オークスは内をうまく捌いてきたものの3着に敗れてしまいました。
秋華賞はぶっつけだった影響もありつつ2着と健闘。エリザベス女王杯は道悪でしたし、接触もあって参考外の競馬と言えます。
ただ、これまでの走りを見る限り、オークスや秋華賞の競馬から折り合えば2000M以上でも距離は保てるところを示しましたが、競馬の内容として一番強かったのが阪神JFやチューリップ賞の1600Mだったのは明らかではないでしょうか。折り合いを気にすることなく脚をためて、東京コースの長い直線で切れを発揮できれば牡馬相手でも勝ち切る可能性十分と言えます。
昨年の春には桜花賞候補と呼ばれた同馬。今回はマイル界での立ち位置を確認する一戦。
今後を占うレースと言えるでしょう。
プレサージュリフト - 後の二冠牝馬を撃破した東京芝1600M。名手を迎えて勝利を目指す。
同じくマイルの距離で注目なのがプレサージュリフトです。
昨年はクイーンカップを制しましたが、負かしたのが後の二冠牝馬スターズオンアースですから、価値ある勝利と言えます。続く桜花賞ではナミュール同様内、前が有利な展開に泣いて11着。その後も牝馬クラシックでは結果が出ませんでしたが、年が明けた京都金杯では3着と健闘しました。
3歳時は後方を進んで直線で外を回して追い込んでくる競馬をしていましたが、年明けの金杯では出遅れながらも押して内の4番手を確保し、直線では内目から抜け出し残り200Mで先頭に立つという立ち回りの巧さを見せました。
今回は新馬、クイーンカップで連勝した東京芝1600Mでのレースになりますし、何より先週土曜で6勝と無双状態だったルメール騎手が騎乗。強敵相手でも互角以上に戦えるのではないでしょうか。
最大限に力を発揮できる舞台設定なのは間違いないところです。
ピンハイ - 『一つ後の秋華賞に出ていたら…』。その想像を超越する走りを見せられるか。
直線での切れという点ではピンハイにも注目です。
昨年のチューリップ賞では13番人気ながら2着と健闘。その後、桜花賞では5着、オークスでは4着と健闘したものの賞金加算ができずに終わります。秋は自己条件の3勝クラスで、秋華賞の1レース前の西宮S(阪神芝1800M)に出走になりましたが、直線で外から豪快に差し切りました。このレースぶりから『秋華賞に出ていればなあ』と思わせるのに十分な走りを見せました。
実はこの「秋華賞の1つ前のレース」というのは隠れた出世レースでもあります。
20年は後に大阪杯を勝つレイパパレが、21年は後にエリザベス女王杯を勝ったジェラルディーナが勝ちましたが、2頭とも『次のレースの秋華賞に出ていればなあ』と思わせる勝ちっぷりでもありました。
22年の秋華賞のひとつ前のレースを勝ったピンハイもそれに続けるか、というところですが、実力と実績は十分。直線での切れも上記2頭と比較しても遜色ないと言えるでしょう。ここで重賞初制覇となる可能性も十分です。
インダストリア - 関東マイル界の秘密兵器
4歳世代ではインダストリアも注目です。
未勝利、ジュニアカップ(OP)と連勝し、関東のマイル戦線では中心の1頭になりましたが、次走は2000Mの弥生賞ディープインパクト記念で5着の後はNHKマイルに出走し5着。道中は勝ち馬の後ろを進みましたが伸び切れずに終わります。ただ、NHKマイルカップ4着馬が後にマイルCSを勝ったセリフォスだったことを考えるとまずまずの結果と言えます。
次走はダートのユニコーンSに出走しましたが大敗。そこから半年休んで年末のカウントダウンSでは残り200Mでもまだ馬群の中にいましたが、残り100Mで一気に伸びて差し切りは力の違いを見せつけました。
やはり芝のマイル戦なら重賞級と言えるでしょう。今回は同世代の牝馬が中心ではありますが、彼女たちは対牡馬のマイル界に入ってどうか、という面もあります。
昨年のNHKマイルカップ組の上位だったダノンスコーピオン、セリフォスのレベルの高さを考えればここで結果を出せる可能性十分でしょう。
ジャスティンカフェ - 毎日王冠2着は伊達ではない!?
ここまで4歳世代を中心に話してきましたが、5歳以上の中心的存在はジャスティンカフェでしょう。
昨年は2勝クラス、3勝クラスと連勝し、初重賞のエプソムカップでは4着でしたが、秋初戦の毎日王冠ではレコード決着のなか2着と健闘。同レースでは3着馬がダノンザキッド、4着馬はレイパパレと、G1馬でした。
5着馬は先日AJCCを勝ったノースブリッジですからレベルの高さは相当です。元々、1600Mが中心のマイル界よりも2000Mを中心にした中距離界の方がレベルが高く、その頂点である天皇賞秋の前哨戦だった毎日王冠。G1馬が集ったレベルの高さは明らかで、レコード決着はそれを裏付けます。
続くマイルCSでは6着でしたが、追い出しを待たされた面もあって力負けではありませんでした。能力を発揮しやすい東京コースで毎日王冠の時のような走りができれば力上位は明らかです。スムーズに走れればG1でも勝ち負けできると思わせるような走りを見せてくれるでしょうし、4歳世代にとって大きな壁になることでしょう。
ウインカーネリアン - 新たな目標を定めて
昨年マイル界で活躍したという点ではウインカーネリアンも注目です。
21年のダービー卿CTを除外後、長期休養になってしまいましたが、復帰後2戦目の谷川岳Sで自厩舎所属の三浦騎手で勝利。その後サマーマイルシリーズへ目標を定めます。鹿戸調教師からサマーマイルシリーズへの参戦を任された三浦騎手で米子S、関屋記念と連勝でサマーマイルシリーズを制しました。
上記の馬たちの様な華々しいエリートコースではありませんが、じっくりキャリアと実力を積んで重賞制覇した叩き上げの馬が、若いエリートに勝負を挑む姿は魅力十分。追い込み馬が多いメンバー構成で展開に恵まれる可能性ありと言える馬でしょう。
さて、今回の東京新聞杯は、2月の重賞とは思えないほど有力馬が揃ったレースになりました。
しかも、4歳世代を中心にしたフレッシュなメンバーが集いました。各世代が揃ったメンバー構成なのに意外に思われるかもしれませんが、昨年の安田記念に出走したのはエアロロノアのみ。新しくマイル界に参入する馬がいかに多く、マイル界が大きく動いているのが分かるかと思います。
ここから4歳世代がマイル界を席巻していくのか? 更に混沌とした戦国マイル界となるのか? と、注目のレースになるのは間違いありません。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
写真:かぼす