[重賞回顧]4歳エースを巧みなリードで勝利へ導く~2026年・アメリカジョッキークラブカップ~ 

12月から続いた冬の中山開催、その締めくくりを飾る重賞がG2アメリカジョッキークラブカップだ。
外回りコースの芝2200mで行われ、使い込まれた馬場状態も相まって、実際の距離以上にスタミナとパワーが求められる一戦となることも少なくない。

またこのレースは、年が明けて4歳となった馬たちが中長距離路線で年長馬に挑む舞台でもある。
今年も昨年のクラシック出走馬から、ファウストラーゼン、ショウヘイ、ジョバンニの3頭が名を連ねた。
ファウストラーゼンは日本ダービー以来の休み明けで、須貝厩舎への転厩初戦。ショウヘイは日本ダービー3着と実績では最上位だが、中山競馬場は今回が初めてだ。ジョバンニはホープフルステークス2着、皐月賞4着と中山G1での好走実績はあるものの、古馬重賞での力関係が試される一戦となる。

これを迎え撃つベテラン勢の中心は、1番人気に推されたドゥラドーレス。半妹にレガレイラ、従弟にアーバンシックを持ち、中山重賞に実績を残してきた血統だ。昨秋、同じ中山2200mで行われたオールカマーではレガレイラとのきょうだいワンツーを演じ、重賞では3戦連続2着と、勝利まであと一歩のところに迫っている。

さらに、昨年の2着馬マテンロウレオ、一昨年の勝ち馬チャックネイト、3年前の勝ち馬ノースブリッジと2着馬エヒト、そして一昨年のオールカマー2着馬アウスヴァールと、中山芝2200m重賞で実績を持つベテラン勢が顔を揃えた。
舞台適性と経験値を武器に、若い4歳馬たちの挑戦を受けて立つ構図だ。

ファンの熱気が寒波の冷え込みも吹き飛ばす中山競馬場。
春のG1戦線へ向けた重要な前哨戦として、16頭による力比べが幕を開けた。

レース概況

スタート直後、内のホウオウノーサイド、外のジョバンニに寄られたマイネルエンペラーがダッシュを決められず、その外から好スタートを切ったアウスヴァールが積極的にハナを主張する。さらに外からノースブリッジ、エヒトも前へ加わり、ショウヘイはその直後で先行ポジションを確保した。

5番手以降はホウオウノーサイド、マテンロウレオ、マイネルメモリーが並び、1列後ろにチャックネイト、サンストックトン、ニシノレヴナント、アルビージャ。ドゥラドーレスはその外目を回る形となった。スタートで出られなかったマイネルエンペラー、後方策を選んだジョバンニ、末脚勝負のディマイザキッド、そしてこれまで大捲りを見せてきたファウストラーゼンが殿に構え、隊列は1コーナーから外回りコースへと進んでいく。

向こう正面では、アウスヴァールが後続を大きく引き離す逃げを打ち、エヒトがこれを単騎で追走。その後ろは5-6馬身離れてノースブリッジとショウヘイが続き、さらにそこからは数馬身ずつ間隔が空く縦長の隊列となった。前半1000mは58秒7のハイペース。アウスヴァールは馬群に対して3秒以上の大きなリードを保ったまま3コーナーへ向かう。

さすがに前を行かせたままでは厳しいと判断したか、後半に入って津村騎手がアルビージャとともに位置を押し上げ始めるが、ドゥラドーレスがやや位置を押し上げたのみで、他馬のポジションは大きく変わらないままコーナーを迎えた。

残り400m手前で、逃げるアウスヴァールにエヒトが並びかけ、直線へ。先頭がエヒトに替わるが、その直後からショウヘイが満を持してスパート。残り200mでアウスヴァール、ノースブリッジを交わし、前に残るのはエヒトのみとなる。

残り100m付近でショウヘイがエヒトを差し切って抜け出し、最後は外から末脚を伸ばしたドゥラドーレスに1馬身半差をつけて快勝。エヒトは最後まで粘って3着に入る健闘を見せた。
4着にマテンロウレオ、5着にサンストックトンと、前目で運んだ馬たちが上位を占める結果となった。

果敢に逃げたアウスヴァールは最下位に終わったものの、エヒトに交わされるまで後続を引っ張り続け、レース展開を作った。結果的に馬群後方にいた馬はドゥラドーレスを除いて上位に来られなかったことからも、作戦としては狙い通りだったのではないだろうか。誤算だったのは出走馬中最年長のエヒトがついてきたことで、スタミナ比べとなったことではないだろうか。

最序盤のポジション争いが、そのまま最後の攻防を左右したレースだった。

各馬短評

1着 ショウヘイ 川田将雅騎手

これまで勝利を挙げてきたのは、未勝利戦、京都新聞杯といずれも川田将雅騎手とのコンビ。
日本ダービーではルメール騎手、菊花賞では岩田望来騎手が騎乗してきたが、今回の勝利で3勝目も川田騎手とのコンビで挙げる形となった。

先行して抜け出す器用さがある一方、折り合いに難しさを残すタイプ。前走の菊花賞では序盤で力んでしまったが、今回は大逃げを打ったアウスヴァールの存在もあり、ノースブリッジの後ろで4番手という理想的な位置を確保できた。初めての中山競馬場でも、雄大なフットワークを妨げられなければ、最後は力の違いで突き放せることを証明した一戦だった。

距離は日本ダービーで3着、神戸新聞杯2着に好走した2400m前後が、折り合いを考えてもベストだろう。
この勝利は、春の大阪杯、そして夏のグランプリ・宝塚記念へ向けて、確かな一歩となった。

2着 ドゥラドーレス ルメール騎手

重賞4戦連続2着と、あと一歩が続く結果となったが、1番人気に推されるにふさわしい走りを披露した。
縦長の隊列、前が止まりにくい展開の中で後方から運び、直線では外から確実に脚を使って2着まで追い上げている。今年7歳のシーズンを迎えるが調教からパワフルな走りを披露し、今回も前有利の展開で堅実に末脚を使って2着まで追い上げてみせた。

勝ち馬ショウヘイが前でロスなく立ち回ったのに対し、こちらは位置取りと展開の差がそのまま着差に表れた印象だ。それでも最後まで伸び切った末脚は、このメンバーでも能力上位であることを改めて示した。
中山2200m戦で前走オールカマーに続いて連続で力を出せた点は収穫で、あとは噛み合う条件ひとつ。
歯がゆさは残るが、勝利は決して遠い場所にあるわけではない。どこかで勝てるときを待ちたい。

3着 エヒト 菅原明良騎手

出走馬16頭中最年長の明け9歳馬エヒトが3着に健闘した。前走エプソムカップから8か月以上の休み明け、馬体重も12キロ増加しての参戦だった。
2023年のこのレースでノースブリッジの2着に好走した後、夏の小倉記念を制覇したが、そこから約2年半勝利が無く、今年初戦は14番人気での出走だった。

これまで後方からの競馬が多かったが、2度目のコンビとなる菅原明良騎手は迷わず先行策を選択。
ハイペースで逃げるアウスヴァールにスタミナ勝負を挑んで最後まで粘り切った内容は、5着に好走した2024年のレッドシーターフハンデキャップでの走りを彷彿とさせた。国内では2000m前後を中心に走ってきたが、よりスタミナが問われる長距離戦が合うタイプなのかもしれない。
逃げ馬が失速する中、前で競馬をして上位に残した点は、豊富なレース経験と持久力を信じた好判断だった。

展開の助けはあったにせよ、まだまだ一線級で戦えるということを十分に示した一戦。
逃げ馬を競り落とし、自ら粘り込むレース運びを今後のエヒトの戦術に出来るか、ベテランホースのますますの活躍を応援したい。

レース総評

中山金杯を制したカラマティアノス、日経新春杯を勝ったゲルチュタール、そしてこのアメリカジョッキークラブカップのショウヘイ。2026年1月は、4歳世代が芝の重賞で3勝を挙げる好スタートとなった。

いずれも実績に裏付けのある馬たちだ。カラマティアノスは天皇賞(秋)を制したマスカレードボールと対戦した共同通信杯で2着に好走。ゲルチュタールは菊花賞4着、ショウヘイも日本ダービー3着と、世代上位の力を示してきた存在である。そうした馬たちが古馬との初対戦、あるいは本格的な古馬路線で結果を出し始めている点に、この世代の層の厚さと頼もしさを感じずにはいられない。

その中でもショウヘイは、ベテラン勢が作ったハイペースの流れを受け止めながら、自身の持ち味である先行抜け出しの形を崩さずに勝ち切った。4歳初戦としては上々の内容であり、折り合いと位置取りが噛み合えば、さらに上の舞台でも通用することを示した一戦だった。勝ち時計2分10秒8は、過去10年で最も速い優秀なタイムだ。

この勢いは2月以降の開催、そして春のG1戦線にも続くだろうか。
2026年の幕開けは、その期待を大いに膨らませるものとなった。


写真:@QZygbdf8L1kEB9U、ぼん(@Jordan_Jorvon)、すばる、みき

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