[菊花賞]今も駆ける スター"ウマ娘"の血を引く者たち〜日曜重賞編〜

巷で話題になっているゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」。

実際の競走馬をモデルにしたこのゲーム。登場するウマ娘たちの中に現役で走っている馬をモチーフとしたキャラクターはいませんが、子供、孫あるいは親戚にあたる馬が現役で駆けている例はたくさんあります。

そういった競走馬を「ウマ娘 プリティーダービー」から競馬を持った方々にも応援してもらいたい。そんな思いからこの「今も駆ける スターの血を引く者」では、ウマ娘にも登場するキャラクターのモデルとなった競走馬と血縁関係に当たる馬を、その週のビッグレースからピックアップして紹介していきたいと思います。

今日は「牡馬三冠」最後のレース、菊花賞から紹介したいと思います。

ヴェローチェオロ

秋華賞のソダシは無念の10着に敗れた須貝厩舎が神戸新聞杯覇者ステラヴェローチェとともに送り出すのがヴェローチェオロ。父はゴールドシップ(その母の父メジロマックイーン)、母の父タイキシャトルと3頭のウマ娘モデル馬の血を持っています。

その中でも注目はやはり同じ須貝厩舎で活躍したゴールドシップ。ゴールドシップは2012年の菊花賞を制しています。

「京都の3コーナーの坂はゆっくり上ってゆっくり下れ」競馬界に古くから伝わる格言です。

例年菊花賞が行われる京都競馬場は3コーナーに高低差4mほどの坂があり、そこを400m近くかけて上り、そこから直線にかけて一気に下っていくというコース形態をしています。3コーナーの上りで仕掛けると最後の直線に取っておくべき脚を使い果たし、下りで仕掛けると勢いがつきすぎてコーナーを曲がるのに苦労し、結局ブレーキをかけるか極端に外を回らされるかどちらかになりレースには不利になる。そう考えられていたために生まれたのがこの格言です。

この格言はアニメ「ウマ娘 プリティーダービーSeason2」の第2話で何とか菊花賞に出走しようとするトウカイテイオーに対してゴールドシップが与えたアドバイスの元ネタとしても使用されています。

さて、その当の本人(本馬?)ゴールドシップの菊花賞ですが、その言葉とは裏腹に3コーナー手前からロングスパートを仕掛けて勝ち切っています。

この年の菊花賞は有力馬の路線変更・故障・休養が重なり、春のクラシック(皐月賞・日本ダービー)で5着以内に好走した馬の出走がゴールドシップと皐月賞4着のコスモオオゾラしかいませんでした。そのため皐月賞を勝ち、前哨戦の神戸新聞杯も制していたゴールドシップの能力は断然と思われ、単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気でレースを迎えていました。

その断然人気の馬が見せたのは2周目の2コーナー後方2番手から外目を一気に仕掛けていき、3コーナーに入るころには先頭集団、4コーナー出口では先頭に並びかけていました。ゴールドシップの能力は抜けており、かつゴールドシップには無尽蔵のスタミナがあるという事は、この頃には多くの人が感じていたと思います。それでもそれまでのセオリーを一切無視するような競馬は「本当に大丈夫なのか?」と不安に感じた方も多かったのではないでしょうか。

しかし、当のゴールドシップは、それが苦しさからか、はたまた余裕からくるのかはわかりませんが直線で舌を出しながら、後続の追撃をまるで寄せ付けず完勝。皐月賞と菊花賞の二冠を達成しました。

この走りは2012年菊花賞の直前に流れていたJRAのCMに流れていたミスターシービーが勝った1983年の菊花賞とそっくりでした。ミスターシービーもまた3コーナーで仕掛けて4コーナー先頭と言う競馬で菊花賞を勝っていました。そのCMで使われたキャッチフレーズが「タブーは人が作るものにすぎない」。ゴールドシップは「京都の3コーナーで仕掛けてはならない」と言うタブーを自身の圧倒的な心配能力で打ち破ったまさしく「常識破り」の名馬でした。

今年の菊花賞はその京都競馬場ではなく阪神競馬場で行われる。それでもゴールドシップが持っていた無尽蔵のスタミナ、強い心配能力はこのレースで大きな武器になることは間違いありません。ヴェローチェオロにもそれが受け継がれていれば十分に勝つチャンスがあるのではないでしょうか?

オーソクレース/ディヴァインラヴ

オーソクレース・ディヴァインラヴの2頭はいずれも、父エピファネイア、母父ディープインパクトと言う血統。エピファネイアの母の父はアニメ「ウマ娘 プリティーダービー」の第1期で主人公を務めたスペシャルウィークです(ちなみにオーソクレースの曾祖母にはエルコンドルパサーがいます)。

そのアニメ「ウマ娘 プリティーダービー」でも描写されている通り、スペシャルウィークは1998年の菊花賞に出走し、セイウンスカイの2着に敗れています。

この年の菊花賞はレースが開催される週に仮柵(本来のコース内側に設けられる柵の少し外側に設置される柵 芝の保護が目的とされる)が外され、内側の芝が生えそろった状態の逃げ馬・内枠有利な馬場。加えてセイウンスカイは前走の京都大賞典でその年の天皇賞馬メジロブライトなどを相手に見事な逃げ切りを決めており、長距離適性には自信を持っていました。

その2つのアドバンテージを見事に生かし切ったのが横山典弘騎手の神騎乗。最初の1000mを59.6と言うやや速めのペースで先手を主張すると、次の1000mは1.04.3と極端にペースを落とし脚を温存。そこからさらにロングスパートを仕掛けラスト1000mは59.3でまとめ上げ見事な逃げ切り。馬場状態とセイウンスカイの能力をフルに生かした痺れるようなレースで皐月賞・菊花賞の二冠を達成しました。

余談ですが、筆者はこの時のセイウンスカイならあのディープインパクトをも負かせたと、いまだに思っています。それほどまでに馬の能力と騎手の騎乗技術が完璧に噛み合った勝利だったと思います。

このように菊花賞ではセイウンスカイに苦汁をなめさせられたスペシャルウィーク。しかし、子孫からはその無念を晴らすかのように菊花賞で活躍する馬が多く出ています。

2008年にスペシャルウィークの子供フローテーションが15番人気と言う人気薄ながら2着に激走すると、その5年後の2013年にはスペシャルウィークの孫にあたるエピファネイアが2着に5馬身差をつける圧勝。その翌年2014年の菊花賞では直子のトーセンジャッカルがいまだに日本レコードとして燦燦と輝き続ける3.01.0と言う好タイムで勝利。昨年の菊花賞では2013年の菊花賞馬エピファネイアの子供であるアリストテレスが無敗三冠に王手をかけたコントレイルをあと一歩のところまで追いつめる2着と子、孫、ひ孫の世代においてもキッチリと菊花賞で結果を出し続けています。

この2頭のいずれかが勝てばエピファネイアに続く親子2代の菊花賞制覇が達成されます。また、ディヴァインラヴが勝てば1947年ブラウニー以来、実に74年ぶり3例目となる牝馬による菊花賞制覇が実現します。そういった観点からもこの2頭に注目してはいかがでしょうか。

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