マルガ、アロンズロッド…アイドルホース候補たちが集結した、バレンタインデーの東京競馬場を巡る

前週の雪の府中から一転、春を感じさせる晴天の中で行われたバレンタインデーの府中競馬場。

京王線の府中競馬場正門前駅を降りた時から、少々違和感があった。

「いつもより来場者の世代が若いな…」

入場ゲートを通過してスタンドへ向かう通路が、カラフルに見える。いつもの土曜日なら目の前を歩く人々の服装は、黒か灰色。真冬の府中のスタンドはモノトーンで覆われる。それが、今日に限ってはバッグにぬいぐるみをぶら下げた女子たちや、カップルが多く来場し、何となく華やかになっていた。

それもそのはず。本日の出走馬を見ると話題の良血馬がいっぱい。未来のアイドルホース候補が多く出走している。実際、パドックは午前中から混雑ぶりが目立つ。早くからパドックの最前列に陣取っている人々も多く、お目当ての馬が登場するころには、超満員になることが予測された。

気温も最高気温が15℃を示し、少しだけ春を感じる競馬観戦デーとなった。

■サウジで連覇を目指す兄に捧げる初勝利!

最初にアイドルホース候補が登場したのは6レースの3歳未勝利戦(1800m)。“世界のフォーエバーヤング”を兄に持つダーリングハーストが、美しい栗毛の馬体でパドックに登場する。

パドックにいた人たちが一斉にカメラを向ける先に、ゆったりと周回するダーリングハースト。昨年6月の新馬戦でダントツの1番人気で出走も、追い込み切れず3着に敗れて以来の出走となる。前走比プラス30キロは全て成長分と思えるくらい、すっきりとした馬体で目の前を通り過ぎる。

ダーリングハーストは、第一印象から良血感を感じ取れるものの、1番人気はルメール騎手の芦毛牝馬シニャンガに譲り、僅差の2番人気に留まる。レースはキング騎手を背にルメール騎手の前でレースを進めたダーリングハーストが、直線に入り先頭に立つとそのまま押し切った。最後は2着の1番人気シニャンガを2馬身1/2突き放しての勝利。

深夜のサウジカップで連覇を目指す、兄フォーエバーヤングに勝利のバトンを手渡した。

■アーモンドアイ長男の集客力!

8レースの出走馬たちがパドックを後にすると、馬たちがいなくなったパドックに続々と観客が集まり始める。スタンド側のパドック観覧エリアはほぼ満杯状態になり、9レース箱根特別の出走馬の登場を待っている。2頭の誘導馬がパドックに入ってくると、カメラが一斉に動き出す。

ゼッケン6番を背に、アエロリットの長男アロンズロッドが登場した。

思い起こせば、2024年10月の土曜日の新馬戦。アロンズロッドのデビュー戦では、信じられないほどの観客がパドックに集まった。GⅠレースのパッドックでさえ、ここまで集まるのかな…と思えるくらいの観客が、一頭の新馬にカメラを向けた。あれから5戦を消化したが、アロンズロッドが出走するパドックは、いつも多くの観客で溢れる。

アロンズロッドは終始落ち着いた表情で、多くの観客の方を向いてファンサービスしているかのような周回を重ねている。ルメール騎手が騎乗する際に、少々イレ込んだ様子を見せたが、そのまま本馬場に向かって行った。

2400mで行われた箱根特別は、同世代レッドバンデとの一騎打ちの様相を呈した。レースは3番人気のイクリールが先導する中、直線で先にレッドバンデが先頭に立つ。アロンズロッドは内からジリジリとした伸びで追走したが、結局、先行したイクリールも捕まえ切れずに、3着に敗れた。

それでも、アロンズロッドがレッドバンデを追うシーンでは、歓声が沸き、9レースの特別戦とは思えない、メインレース並みの盛り上がりを見せた。

さすがアーモンドアイの長男、アロンズロッド。いずれ重賞戦線に顔を出して、パドックを、レースを盛り上げてくれるはずだ。

「集客力のある馬」、アロンズロッドはまさにそれである。

■マルガで盛り上がり、ドリームコアで締めた!

メインの重賞レース、クイーンカップには、ソダシの妹マルガが登場。

超満員のパドックに白毛馬が入って来ると、雰囲気が一変する。姉ソダシもそうだったが、真っ白な馬体が周回しているとそこにばかり目が行ってしまう。マルガの優雅な周回に合わせて、スマホのシャッターが切られ、蹄の音とシャッター音だけが、静まり返ったパドックに響いているような気になってくる。

誰もがマルガに目を向けている中、抜群の周回を重ねている馬がいた。それが、GⅠを2勝したノームコアの二番仔、ドリームコアである。前走ベゴニア賞を勝ち、2番人気に支持されたドリームコアは、馬体も歩様も際立っていた。

「勝つのは、1番のあの馬だな」

「結局、メインはルメールかよ」

手にスマホではなく新聞を握っている層から、確実にそんな声が聞こえてきそうだった。

ドリームコアは、返し馬も落ち着いていた。ゆっくりとコースを噛みしめるように1コーナーに向かって行く。一方のマルガは、外ラチ沿いに武豊騎手が返し馬を進める。まるで、マルガを見に来たスタンドの観客たちに近くで見てもらうかのように、駆けて行く。

レースは直線で先頭集団に付けたドリームコアが、残り100m地点で内から抜け出し、後続を引き離した。終始中団の内を進んだマルガは、直線で思ったほど伸びず、7着に敗れた。

──土曜日の競馬場は、何となく穏やかな雰囲気がある。負けても明日があると誰もが思うからだろうか。翌日に重賞レースが控え、楽しみを残しての観戦になるからかもしれない。

バレンタインデーの府中競馬場。深夜にはサウジカップが行われ、普段の土曜日よりも楽しみが増している。そんな中での、未来のアイドルホースたちが次々と登場したワクワク感は、まさに特別な土曜の競馬。

最終レースが終わり駅に向かう人たちの雰囲気が、いつもより柔らかい。

負けていても、マルガやアロンズロッドを見たという「お得感」で一杯になりながら、私も京王線に乗り込んだ。

Photo by I.Natsume

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