[重賞回顧]20年ぶりの逃げ切り勝ち 中京巧者が念願の重賞初制覇~2021年・中日新聞杯~

中京競馬場で、年間の最後に行われる重賞が中日新聞杯。多頭数のハンデ戦で、毎年のように人気は割れるものの、上位人気馬がその評価どおり好走するのが近年の傾向だった。

前年に続き、2021年もフルゲートの18頭がエントリー。人気は割れ、単勝10倍を切ったのは5頭。その中で、1番人気に推されたのはアドマイヤビルゴだった。

2017年のセレクトセール当歳市場で、史上2位の税抜5億8000万円で落札された超のつく高馬。ここまでキャリア10戦と大切に使われ、オープン2勝の実績はあるものの、いまだ重賞のタイトルは手にしていない。今回も武豊騎手とコンビを組み、念願の重賞初制覇を目指していた。

2番人気に推されたのは、前年の覇者ボッケリーニ。GI2勝を挙げたラブリーデイを兄に持ち、常に上位争いをする安定感が持ち味。前走のアンドロメダSは、4ヶ月ぶりの休み明けながら2着と好走し、今回が叩き2戦目。レース史上3頭目となる、連覇が懸かっていた。

3番人気はラーゴム。2月に、同じ舞台で行われたきさらぎ賞を勝って重賞初制覇を成し遂げたものの、その後は、4戦連続二桁着順と不振に陥っていた。しかし、前走のアンドロメダSでボッケリーニを差し切り久々の復活。今回も、父オルフェーヴルの主戦だった池添騎手とコンビを組み、重賞2勝目を狙っていた。

4番人気に推されたのは、キングオブコージ。重賞勝ち馬が複数いる今回のメンバーでも、GⅡのタイトルを持っているのは本馬のみ。その目黒記念を勝利して以降は、骨折に見舞われるなど順調さを欠き、1年半の間に2走しかできていない。ここは、オールカマー以来およそ2ヶ月半ぶりの実戦で、こちらも重賞2勝目を狙っていた。

そして、5番人気に続いたのがラストドラフト。父はノヴェリストで、母が2011年の桜花賞馬マルセリーナという良血。2勝目を挙げた京成杯以来、実に3年近く勝利から遠ざかっている。ただ、前走は2021年のGIで最高のメンバーが揃ったと言われている天皇賞・秋に出走し8着と善戦。この馬もまた、重賞2勝目を狙っていた。

レース概況

ゲートが開くと、ほぼ揃ったスタートから飛び出したのはショウナンバルディで、アイスバブルとアフリカンゴールドがそこへ絡んでいく。2コーナーでは、キングオブコージがやや掛かり気味にポジションを上げ、先行集団は4頭となった。

その後ろにシゲルピンクダイヤが続き、1番人気のアドマイヤビルゴは、直後の6番手を追走。ボッケリーニとラストドラフトは中団、ラーゴムは後ろから4番手に控えていた。

前半の1000m通過は1分1秒1と、遅い流れ。先頭から最後方まではおよそ10馬身で、18頭はほぼ一団となって3コーナーに入った。

その後も隊列は変わらず、一気にペースが上がったのは、残り600mを通過してから。逃げるショウナンバルディの岩田康誠騎手が手綱を押し、2番手以下を引き離しにかかると、後続も遅れまいとスパートを開始。しかし、ラチ沿いを回ってなおかつ先に仕掛けた分、一団だった隊列はここでやや縦長となり、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ったところで、ショウナンバルディのリードは2馬身。アフリカンゴールドが、依然として単独2番手をキープし、3番手は5頭が横一線。坂を駆け上がり、その中からシゲルピンクダイヤが2番手を窺うも、ショウナンバルディとの差がどうしても詰まらない。

残り100mを過ぎてからようやく前の勢いが鈍り始め、後続が差を詰めたものの、捉えるまでには至らず。結局ショウナンバルディがまんまと逃げ切り、見事1着でゴールイン。半馬身差の2着に17番人気のアフリカンゴールドが入り、クビ差3着に10番人気のシゲルピンクダイヤが入った。

良馬場の勝ちタイムは、1分59秒8。前年の4着馬ショウナンバルディが逃げ切り、念願の重賞初制覇。3連単の配当は、230万円を超える大波乱となった。

各馬短評

1着 ショウナンバルディ

前年の4着馬で、中京2000mはここまで6戦2勝2着1回3着1回と、相性が良かったコース。前走、同じ舞台で行われたケフェウスSこそ8着と崩れたが、重馬場とはいえ超スローからの瞬発力勝負になった点と、中1週が影響したか。そこから3ヶ月の休養を挟み、巻き返した。

父キングズベストは、現役時にイギリスの2000ギニーを制覇。半姉に、凱旋門賞を勝ち母としてもガリレオとシーザスターズを送り出した世界的名牝のアーバンシーがいる良血。自身の産駒としては他に、持ち込み馬のエイシンフラッシュが日本ダービーと天皇賞・秋を制覇。同世代のワークフォースも、英国ダービーと凱旋門賞を制した。そのワークフォースは、先週のステイヤーズSを勝ったディバインフォースの父でもある。

2013年から日本で供用が開始されたキングズベスト。やや苦戦が続いていたものの、トーラスジェミニが7月の七夕賞を勝利。日本で供用されてからの産駒では、重賞初制覇となった。キングズベスト自身は、2019年にこの世を去っているが、遅ればせながらその血が躍動している。

2着 アフリカンゴールド

前回の好走は、1番人気に推された2019年アルゼンチン共和国杯での3着。その間、4着が一度あるものの、それ以外は掲示板を外し、二桁着順も6度と苦戦。およそ2年ぶり、そして11戦ぶりに馬券圏内に好走した。

展開面の助けはあったものの、いつ巻き返すか分からない。そして、簡単には終わらないステイゴールド産駒を、改めて印象づける激走だった。

3着 シゲルピンクダイヤ

前年の2着馬で、2年連続の好走。府中牝馬Sからの臨戦過程も、前年と同様だった。

東京競馬場のように瞬発力が問われるコースよりも、やはり、底力や持久力が問われる中京競馬場のほうが向いているだろうか。

桜花賞2着、秋華賞3着とGIでの好走実績はあるものの、いまだ2勝目が遠い。前年の回顧で「次走、同じコースで行なわれる愛知杯に出走してきた際は、引き続き注目」と書いたものの、9着に敗れてしまった。

以前のような気難しさを見せることは減っており、間隔が詰まっても、京都金杯で面白いかもしれない。

レース総評

前半の1000m通過は1分1秒1。対して、後半の1000mは58秒7と後傾ラップ。最後の1ハロンは12秒6を要したものの、その前の2ハロンが11秒1-11秒3。後方を追走していた馬は、この11秒1のところで突き放され、厳しい展開となった。

今回の1、3、5着馬は、前年の4、2、1着馬で、着順が入れ替わったことになる。結果だけ見れば、いわゆる、行った行ったの決着。と、結論づけるのは簡単だが、当レースが2000mになってからは、これが初の逃げ切り勝ちだった。

前回の逃げ切りは、2001年のグランパドドゥで、20年も前のこと。しかもそれは、父内国産馬限定戦で、旧コース、1800mで行なわれていた時代の話。引き続き、京都競馬場の改修工事が行なわれる2022年も、例年に比べ中京開催は多い。中京巧者のショウナンバルディにとっては、心強い材料となりそう。GⅢやオープンはもちろん、金鯱賞に出走してきた際も、マークが必要となるだろう。

写真:はねひろ(@hanehiro_deep)

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