[競馬ニュース]2022年秋競馬プレビュー 3歳牡馬&牝馬編

今週から秋競馬が始まります。秋競馬を存分に楽しむためにも、各路線の現状と有力馬について理解を深めた上で各路線のトライアルレースを見ていきたいところです。

今回は3歳牡馬、牝馬路線を紹介していきますが、菊花賞・秋華賞に向けてテンションが上がっていくような記事にしたいと思ってます。皆さんと一緒に盛り上がれる助けになれば幸いです。

3歳牡馬路線 - G2レベルの凡戦か? 新たな名ステイヤーの誕生か?

2022年の菊花賞路線は、春の実績馬の多くが不在という混戦模様。

ダービー馬ドゥデュースは凱旋門賞へ、皐月賞馬ジオグリフや、ダービー・皐月賞2着のイクイノックスは天皇賞秋への参戦を決め、ダービーで1番人気4着のダノンベルーガは次走未定。今年の菊花賞には、春に3歳4強とも呼ばれた馬達は、いずれも参戦しない。このことから『今年の菊花賞は低レベルではないか?』という声も上がるほどだ。

──だが待ってほしい。

昨年の菊花賞もダービー1,2,4着馬が不在ではあったがダービー5着のタイトルホルダーが強い勝ちっぷりを見せ、4歳春には天皇賞春・宝塚記念を連勝。今では現役最強馬の1頭として凱旋門賞を目指すほどの馬になった。昨年の菊花賞前、タイトルホルダーがここまでの地位に上り詰めると予測できたファンが、どれほどいるだろうか。「あんなに強いステイヤーが出たのはたまたまだよ」という声もあるかもしれないが、私は阪神芝3000Mで行われる菊花賞だからこそ強いステイヤーが出現してその後の成長につながったと見ている。

スタミナが問われる阪神・菊花賞

従来、菊花賞が行われていた京都競馬場は芝質が軽く、スピード重視の馬場。加えて馬場管理技術が進化したこと、2000年から10月の第3週(今年は第4週)へとレースの開催日時が前倒しになることによって高速馬場で行われる場合が多くなった。このことがスタミナを重視する菊花賞ではなく、スピードを重視される菊花賞へと変わっていった。端的に言ってしまえば、道中はスローで進み、2回目の坂の下りを生かした切れ比べの勝負に変貌してしまったということである。

多くの競馬ファンが望むであろう『スタミナが問われる菊花賞』ではなくなり、中距離馬でも対応できる菊花賞に変わっていく中で『最も強い馬が勝つ』と呼ばれた菊花賞とは少し違った傾向になっていったのかもしれない。

ところが、京都競馬場のスタンド改修によって昨年と今年は阪神芝3000Mで行われる菊花賞となる。京都よりも芝質が重く、京都よりもスタミナとパワーも必要な阪神芝3000Mで行われる菊花賞こそが『スタミナがある馬が勝つ菊花賞』になるのではないだろうか。

菊花賞を目指す有力馬たち

菊花賞に出走予定の馬で春の実績馬といえば、ダービー3着のアスクビクターモアが挙げられる。春は4強を追う立場ではあったが、ダービーでは巧い立ち回りを見せて3着。騎乗した田辺騎手も『短い距離より長い距離の方が良さそうです』とコメントした。立ち回りの巧さも含めて安定した実力を見せてくれるはずで、どんな展開になっても上位には食い込んできそう。

成長力を期待するという点では、青葉賞勝ちのプラダリア。未勝利勝ちから青葉賞に直行して勝利し、続くダービーでは5着。池添騎手も『必ず巻き返せるだけのポテンシャルはあるので、無事に夏を過ごしてほしいです』と発言している。無事に夏を越えればダービー上位陣に迫れる力があるという手応えがあるからこそのコメントであり、キャリアの少なさを考えれば上積みは大きいはず。秋初戦は注目だろう。

重賞勝ち馬という点であればフェーングロッテンも期待が大きい。皐月賞・ダービーには間に合わなかったが、ラジオNIKKEI賞を制覇。次走には古馬重賞の新潟記念を選択し、3着と好走している。実績馬が少ないメンバーとなる中で、対古馬でも結果を出したのは大きい。菊花賞へは気性難と距離の克服が課題になるが、クリアできれば勝ち負けできる能力はあるだろう。

大物感という点でドゥラドーレスに期待するファンも多い。『ダービー候補』と噂されたものの春はなかなか結果が出なかったが、札幌の藻岩山特別(2勝クラス)で完勝した。横山武騎手の『このクラスにいる馬じゃない』というコメントからも、手応えを感じる。春に結果を出せなかった大器が、夏を越えてファンの期待に追いつけるだろうか。

雨が降るなどしてタフな馬場になればブラックブロッサムの出番だろう。大寒桜賞は重馬場の中2着に8馬身差の圧勝。京都新聞杯では結果が出なかったが2勝クラスの信夫山特別を勝ちこれで4戦3勝とまだ底を見せていない。タフな馬場になり、スタミナを問われる流れになれば展開が向くだろう1頭だ。

今年は『夏の上り馬』が活躍する可能性もありそうだ。ディナースタは札幌芝2600Mで連勝と長距離適性は十分。菊花賞に直行のようだが、去年の菊花賞を勝った横山和騎手の騎乗が正式に決まったことは大いにプラスと言える。タイトルホルダーで菊花賞、天皇賞春と勝ち切った経験が十分にいきるだろう。血統的にも札幌記念を勝ったジャックドールの弟と、魅力は十分。勢いそのままにG1制覇もあり得るのではないだろうか。

このメンバーでスローからのヨーイドンはありえない!?

ここまで有力馬を紹介してきたが、このメンバーでスロー展開となることはないように思う。

ブラックブロッサム、フェーングロッテンが先行するだろうし、立ち回りの巧いアスクビクターモアも位置を取りに来る。展開によってはディナースタが向正面で動いてくる可能性もある。各馬が序盤から動いてくる展開を望むファンも多い。昨年も『タイトルホルダーがいて、各馬が積極的に動いてレースが面白くなった』と思うファンも少なからずいたことは確かだろう。

今年のメンバー構成だと、複数の馬が積極的に動いていく可能性もある。そうなれば、どんな結果になるか予測不能な展開となる。

未完成の馬が集まったからこそ起こる、何が起こるか分からない展開を楽しみたい。

3歳牝馬路線 - 真価が問われる2冠馬

2022年の3歳牝馬路線は、スターズオンアースの2冠で幕を閉じた。

ただ、必ずしも一強とは言えないと感じているファンも少なくないのではないだろうか。

フェアリーS、クイーンカップで2着だったこともあってか桜花賞では7番人気。レースではややスローペースで進んだ中で内枠をいかしてうまく立ち回っての勝利だった。続くオークスでは桜花賞勝ちの実績に加え、鞍上にはルメール騎手を迎えたが、それでも3番人気だった。レースでは大外枠だったが、こちらもうまく立ち回って差し切っている。騎手の立ち回りの巧さが目立つ二冠だったのではないだらうか。

もしスターズオンアースが秋華賞を勝てば、三冠牝馬となる。オークス後に骨折が判明したものの、幸いけがは軽度で秋華賞には間に合うとのこと。ただ、骨折明けのレースが秋華賞というのはかなり高いハードル。さらにレースでは二冠馬としてマークを受ける立場でもある。条件的にはかなり厳しいと言えるが、逆に言えば秋華賞を勝てばその実力に疑問を持つものはいなくなり、新たな三冠牝馬として祝福されるだろう。

重要度が高くなった秋華賞トライアル

秋華賞ほどトライアルレースの結果が直結するレースは珍しい。紫苑Sが2016年に重賞に格上げされてからの過去6年、秋華賞で3着以内に入った馬が18頭いるが、前走オークスからの直行が4頭、紫苑Sが6頭、ローズSが7頭と、この3つのレースからの臨戦過程がいかに重要かが分かる。

加えてトライアルレースで3着以内に入らずに秋華賞で3着以内に入った馬は2016年の紫苑Sで不利があったパールコード、ローズSで4着のシゲルピンクダイヤ、ローズSで7着だったが元々オークス2着があったモズカッチャンのみ。他の紫苑S組、ローズS組は3着以内とトライアルレースの結果がそのまま秋華賞に直結しやすい傾向にある。

今年は混戦模様の3歳牝馬路線。トライアルレースはもはやG1への第一関門と言ってもいいくらいの重要性の高いレースになった。

秋華賞を目指す有力馬たち

紫苑Sは、実績的にはスタニングローズ、サークルオブライフが上位。スタニングローズは、3歳春に入ってからの成長が著しいオークス2着馬だ。オークス後には『秋になって成長すれば楽しみです』とレーン騎手もコメントを残していて、もう一段の成長の余地があるはず。3歳春は3戦2勝2着1回と安定感抜群。秋華賞で二冠馬が力を出し切れない場合、この馬が浮上してもおかしくない。

一方のサークルオブライフはここが正念場となるか。3歳春はチューリップ賞3着、桜花賞4着と今一歩、1番人気に推されたオークスでは出遅れて競馬にならず。放馬で馬がイライラした面もあっただろうが、厳しい結果となった。トライアルでは巻き返しに期待したいところだが、今回も結果が出ないようだと秋華賞ではほぼ巻き返しの前例がないような状況に陥ってしまう。巻き返しを誓うとともに崖っぷちの一戦でもあるレースになった。

また、上記2頭に対して、フェアリーS勝ち馬ライラック、3歳1勝クラスを勝ったサンカルパ、サウンドビバーチェらが挑む構図になった紫苑S。右回りの2000Mという事で、秋華賞の阪神芝2000Mに近いといえる中山芝2000M。ここでの走りは注目だ。

一方のローズSで最大の注目を集めるのが良血のサリエラだろう。母がドイツオークスを勝った名牝で、姉に府中牝馬Sを勝ったサラキア、兄に朝日杯FSを勝ったサリオスがいる血統。父もディープインパクトという、超良血である。戦績も2戦2勝と完璧。今回は中京への輸送が課題となりそう。2戦目の1勝クラスのレースでは後方2番手を進み、直線に入って残り200Mの地点でも後方3番手。そこから馬場の真ん中に入り素晴らしい切れを見せてゴール前で差し切っている。上り3ハロンは32秒9と驚異的な切れ味。スローペースで進んでレースの上り3ハロン33秒8の切れ比べを残り200Mの地点でも後方3番手から差し切ったという点で能力は相当なものだろう。中京の長い直線はピッタリあうはずで、一気に3連勝でそのまま秋華賞も……という可能性もありそうなポテンシャルを持つ。

実績的にはアートハウスも上位。忘れな草賞の勝ち馬で、オークスは7着に敗れている。上り3ハロンは35秒4で勝ったスターズオンアースは33秒7で2~6着は34秒台。上位陣とは直線での切れの差が出てしまった。ローズSでも直線での切れが気になるところだが、中京は東京と違ってそこまで速い上りが出ないコース。立ち回りと先行力をいかせる場面もあるはずだ。

また、隠れた実力馬のピンハイにも注目が集まる。チューりップ賞2着、オークス4着と健闘している同馬。『一息入れて次の秋の2000Mが楽しみになりました』と高倉騎手。一瞬の切れ味は相当なものがあり、うまく立ち回れば上位進出は十分にある。父は短距離で実績を残したミッキーアイルだが、オークスを見ても乗り方次第では2000Mくらいまでは持ちそうな印象。

紫苑S、ローズSで勝ち残らないと秋華賞では厳しい!?

前述した傾向の通り、紫苑SとローズSの重要度は高い。牝馬の調整の難しさもあってこの時期に調子を狂わせるとなかなか調子が戻らないのもあるだろう。トライアルの負けはそのまま本番での負けにつながりやすいことからも、トライアルレースはさながらトーナメント戦の準決勝のようだ。決勝では、トライアルで生き残った者とオークスからも直行組が待っている構図。華麗な牝馬の激しくも厳しいサバイバルを体感したい。


さて、いかがだったでしょうか?

3歳の各路線について可能な限りフラットに語ってきました。その状況を踏まえて考察すれば、存分にトライアルレースを楽しめるのではないでしょうか。

少しでも参考になったり、G1を楽しめる助けになれば幸いです。

秋競馬も目一杯、盛り上がっていきましょう!

写真:ぉりゅぅ、かぼす、俺ん家゛、かずーみ

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