![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]福ちゃんファースト(シーズン2-40)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/202610261-scaled.jpg)
デビュー戦を前に、新馬奨励金の100万円がもらえないという悲劇が起こりました。新馬奨励金とは、地方競馬場ごとにある奨励金のひとつであり、自場でデビューしてもらう新馬を誘致する(増やす)ための助成金や補助金のようなものです。南関東競馬の4場(大井、川崎、船橋、浦和)は一律100万円であり、能力試験に合格すると馬主に振り込まれます。デビューするまでにかかった育成費や厩舎への預託費の一部が補填されるため、地方競馬で愛馬をデビューさせる馬主にとってはありがたい制度です。
ルリモハリモを船橋競馬場でデビューさせた際は、千葉県馬主会から「2歳馬確保対策事業」として100万円を支給してもらいました。千葉県馬主会は2歳の8月中に船橋競馬に入厩していなければならないため、ルリモハリモはギリギリの8月30日に張田厩舎に入厩させてもらいました。9月の能力試験に合格し、半持ちをしてくれているNO.9ホーストレーニングメソドの木村さんと折半できました。
ドコフクカゼは7月に能力試験に合格し、同じように新馬奨励金をいただけるのかと思っていたところ、神奈川県馬主会はルールが異なるようで、「前年度に事前申し込みを行っていること」という条件があるようです。前年度、つまり2025年の3月中に新馬奨励金がほしいですという申請をしなければならなかったことになります。まさか南関東競馬の4場の中でそのような違いがあるとは…、知らなかった。福ちゃんの塾代(育成費)の足しにしようと皮算用していた100万円が、水の泡と消えてしまいました。鳥取砂丘のように干上がっている僕の懐に、一滴の水さえも垂らしてくれないのですから、競馬の世界は厳しく、無知とは恐ろしい。
そもそも、ドコフクカゼを川崎競馬の長友厩舎に預けることを決めたのは、今年の4月に入ってからですから、仕方なかったことでもあります。早い段階から、どこの競馬場のどの厩舎に預けると決めていれば良かった。そうすれば、その競馬場のルールに詳しい人が、制度の違いを教えてくれたかもしれません。ギリギリまで迷ってしまった僕が悪い。急いては事を仕損じるけど、後手後手に回るともらえるものももらえなくなるのですね。愚痴を言いたいわけではなく、この連載を読んでくれている、いつか川崎競馬に馬を預けたいという馬主さんがいたら、知っておいた方が良いという意味で共有させてもらいます。
新馬奨励金のもらい損ね以外は、能力試験に合格してからデビュー戦を迎えるまでの間、喜びと希望に満ちた充実した日々を送りました。ドコフクカゼの横断幕に、チーム福ちゃんの皆さんからのアイコンで「がんばれ♥ふくちゃん♥」の文字を書くという企画を進め(これが想像以上に大変な仕事でした)、皆さんからの愛を感じながら、福ちゃんの無事を祈る毎日。能力試験に受かって競走馬登録ができたとしても、デビューできなければ意味はありません。競馬場において皆さんの前で走って初めて、福ちゃんは競走馬になったと言えるのです。
デビュー戦の予定日が変更になる、というトラブルも発生しました。今年に入ってからの新馬戦の傾向として、川崎開催の木曜日に1400m戦が2鞍、金曜日に900m戦が2鞍組まれてきましたので、7月後半の開催も1400m戦は木曜日だと考え、7月30日(木)のデビュー戦に出走予定と告知しました。
ところが、10日前に主催者から発表された番組表を見ると、まさかの1400m戦と900m戦が逆に組まれているではないですか。ということは、1400m戦は7月31日(金)に行われることになります。事前に告知したことで、遠くは沖縄や北海道などから飛行機のチケットと宿を取ったという声も聞いていましたので、いったんキャンセルして取り直してもらわなければいけなくなります。
当日のオフ会用にと川崎競馬場の貴賓室も取っていたので、これも無駄になります。福ちゃんは僕だけの馬ではありませんから、簡単に日程がズレました、はい分かりましたでは済まないこともあるのです。その日のために応援しに来てくれる人たちのことを考えると、もしかするとそのまま木曜日の900mの新馬戦に出走した方が丸く収まるのではないかとも考えました。
長友調教師と相談したところ、「福ちゃんにとっては1400m戦の方が力を出し切りやすいです。900m戦には速い馬が出てくるので勝つことは難しいですが、1400m戦ならチャンスはあるはずです」となだめられました。もちろん、僕だって1400m戦の方がドコフクカゼに合っている舞台だと分かっていますし、ここまで妥協せずに来ているので、レース選択においても福ちゃんにとってベストな道を採りたい気持ちは山々です。反面、たとえ勝てないとしても、福ちゃんが無事にデビューして、900m戦のレースを走って回ってくれば、周りの人たちは拍手を送って満足してくれるはずなのです。
「たとえばシンボリルドルフは芝の1000m戦でデビューしたんだけど、野平祐二調教師は岡部幸雄騎手に『1000mのレースだけど、1600mのつもりで乗ってくれ』と指示を出したように、900mのレースだけど1400mのつもりで回ってきてもらえば、スタートしてからガンガン突っ走るようなリズムもつくことはなく、次走で距離延長して走れば問題ないのでは?」と無茶ぶりをしましたが、長友調教師は動じません。普段は柔軟にアイデアや意見を聞き入れてくれるのですが、ここだけは譲れませんという構えです。
志村さんに聞いてみても、「1400m戦なら勝ち負けで、900m戦ならノーチャンスだと考えていただけに、900m戦でデビューするのはもったいないですねぇ」とあっさり返ってきました。そうですよね。僕だって分かってます(笑)。彼らとのやり取りを経て、揺らいでいた僕の気持ちも固まりました。
これから先も似たようなことがあるはずですが、周りの人間たちの大人の事情や虚栄心、しがらみなどに配慮することはあっても、最終的には福ちゃんことドコフクカゼにとっての最良の選択をするべきなのです。福ちゃんファースト。福ちゃんが先で、僕たちが後です。

結局のところ、7月31日(金)の1400m戦にてデビューすることに決めました。3日前には出走表も発表され、第5レースは7頭立て。ドコフクカゼは1枠1番です。砂を被るとどのような反応をするのか未知であり、そういう意味では砂を被らずに走れる外枠が理想でしたが、よりによって最内。デビュー戦ぐらいは砂を被らずに走らせてあげたいと思っていましたが、競馬の神様は意地悪ですね。
ドコフクカゼはゲートの中で落ち着きすぎてしまい(気が抜けて)、ゲートが開いてポンと出るタイプではありませんし、ストライドが大きく徐々にスピードに乗る走法なので、どうしても逃げ・先行することが難しい。そうなると上手く外に出せないと、どこかで砂を被る場面が現れるはずです。そこでどのような反応をするのでしょうか。
顔に水がかかるだけで嫌がって後方にソッパしてしまうため、濡れタオルで顔を拭かないといけないぐらいのお嬢様ですから、砂を被ったらどうなることやら。ここまで順調に来られているだけでも幸運なのですが、こうした細かいウィークポイントがあると、レースで能力を発揮できなくなってしまいます。レースに出走し、力を出し切って勝利することが、競走馬にとってどれだけ難しいことか。
せっかくなので、貴賓室を使って前夜祭を開催することにしました。碧雲牧場の理恵さんもすでに航空チケットを取ってしまっていたので、サプライズゲストとして登場してもらうことにしました。デビュー戦当日は、僕も理恵さんも撮影や福ちゃんのレースを観ることで精いっぱいのはずですから、せめて前夜祭に来てくださるチーム福ちゃんの皆さまとはゆっくり話したいと思います。YouTubeチャンネルで告知すると、少しずつ席は埋まり始め、最終的には38名の予約が入りました。貴賓室の定員は42名ですからピッタリ。無駄にせずに済みました。理恵さんには前夜祭とレース当日の2日間、ファンサービスをしてもらわなければいけませんが、滅多にない機会ですから、頑張ってもらいましょう。
(次回へ続く→)
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