[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]初めて横断幕をつくる(シーズン2-11)

デビュー戦の1週間前になって、突然、横断幕を貼ろうと思いついてしまいました。ルリモハリモのデビュー戦は福ちゃんの予行演習として静かに迎えようと考えていましたが、ルリモハリモだってここまで頑張って辿り着いたのですから、僕なりに精一杯応援してあげようと思い直したのでした。

シンコウラブリイやヒシアマゾン、ブラックホークなど、これまで好きな馬はたくさんいましたが、横断幕を張ろうと思ったことはありません。そもそも横断幕というのは、誰が準備して、誰がパドックに設置しているのでしょうか。そんな疑問が浮かびます。中央競馬の有名な馬であれば、ファンが自分たちで作り、勝手にパドックに張って応援しているのだと思います。そうではない馬たちの横断幕は、馬主などの関係者が準備して、自ら(もしくは誰かに頼んで)張っているのでしょうか。いずれにしても、ルリモハリモに関しては、僕が作らなければ誰が作るのかという感じであり、馬主の僕が応援団長として横断幕を作るしかありません。僕にとって初めての経験です。

思い立つとアイデアが浮かんできます。「瑠璃も玻璃も」と日本語らしい書体で大きく書いて、その上に「ルリモハリモ」とフリガナを振ります。背景の色は瑠璃色です。瑠璃色と検索してみると、濃い青紫色が現れました。碧雲牧場の名の由来でもある紺碧色にも近くてピッタリです。文字の色は「照らせば光る」の意味を含めて黄色が良いと思います。文字が同じ色だと単調なので、「ルリモハリモ」は白色にしましょう。

船橋競馬場のホームページから調べてみると、横断幕は横3m×縦1mが最大と決められています。これは他の競馬場も同じのようです。それ以下の大きさであれば、横1m×縦1mの正方形でも良いみたいです。横断幕を作成してくれる業者はたくさんあって、僕は納期の関係で「横断幕キング」というサイトから依頼することにしました。生地は布生地とビニール生地がありますが、布生地は納期がかかるため、ビニール生地にしました。「素材に光を反射するもの」は許可できないと記載されているため、光沢がないターポリンを選びました。

翌日、福ちゃんの声兼デザイナーに在宅ワークをお願いし、横断幕を午前中に発注することに。午前中に発注できないと、デビュー戦当日に間に合いません。僕のイメージを伝え、いくつか案を作って送ってもらいます。最初に上がってきた案が何となく変だったので、第2、第3案をもらいましたが、結局は最初の案が見れば見るほど横断幕らしくて良いと考え直しました。

文字だけだと平板に見えるため、ワンポイントどこかに入れることにしました。照らせば光るから光のマーク(星のマーク)を思いつきましたが、瑠璃も玻璃も宝石の一種であり、そういえばルリモハリモの額にはダイヤの流星が流れています。♦のマークをワンポイントで入れることに決めました。できあがった横断幕はこんな感じ。

前々日に出走表と枠順が発表されました。ルリモハリモは4枠4番です。騎手を見ると、やはりというか所蛍騎手でした。普段からルリモハリモに乗ってくれている所騎手に騎乗してもらうことに異議はありませんが、「デビュー戦は所でいいですか?」というヒアリングはありませんでした。使うレースからジョッキーまで、全て調教師(厩舎サイド)で決めてしまうのであれば、僕は馬を預けてお金を払っている人にすぎません。1頭持ちの馬主とはいえ、一口馬主と何も変わらないというか、一口馬主で全口を持っている人と同じです(笑)。

こうして枠順まで発表されると、だんだんと自信がなくなっていきます。能力試験の走りやタイム的に、勝ち負けになると思っているからこそ、余計に不安な気持ちになるのかもしれません。他馬の能力試験のタイムを見てみると、1頭だけルリモハリモよりも速い馬がいます。その馬の能力試験の走りを見てみると、2着以下を数馬身引き離していて、スピードがありそう。新馬戦を勝てなくても、その次で勝ち上がれば良いのですが、できれば一発で決めたいところですし、1着と2着の賞金の差は250万円もあるのです。福ちゃんの塾代を考えても、お姉さんには勝てるときに勝っておいてもらいたいのが正直なところです。

我が娘の初めての運動会ぐらいの気持ちで楽しみにしていたのに、いつの間にか勝ちたい、負けるのが怖いと考えている自分がいます。デビュー戦でこれですから、この先、もしかして大きなレースに出走するようなことになれば、どのような心情で本番当日を迎えるのでしょうか。

母ダートムーアの競走成績をネット競馬で振り返ってみると、デビュー戦から勝ち上がるまでに3戦を要しています。久しぶりに実際のレースの走りを見ると、最初の頃はゲートの出が悪く、後方からのレースを強いられて届かなかったりしていました。今となってはあの大人しいダートムーアも、もしかするとレースに向かってテンションが上がって、狭い場所が嫌でゲートでガタガタしたところでスタートを切られたりしたのかなあと想像します。

ルリモハリモや福ちゃんが、ゲートから遅れて出てしまう姿が目に浮かぶようです。地方と中央の違いはありますが、ルリモハリモや福ちゃんが上手く走れなくてデビュー戦を落としたり、2戦目、3戦目でも勝ち上がれなかったとしても、エンプレス杯で3着した母ダートムーアでさえも4戦目でようやく勝利を手にしたと思えば、少し気が楽になります。ポンポンと勝つ血統ではないのかもしれませんね。

デビュー戦からレパードSで5着するまでのダートムーアの走りを見て、改めてダートムーアは美しくて強い馬だったと感じました。デビュー当時は450~460kgあたりでレースをしていますが、全体のフレームが大きいからか、馬体重以上に大きく見せる馬体です。肢が長くて背も高く、胴部にも伸びがあって、全体的に長さがある馬体は、福ちゃんの方が似ているなと思います。

ルリモハリモは母よりもひと回り小さく、胴部もやや詰まっている体型です。その意味では、ルリモハリモは1400~1600mぐらいが適距離かもしれません。ルリモハリモには、馬体的にも血統的にも、来年の浦和競馬場で行われる桜花賞を目指してもらいたいと思います。明後日のことではなく、未来のことを考えると、少し気持ちが前向きになってきました。

(次回へ続く→)

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