存在感を増している3歳スプリント重賞
未来の名スプリンターの登竜門となるか?
27日土曜・京都のメインレースは葵Sが行われます。
2018年から3歳限定の1200Mの重賞に昇格されたばかりなのでレースの歴史はまだ浅いですが、18年の2着馬ラブカンプーは同年のスプリンターズSで2着、3着馬のトゥラヴェスーラは今年の高松宮記念で3着。さらに21年2着のヨカヨカは同年の北九州記念を制して九州産馬初の重賞を制覇しています。そして昨年の勝ち馬ウインマーベルは同年のスプリンターズSで2着と、重賞昇格後は後のG1でも好成績を残した馬を輩出しています。今年も各路線からスピード自慢が揃いました。このレースから未来の名スプリンターが出てくるかもしれません。先が楽しみなレースだと言えるでしょう。
2023年 葵Sの見どころ
今年のメンバーを見渡すと「4連勝中のビッグシーザーに他の馬はどのくらい戦えるか?」という点が焦点になりそうです。3歳時には1200Mのレースが少なく、適鞍を求めて1400M、1600Mに距離延長する馬やダートを使っていた馬もいます。そこで結果が出なかった馬がベストの1200Mに戻った時に本領を発揮するというケースもあるので、1200Mのレースばかりを使ってきたビッグシーザーとの力関係がどうか、というのは興味深いポイントです。
今年の葵Sは、改修が終わった京都で行われることも大きなポイントです。
コース自体は内回りの芝1200Mなので変更はありません。芝もこの時期らしく速い時計が出る馬場で、先週土曜はやや重馬場でしたが速い時計が出る馬場での開催。お天気だった日曜は乾燥してより速い時計が出る馬場での開催でした。ちなみに、先週日曜の京都の芝のレースでは6レース中逃げ馬の連対が1頭のみと、差し・追い込み馬が7頭と差し有利の傾向。このレースでそのまま使えるかどうかは分かりませんが、参考になるかもしれません。
葵S 注目馬紹介
ビッグシーザー - 『スプリント王』の系譜を継ぐ者として1200Mでは負けられない。
まずはこのレースで一番の注目が集まるであろうビッグシーザーを紹介していきます。
3戦目の未勝利戦では中京芝1200Mの2歳レコード勝ち。その後も1200M戦を使い続けて4連勝と、スプリント路線を驀進中の3歳牡馬です。この馬の強みはスピードの能力だけではなく、時には差しにも回れる立ち回りの巧さにもあります。2勝目の福島2歳Sではスタートで少し斜めに出て中団からになりましたが、3~4コーナーで外を回って追い上げて直線で差し切りました。
前走のマーガレットSでも出脚の速い馬を行かせて4番手から。道中で揉まれる競馬になり、直線に入ったところでやや進路が無くなりかけましたが、こじ開けるように進路を作って抜け出し快勝と強い勝ち方を見せました。先行しても良し、控えても良しという理想的な競馬ができているビッグシーザーの能力と素質の高さは間違いありません。祖父サクラバクシンオー、父ビッグアーサーというスプリント王の血を受け継ぐものとして1200M路線の『王』になることを期待する競馬ファンも多いのではないでしょうか。
ペースセッティング - 短距離でこそ本領発揮 様々な経験がここで生きる
このレースはビッグシーザーが中心であることは明らかですが、同馬が注目されればされるほど存在感が出てくるのがペースセッティングです。
小倉の未勝利戦では好スタートからハナを切り、セーフティーリードを保って逃げ切りました。
直線でビッグシーザーが1頭だけ追ってきますが3馬身差の完勝と圧倒的なスピードを見せています。
その後は1400Mの京王杯2歳Sで中団からの競馬になって4着、シンザン記念では逃げたものの距離が長かったのか2着。前走のファルコンSでは力んでしまってスタミナを消耗してしまったのか11着に敗れてしまいました。前を抜こうとしない癖が出てきているのが気になりますが、1200Mに戻って逃げることができれば、小倉の未勝利戦のようにビッグシーザーを完封する可能性もあるのではないでしょうか。
モズメイメイ - チューリップ賞勝ち馬の意外な選択は吉と出るか。
今年の葵Sの出走馬で驚きだったのが、チューリップ賞を勝ったモズメイメイの参戦です。
勝った3戦は全て1600M。1400Mのつわぶき賞は3着で、1200Mの経験がありません。3歳路線ではクラシック戦線で結果が出なかった馬がマイル路線に移って結果を残すという例は珍しくありませんが、1600Mのマイル路線から1200Mのスプリント路線に移ってどうか、というところでしょう。
チューリップ賞勝ちで一時は『クラシックでも戦えるのでは?』と囁かれていたモズメイメイ。
スプリント路線への挑戦は大いに興味のあるところではないでしょうか。こぶし賞、チューリップ賞、桜花賞と逃げてレースを引っ張りましたが、前半600Mはそれぞれ、35秒3、35秒2、34秒0。桜花賞時に記録した34秒0でも1200M路線ではやや遅めのペースですので、今回はおそらく中団から後方の位置になるでしょう。そこから脚を伸ばせるかどうかはやってみないと分かりませんが、多頭数の経験もある立ち回りの巧いレースに期待したいですね。
タマモブラックタイ - 同じ右回りの小倉実績、距離短縮がいきるか。
今年の葵Sは改修された京都で3年ぶりに行われるとあって、どんなレースになるのか判断がつきにくいところもあります。参考になりそうなのが先週の日曜京都6Rで行われた3歳1勝クラスのレースです。前半600Mが33秒8、後半600Mが34秒5とやや前半が速い流れで進み、中団のインを進んだシルフィードレーヴが勝利。中団の馬群の真ん中を捌いてきたトーホウフランゴが2着、先行して粘ったスイープランが3着という結果でした。
個人的に、今の京都で参考にすべきだと思っているのが、小倉実績です。メンバーから前半がかなり速い展開になりつつも、先行集団についていけるスピードも求められる展開になるでしょう。勝ち馬のシルフィードレーヴも小倉2歳Sで3着と結果を出しているだけに、葵Sでも小倉実績のあるタマモブラックタイに注目しました。
ファルコンSの勝ち馬でもありますし、NHKマイルカップでも直線で一度先頭に立って見せ場を作っています。時計のかかる馬場ならば押し切ってもおかしくない能力の持ち主と言えるのではないでしょうか。
アンビバレント - 前走は3馬身半差をつける圧倒的なスピード。波乱を狙う1頭。
前述したように、レースの展開としてはやや前半が速く流れて後半に上りがかかるものになる可能性があります。人気のビッグシーザーがどんな競馬もできるタイプですので、絶対にハナを主張するわけではなく、逃げたいタイプの馬をそのままいかせる可能性は高いです。そうなると、逃げ馬は、勝ち切るかどうかはともかく、2,3着に残ってしまう可能性もあるのではないでしょうか。そこで、前走逃げて2着に3馬身半差をつけたアンビバレントの積極性に期待します。
前走の中山での3歳1勝クラスのレースは雨で不良馬場での開催。時計のかかる馬場状態でしたが、スタート後から飛ばしてハナに立ち、直線では伸びない後続を尻目に2着以下を突き離しました。いかに馬場が悪かったとはいえ、1200Mのレースで2着に3馬身差をつけたのは地力の高さです。また、不良馬場にもかかわらずスタートからの200Mは11秒8と今回の葵Sのメンバー中で最速です。前半が下り坂の中山だったとはいえ、速いペースで逃げて消耗戦の展開でもスピードを維持できるのはスプリント能力の高さでしょう。うまくスタートが決まれば一発あってもいいのではないでしょうか。
ブーケファロス - 先行激化で一閃の差しを狙う。
葵Sの出走メンバーを見渡すと、1200Mの重賞らしく逃げ・先行馬がかなり多いメンバー構成です。戦前の予想として、かなりの先行激化が予想されます。ただ、前述したように先週の京都は差し、追い込み有利の傾向ですので、差し、追い込み馬には注意が必要でしょう。
前走でビッグシーザーの2着だったブーケファロスに再び展開が向く可能性は大いにあるでしょう。同馬はこれまで芝1200Mで4戦4連対と素晴らしい成績を残していますが、その全てが中団や後方からの差しでの結果。1200Mの差し馬としてキャラを確立していると言えます。前走は完全に勝負が決まった後ではありましたがいい切れを見せて2着浮上。今回も同様の展開が期待できるでしょう。
3歳スプリント重賞として年々存在感を増している葵S。
今年の出走馬達もスピード自慢が揃って、スタートから激しい争いになることでしょう。今回のレースのその先のサマースプリントやスプリンターズSに出走するのが楽しみな馬が出てくることに期待しましょう!
写真:taka.m