その年の東京開催フィナーレを飾るジャパンカップ。
日本競馬最高額の賞金を誇り、世界各国から有力馬を招待して開催されるビッグレースだ。
日本、そして世界屈指の強豪が集まるため名勝負が多く、競馬ファンにとっては世界レベルのレースに酔いしれられる1日でもある。
今回はそんなジャパンカップの中でも、3冠馬2頭による壮絶な叩き合いとなった2012年ジャパンカップを振り返る。
2012年の日本競馬はまさに3歳馬が主役となった1年であった。
牝馬3冠を達成したジェンティルドンナをはじめ、皐月賞と菊花賞を制したゴールドシップ、牝馬3冠全てで2着を取ったヴィルシーナ、日本ダービーを制覇後イギリス競馬に挑んだディープブリランテなど多彩な顔ぶれが古馬顔負けのレースで盛り上げた。
そしてこの3歳馬の中から牝馬3冠を達成したジェンティルドンナとダービー・天皇賞秋でそれぞれ2着に食い込んだ東の秘密兵器フェノーメノがジャパンカップに出走した。
ジェンティルドンナはジャパンカップと同じ舞台であるオークスを勝っていて、なおかつメンバー最軽量53キロの負担重量で出走ということもあって、古馬と初対戦ながら3番人気に支持された。
もちろん古馬勢も黙ってはいない。この年のジャパンCには、屈強なメンバーが出走していた。
中でも注目は前年の3冠馬オルフェーヴルの出走。
古馬になった2012年は天皇賞春こそ大敗したが、その後の宝塚記念を危なげなく勝利。そして日本中の期待を一心に背負って挑んだ凱旋門賞ではもう少しで勝利に手が届く所まで行っての2着。
まさに現役最強に相応しい走りを見せていた。
鞍上も主戦の池添騎手に戻り、3冠馬対決となるジェンティルドンナ、そして凱旋門賞のリベンジを目指すソレミアには負けられないという状況だった。そんなプレッシャーも、また王者の証の様に感じられた。
ファンの評価も1番人気、果たして3歳馬の下克上を阻止できるか。
大歓声の東京競馬場。
そして画面を通じて世界中から集められる、熱視線。
多くの注目を集めたジャパンカップがスタート。
レースは予想通りこの年の天皇賞春を勝ったビートブラックが先頭に立つ。8枠の2頭、トーセンジョーダンとジェンティルドンナが早め2、3番手を追走。その後ろに凱旋門賞馬ソレミアとフェノーメノが続いた。
オルフェーヴルは中団やや後方でルーラーシップと並んでレースを進めている。
前半1000m通過は60秒2。
緩みないペースでビートブラックがラップを刻む。
3コーナー。やや早めにビートブラックが後続と差を広げる。
2番手以下は一気に馬群が凝縮。固まった状態で直線に向いた。
先頭はビートブラック。リードは5馬身。オルフェーヴルが早め2番手に上がってくる。そしてその内ラチ沿いからジェンティルドンナ、間からフェノーメノ、大外からはルーラーシップと後続も接近。残り200mでビートブラックが失速するとすかさず8枠2頭が迫る。
真ん中オルフェーヴル、その間を強引に割って入ったジェンティルドンナ。
──さあ、同じ勝負服の3冠馬同士の叩き合いだ。
内ジェンティルドンナ、外オルフェーヴル。
岩田康成騎手、池添謙一騎手の息を呑む攻防は、全く両者引かないままゴールに飛び込んだ。
約200m続いた叩き合い。
最後に伸びたのはどちらか。
ターフビジョンにストップモーションが映る。
2頭並んだゴール前、僅かに出たのは内ジェンティルドンナだった。
レースは審議になったものの、見事ジェンティルドンナがレースを制し4つ目のG1タイトルを手にした。この後ジェンティルドンナは年度代表馬に選出され、日本を代表する名牝となった。その中でもこのジャパンカップは3冠馬同士の叩き合いとあって名勝負と挙げるファンの方も多い。
それだけ大迫力なレースであった。