[連載・馬主は語る]プランB 地方競馬の馬主になるには(シーズン1-2)

諦めることでプランBが見えてきます。中央競馬の馬主が現実的ではないとすれば、他にも道はあるはず。すでにオーストラリアでは共有馬主になっていますので、今回は選択肢から外し、日本で馬主となって競馬を楽しむためにはやはり地方競馬の馬主がプランBでしょう。そう考えると、急に肩の力が抜けたというか、中央競馬の馬主の要件があまりにも厳しすぎて、地方競馬の馬主要件が気軽に思えるから不思議です。

地方競馬の馬主要件は、ざっと直近の年間所得が500万円以上です。年収にすると700万円ぐらい。

「ん? それだけ?」と思うレベルの緩さです(中央競馬と比べると)。サラブレッドという生き物を所有し、牧場で預かってもらい、トレセンで育成し、厩舎で調教してもらい、競馬場で走らせ、それから引退した後のことまで考えると、その程度の甲斐性で大丈夫なのかなと思ってしまうのは僕だけでしょうか。のちに詳しく述べることになると思いますが、とにかく日本でサラブレッドの所有を維持するのはお金がかかるのです。

とはいえ、一度宣言した以上は後には引けません。まずは地方競馬の馬主資格の申請から始めることにしました。地方競馬協会の馬主になりたい人向けのホームページを読み、必要書類の様式や一覧をダウンロードし、あらゆる証明書等を集め始めました。馬主の先輩であるあらいちゅーさんの「最速で地方競馬の馬主になる本」も参考に読んだりしました。

基本的には自分が住んでいる市区町村の役場や出張所、法務局、税務署で手に入る書類が多いのですが、中には本籍のある市区町村からのみ発行される戸籍証明書等があるため、一朝一夕には揃いません。

多くの方が引っかかる(つまずく)と思われる点は、以下の2点ぐらいでしょうか。

4の精神の機能障害等によって~云々、つまり、「登記されていないことの証明書」を手に入れるためには、千代田区にある法務局の本局に足を運ばなければいけません。僕は九段下の駅を下りて、坂道を、人の流れ追い越していけば~、とこのあたりで「爆風スランプかよ!」とツッコミを入れてもらいたいところですが、10分ぐらいで到着しました。法務局本局での手続きはスムーズで、ほとんど待つこともなくお目当ての「登記されていないことの証明書」を手に入れることができました。なぜこの書類だけ本局に行かなければ入手できないのか謎です。

8、9の直近年度の所得証明書は、アとイの年度を合わせる(僕はアとイの年度が違うものを誤って提出してしまい、イだけ年度を合わせて再提出しました)こういう凡ミスは僕だけかと思っていましたが、知り合いの馬主さんも同じことをしたとおっしゃっていましたので、間違いパターンとして挙げておきますね。

たしかに細かい書類が多くて簡単ではないのですが、ぶっちゃけて言うと、これぐらいの書類を揃えられないようでは、競走馬を所有して走らせることはもっと大変なので、早々にあきらめた方が良いかもしれません。逆に言うと、馬主要件を満たしているぐらいの方であれば、申請自体はそれほど難しくないはずです。

しかし、安心するのはまだ早い。実は意外な盲点というべきか、馬主になろうとする者にとって最初の洗礼が待っています。アントニオ猪木の平手打ちのように、馬主を夢見る僕たちの目を確実に覚まさせてくれるのです。それは馬主登録証の申請をする時点で、預託予定厩舎を記入しなければならないということ。どんな馬を買うかも決まっていない段階で、預かってもらう厩舎、つまり調教師の名前を書かなければならないのです。藤澤厩舎とか、角居厩舎とか、聞いたことがある調教師の厩舎名ではありません。実際に馬を預かってもらうことのできる調教師の厩舎名を書かなければならないのです。

「そんな無理難題ある?」と言う競馬ファンも多いと思うので、マジレスすると、とりあえず馬主の資格を取っておこうと考える人もいるかもしれませんが、馬主登録証の申請をする段階ですでに預託予定厩舎ぐらいはイメージできている方が望ましいです。セリで馬を買うとすれば、実際に厩舎に預けるのは1年後もしくは2年後になりますが、それでも厩舎や関係者とのコネクションが全くない徒手空拳の状態でサラブレッドという生き物を買うのはさすがに無謀です。

どこの競馬場のどの厩舎でも良いのであれば、馬房ぐらいは見つかるかもしれませんが、せっかくですから納得のいく厩舎選びをしてもらいたいです。あくまでも予定で構いませんので、自らの所有馬を走らせる競馬場や厩舎ぐらいは調べて、具体的な厩舎名が記入できるぐらいまでの段取りは同時並行で進めておくべきです。馬主資格の申請書に預託予定厩舎を記入する欄があるのは、そういう意味だと思います。

僕は万年筆を取り、ある調教師の名前を書きました。

(次回へ続く)

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