[新馬戦回顧]メイクデビューの勝者達 - 2022年9月10日・11日

9月も2週目に入り、いよいよ秋競馬がスタート。
2020年産駒達の新馬戦も110戦を超えました。
ここでは先週開催された新馬戦で、世代全体のうち3割前後しか勝ち上がることができない狭き門を突破した2歳馬達をご紹介していきたいと思います。

2022年9月10日(土)

中京3R 芝1400 晴・稍重 9頭

ティニア

牡馬
Frankel×Follow a Dream
母の父:Giant's Causeway
所属:栗東)池江泰寿厩舎
生産:North Hills Co.Ltd
鞍上:福永祐一騎手
476㎏ 1番人気 7枠7番

2021年の函館2歳S勝ち馬ナムラリコリスの半弟ナムラデュラン、重賞2勝馬レオアクティブの半弟ジークシュベルトといった血統馬が集結した、秋競馬最初の新馬戦。
勝利したのは、1番人気に推されたマル外馬ティニアでした。

好スタートを切ったティニアでしたが、無理に前に行くことはせず5、6番手で折り合います。
そのまま外目を回しながらレースを進め、直線に入ると、先行馬2頭がジワジワと下がっていき自然と3番手へ。
その時点では先頭とはまだ少し差がありましたが、残り200m付近からいよいよ進出を開始すると、そこからは『エトルリア神話の嵐と稲妻の神様』という、その名の由来通りに鋭い末脚を披露。まるで、ゴールまでの距離を測ったかのような差し切り勝ちでした。

勝ち時計は1分22秒2。上がり34.0は勿論このレースにおける最速でした。

数々の名馬を所有してきた前田幸治オーナーですが、今年の新馬戦では初勝利。
今後は未定とのことですが、新馬戦からしっかりコントロールされた良いレースをしている点が強み。1つ勝って、次走はどんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

中山4R ダ1200 晴・稍重 13頭

マーブルマカロン

牝馬
ダノンレジェンド×クォーク
母の父:ネオユニヴァース
所属:美浦)林徹厩舎
生産:大北牧場
鞍上:三浦皇成騎手
422㎏ 2番人気 4枠5番

2020年うまれの世代が種牡馬として3世代目となるダノンレジェンド産駒から、今年の勝ち上がり馬第1号が誕生しました。

抜群のスタートを切ったマーブルマカロンは、先行集団の中で一番内枠であったことも幸いし先頭に立ち逃げの体勢へ。
序盤から1番人気スズカコーズにしっかりマークされてレースを進めますが、直線に入った頃には後続との差が開き、まるで併せ馬のような状況になりました。
マーブルマカロンはそのまま中山の短い直線を粘り続けて逃げ切り勝ち。
勝ち時計は1分11秒3でした。

林調教師、大北牧場、保坂オーナーにとっても今年の新馬戦初勝利。
三浦騎手からは芝も行けそうなフットワークとの評価も出ていて、次走以降のレース選択に注目です。

中京5R 芝1600 晴・稍重 8頭

スマートジェイナ

牝馬
ロードカナロア×スマートレイアー
母の父:ディープインパクト
所属:栗東)大久保龍厩舎
生産:ノーザンファーム
鞍上:今村聖奈騎手
442㎏ 1番人気 5枠5番

重賞4勝を挙げている芦毛の名馬・スマートレイアー。その初仔であるスマートジェイナが、1倍台の大人気に応えました。

3番手辺りでのスタートとなったスマートジェイナ。逃げたワカタツフェイスのすぐ後ろにつけて2番手でレースを進めます。
直線に入りこの2頭が粘る形になりかけますが、残り400mを過ぎた辺りでサーマルソアリングが間を割って先頭へ。そのまま突き抜ければ、福永騎手の思惑通りの形だったかと思われます。

──が、スマートジェイナが、ここからもう一伸び。サーマルソアリングを差し返し、最後は1馬身差をつけて勝ち上がりを決めました。
勝ち時計は1分37秒7。

母スマートレイアーが15回挑んで果たせなかったG1制覇を達成できるのか、今後の活躍が楽しみです。

中山5R 芝2000 晴・良 8頭

ロッククリーク

牡馬
エピファネイア×フロールデセレッソ
母の父:スウェプトオーヴァーボード
所属:美浦)栗田徹厩舎
生産:ノーザンファーム
鞍上:Cルメール騎手
482㎏ 1番人気 4枠4番

2歳サイヤーリーディングのトップを走り続けるエピファネイア産駒から、1番人気に応えて今週も新馬戦勝ち馬が誕生しました。

やや顔を上げるようなスタートとなったロッククリークでしたが、すぐに持ち直し、先行馬2頭を射程に入れた好位置で折り合います。
そしてそのまま内を回ってレースを進め、直線に入ると少し外へ出し進路を確保。そこからは逃げていたスマイルスルーを追う展開となりました。
2着馬ヴァイルマティも良い走りを見せましたが、ジリジリとしぶとく走り抜いたロッククリークが半馬身先頭に立ったところがゴールでした。

勝ち時計は2分02秒6。
欧州遠征中のタイトルホルダーや、ダートで活躍するアルクトスの管理で知られる栗田徹調教師は、これが今年の新馬戦初勝利となりました。

2022年9月11日(日)

中山3R ダ1800 曇・良 12頭

タルマエロマエ

牝馬
ホッコータルマエ×クイーンマグノリア
母の父:ゴールドアリュール
所属:美浦)新開幸一厩舎
生産:白老ファーム
鞍上:Mデムーロ騎手
450㎏ 3番人気 7枠10番

レース前から注目馬として取り上げられていたニシノカシミヤが1番人気に、2020年フィリーズレビューの勝ち馬エーポスの半弟ファルコンミノルが2番人気に推された、日曜最初の新馬戦。勝ち上がりを決めたのは3番人気のホッコータルマエ産駒タルマエロマエでした。

悪くないスタートを切ったタルマエロマエは鋭い二の脚を披露して逃げた1番人気ニシノカシミヤのすぐ後ろへ。
そのまま折り合ってレースを進めると、残り600mを切った辺りから徐々に差を詰めていき直線に入ります。
ニシノカシミヤが粘りを見せ、残り200mの辺りではまだ1馬身半ほどの差があったものの、タルマエロマエはここからひと伸び。クビ差で競り合いを制しました。

勝ち時計は1分57秒4。
次走は未定とのことですが今後が楽しみなスピードと力強さを見せてくれました。

中京4R ダ1800 晴・稍重 14頭

テーオーリカード

牡馬
パイロ×ナナイロボタン
母の父:ネオユニヴァース
所属:栗東)高柳大輔厩舎
生産:三嶋牧場
鞍上:松山弘平騎手
480㎏ 6番人気 5枠8番

パイロ産駒から、今年2頭目の新馬戦勝ち馬が誕生です。

悪くないスタートを切ったテーオーリカードはスムーズに前へ行き、逃げたシゲルショウグンのすぐ後ろ、2番手の位置で折り合います。
そのまま直線に入ると上がり最速となった末脚でスっと前を交わし、最後は2馬身差をつける完勝でした。

勝ち時計は1分53秒5。

小笹公也オーナー、高柳大輔調教師は共に今年の新馬戦初勝利となりましたが、このコンビと言えば2021年のJRA賞最優秀ダートホース、テーオーケインズ。
偉大な先輩に続く活躍が見られるか、未定となっている次走にも注目です。

中京5R 芝2000 晴・良 7頭

オープンファイア

牡馬
ディープインパクト×ゴーマギーゴー
母の父:Ghostzapper
所属:栗東)斉藤崇史厩舎
生産:ノーザンファーム
鞍上:Cルメール騎手
512㎏ 1番人気 1枠1番

2021年セレクトセールで3億3千万の値が付いたディープインパクトのラストクロップ世代の1頭がデビューの日を迎えました。

1.3倍と言うダントツの1番人気に推されたオープンファイアでしたが、「ゲートが開いたことに一瞬気付かなかったのでは?」というくらいのゆっくりしたスタートとなります。
それでも2000mという距離もあってか、ディープインパクト産駒の切れ味を信頼してか、ルメール騎手は慌てず、後ろから2番手という位置で折り合いレースを進めました。
3コーナー辺りから徐々にポジションを上げていきますが直線に入った時点では4番手辺り。
この時点では周りの馬たちの方が手応えも良く見え、このまま沈んでしまうかと思われましたが…
…残り200mを切ったあたりで遂にエンジンがかかったオープンファイア。
ルメール騎手から「真面目に走ったのはラスト50mだけです」というコメントも飛び出したほどの目の覚めるような追い込みで、見事にデビュー勝ちを決めました。

勝ち時計は2分05秒8。
僅か6頭しか血統登録されていないこの世代のディープインパクト産駒ですが、更に牡馬となるとなんと2頭となります。
大型馬で心身共にまだまだこれからと思われる1頭、気が早い話ですがラストの世代から後継種牡馬誕生となるでしょうか。

中山5R 芝1600 曇・良 16頭

ダノンゴーイチ

牡馬
イスラボニータ×レニーズゴットジップ
母の父:City Zip
所属:美浦)菊沢隆徳厩舎
生産:社台ファーム
鞍上:戸崎圭太騎手
498㎏ 3番人気 2枠3番

短距離中心に重賞5勝を挙げたベルカントの半弟サルヴァトーレが登場した、この週最後の新馬戦。レースを制したのは社台ファーム生産の大物候補でした。

内枠から好スタートを切ったダノンゴーイチでしたが、そのまま先頭に立つことはせず、外枠から飛び出したトレブランシュや1番人気ウィットサンデーらを先に行かせ5番手辺りにポジションを取ります。
ペースを上げていこうとする3、4コーナー付近では、遠めの映像でもはっきりわかるように手綱を引くほどの不利があったようですが、これをものともせず内から前へ出ていって、残り200を切る頃には僅差の2番手に。
3着オークアンドモルトに5馬身差をつけた2着トレブランシュを更に2馬身半突き放す完勝でした。

勝ち時計は1分35秒2。

アエロリットやミッキースワローを管理した菊沢隆徳調教師は、これが今年の新馬戦初勝利。
8歳にして現役を続けているダイワキャグニーと共に、厩舎の看板と言われるような日も来るのではないか──そう思わせるような強い競馬でした。

以上、今週のメイクデビュー勝ち馬8頭を見ていきました。

この仔達がこれからどのような成長を見せてくれるのか、また3日間開催となる今週末の新馬戦ではどんな仔達がデビューしてくるのか、週末を楽しみに待ちたいと思います。

写真:かぼす、水面

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