[フェブラリーS]レモンポップが中心も、多彩なメンバーが揃ったダートの頂上決定戦。 - 重賞プレビュー

スピード重視に変化してきたフェブラリーS

今週は2023年最初のG1であるフェブラリーSが行われます。ギルデッドミラーの引退は残念ですが、有力馬が揃って楽しみなレースになりそうです。

近年は1800Mや2000Mで強い馬が世界最高の賞金額を誇るサウジカップに出走する馬が多くなって、フェブラリーSの性質や傾向が変わりつつあります。以前は1800Mのチャンピオンズカップや東海SからフェブラリーSへと進む馬も多くいましたが、今年はタガノビューティーとオーベルニュの2頭だけ。1400Mの根岸SからフェブラリーSへと向かう馬がより多くなり、1400Mにも適性のあるスピード重視のメンバー構成へと変化しました。

根岸S レース回顧

フェブラリーSがよりスピード重視になったという事もありますが、今年のフェブラリーSは根岸S組が中心になりますのでその回顧からしていきましょう。

勝ちタイム:1分22秒5 (良)

勝ち馬:レモンポップ 2着:ギルデッドミラー 3着:バトルクライ

12.2-11.0-11.4-12.0-11.9-11.6-12.4

前半600M 34秒6  上り4ハロン 47秒9  3ハロン 35秒9

前半600Mが34秒6と速い流れながらもそのままペースが落ちずに進み、残り200Mまで速い流れで進む持続力勝負。

ずっと速い流れで進んだので、さすがに残り200Mからは12秒4とやや脚が止まった底力勝負になったが、速い流れの中で早め先頭に立ったレモンポップの持続力と底力が光った。

まさにフェブラリーSの前哨戦に相応しい、ハイレベルなレースだったと言える。

レモンポップ - スピードの持続力は現役屈指。残り200Mを凌げるか。

根岸Sは速い流れの中で早め先頭から押し切ったレモンポップ。この一戦は完勝と言えます。ラスト200Mでやや脚が止まっていましたのでゴール前でギルデッドミラーに半馬身差まで迫られましたが、そのギルデッドミラーが引退したので他の根岸S出走組とは力の差があると思われます。

ライバルたちは、他の前哨戦を使ってきた馬たちでしょうか。不安点としては距離延長と、G1の本番でこれまで騎乗していた戸崎騎手から坂井騎手に乗り替わる点。能力が高いのは確かですが、不安要素があるのは確かなところでしょう。

ケンシンコウ - 根岸Sで光った末脚。距離が延びて前進できるか?

根岸Sで、後方から追い込んできたケンシンコウの末脚にも注目でしょう。根岸Sでは初めての1400Mだったので1頭離れた最後方。そこから大外を回して追い込んできましたが、前の4頭に追いつけず6着まで。上り3ハロンはタガノビューティーと同じ35秒3でしたが道中で最後方だったので、その分の差が出ました。

フェブラリーSでも根岸Sと同様に前が速くなった場合、前半でついていけない可能性はありそうです。理想は、前走よりもう少し前目に位置しつつ、速い上りを繰り出す競馬でしょう。

テイエムサウスダン、ヘリオス - 根岸Sで先行した馬たちの巻き返しはあるのか?

根岸Sは前半がかなり速い流れだったので、先行したテイエムサウスダンとヘリオスの巻き返しがあるかも考えたいところです。

テイエムサウスダンは叩き2走目で期待したいですし、ヘリオスも隣のオーロラテソーロとスタート直後から激しいハナ争いになってしまったので展開負けとも言えます。

ただ、フェブラリーSでも先行馬が多く、ペースが速くなる可能性が高いですし、早めにレモンポップが先頭に立とうとするので根岸Sと同様にかなり展開は厳しくなりそうです。前半のペースに注目です。

別路線組からのライバルたち

メイショウハリオ - 帝王賞勝ち馬が久々にマイル戦へ挑戦。

根岸S組ではレモンポップがかなり有力で明確な対抗馬がいないと考えるなら、別路線から参戦する馬に注目が集まるでしょう。その代表格が昨年の帝王賞勝ちのメイショウハリオです。

帝王賞ではテーオーケインズやオメガパフュームといった実力馬を相手に中団から差して押し切り勝ち。JBCクラシックは5着でしたが、昨年末の東京大賞典では3着と、1800M~2000Mの中距離ではかなりの実力を誇ります。

ただ、東京ダート1600Mは21年の5月以来(3勝クラス)です。その薫風Sでは出遅れながらも中団まで盛り返し、ゴール前で差し切っての勝利でしたが、レースの前半3ハロンが34秒9、ラスト3ハロンが37秒4と各馬の脚が最後に止まったので差し切れたと言えます。

その時よりもさらなる実力を身につけているものの、『左回りの東京コースへの対応はどうか?』『前半の速い流れについていけるのか?』『先行馬の脚が鈍った時に掴まえられるかどうか?』といった不安要素はあるでしょう。

ドライスタウト - 全日本2歳優駿勝ち馬が古馬でも勝ち星を狙う。

2歳時には全日本2歳優駿を勝ったドライスタウト。3歳時は5月の兵庫CSで腰を痛めて休養に入りましたが、11月の霜月S(東京ダート1400MOP)で復帰戦を勝利しています。

年が明けた年初のすばるS(中京ダート1400M OP)では1番人気に推されましたがバトルクライに抑え込まれての2着。その後バトルクライが根岸Sで3着だったことを考えるとレモンポップに対抗できる力があると言えそうです。

ただ、この馬も現状では1400Mがベストのようにも感じますし、G1のメンバーに入ってどうか、という点が気がかりです。そこさえクリアできれば戸崎騎手の継続騎乗でもありますし、期待できる馬と言えそうです。

シャルーズスバイト - 外国からの刺客は適応できるか?

今年は、カナダ調教馬のシャルーズスパイトが海外馬として初めてフェブラリーSに参戦する点も注目です。

父スパイツタウンの6歳牡馬で、父の産駒の日本調教馬としては高松宮記念を勝ったモススーパーフレアがいます。シャルーズスパイトはカナダ、アメリカの競馬場でキャリアを積んで、14戦5勝(G1:1勝、G3:2勝)という競走成績を残しています。

G1勝ちはアメリカのチャーチルタウンズ競馬場で行われたメーカーズマークマイルという芝1600Mのレース。道中は後方を進み、直線では大外を回す形になりましたが、そこから鋭く末脚を伸ばして差し切りました。

前走はアメリカ競馬の最高峰、BCマイルに挑戦。14頭立ての13番人気と低評価ながらも、道中は中団を進み、直線では馬群の真ん中から抜け出てしぶとく脚を伸ばし、際どい2着争いに競り勝っての2着でした。このように1600Mの距離適性は高いですし、BCマイル2着馬という実績と、競走馬としての格は日本馬に対して互角以上と言えるかもしれません。

ダートでは4走前のG3戦で3着だったのでダート向きではないかもしれませんが、スピードがいきる馬場なら対応できる可能性はあります。鞍上は日本でも大活躍した、J・モレイラ騎手。日本の競馬に適応させて激走があっても、不思議ではありません。

スピーディキック - 地方馬の誇りとロマンを胸に。

かつてフェブラリーSでは、95年にメイセイオペラが勝利。その後も、トウシンブリザード、フリオーソなど魅力的な地方競馬所属の挑戦者がいました。

今年は浦和所属のスピーディキックが参戦します。父タイセイレジェンドの4歳牝馬で、デビューは門別でしたが、浦和競馬へ移籍。その後は7戦6勝という素晴らしい成績を残しています。

圧巻だったのは前走の東京シンデレラマイル。道中は中団の内を進んでいましたが、3~4コーナーで一気に進出します。直線では外を回しながらも早めに先頭に立って後続を突き離して、最後は2着馬に3馬身半差の快勝でした。

中央のダートのスピードに対応できるかどうかが鍵になりますが、勝負ところの切れは一級品です。地方競馬ファンの熱い想いに応える走りを期待したいですね。


根岸S組、特にレモンポップが中心ではありますが、距離延長、乗り替わりなど不安がある同馬。他馬も展開が向けばという不確定予想が多いメンバーばかりの中で、海外から参戦するシャルーズスパイト、地方競馬から参戦するスピーディキックなど多彩なメンバーが揃って大混戦となりそうです。

前半から激しい先行争いが起きて、直線では追い込み馬が届くのか、という白熱したレースになりそうです。

他にも福永騎手が日本最後の騎乗であり、今年引退するJ・モレイラ騎手の騎乗と、注目点の多いレースになりました。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす

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