![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]瑠璃も玻璃も照らせば光る(シーズン1-59)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/08/S__21716998_0.jpg)
あちらこちらの牧場から、仔馬が産まれてきた報告が聞こえてくる季節になりました。牡馬だったり、牝馬だったり、生産者の胸に秘めたる想いはそれぞれでも、五体満足で産まれてきてくれて嬉しいという気持ちは同じです。赤ん坊は可愛くて、それを大事そうに舐める母馬も愛おしくて、生産者たちは1年のうちで最も忙しいけれど幸せな時期を過ごしているのではないでしょうか。ダートムーアとスパツィアーレは昨年の受胎が少し遅れたこともあり、今年の出産予定日が3月末と4月中旬になっていますので、もうしばらく待たなければいけません。
待つと言えば、ダートムーアの23の入厩はまだ先になりそうです。NO,9ホーストレーニングメソドの木村さんにはじっくりやってくださいと伝えていますから、早くても夏から秋のデビューになるのではないかと僕は予想しています。浦河の育成場はどこも人手不足ですし、NO,9もその例にもれないはずです。そうすると、育成代をいただいて預かっている馬主さんの馬たちを乗ることが優先ですから、木村さんと半持ちしているダートムーアの23はどうしてもその後ということになります。うちの子は後回しということです。木村さんは自分の馬を優先するようなタイプの人ではありませんし、それを分かって僕もゆっくりで良いですと話しています。そもそもデビューまでの育成代を僕は払っていないのですから、バリバリ乗って早くデビューさせてくださいなんて、主張する権利も資格もありません。
むしろ僕はその方が良いとも考えています。馬体の成長を待ちながら、ゆっくりと育成することで、ダートムーアの23には精神的に苦しい思いをさせることが少なくなるはずです。身体ができていないのに、厳しい調教を課してしまうと、馬は精神的に参ってしまい、走ることが嫌になってしまいます。それでも早めにデビューした方が育成代は少なく済みますし、早く回収できるため、どうしてもデビューを急いでしまいがちです。それは競馬という仕組みを経済的に考えると、馬主にとっては仕方ない選択です。
僕だって育成代が毎月30~40万円かかっている中で、デビューは急ぎませんからゆっくりやってくださいなんてとても言えません。たまたま育成牧場を営んでいる木村さんと半持ちさせてもらい、デビューまでの育成代はこちらで持ちますと言ってもらえているから、ゆっくりやってくださいと言えているだけです。そのことが功を奏し、ダートムーアの23の肉体的・精神的成長に沿った形でデビューさせてあげられると良いなと願っています。馬体重も少なくとも460kg以上、できれば470~480kgまで増やしてデビューできるのが理想です。それぐらい肉体的にパワーがついてくると、レースで大きな負荷がかかっても精神的なダメージが少なく、耐えられるでしょうし、何よりも結果が出て、次にもつながる走りができるはずです。

まだデビューは先であっても、競走馬名は考えておかなければいけません。自分で馬名登録をしたことがないため、どのタイミングでどのように馬名を決めて登録するか知らないのですが、そのタイミングが来たときに慌てないように考えておかなければいけないのです。実は、馬主は語る(シーズン1-10)でも書いたように、僕は馬主になったら付けたい馬名がずっとありました。
ホゲットミーノット
日本語にすると忘れな草。名前のとおり、忘れたころに追い込んで来る、僕が競馬を始めた頃に好きになった1頭の牝馬の名前です。父はカブラヤオー、開業当初の国枝厩舎を支えた馬の1頭でした。その後、2000年に最後の産駒を産んで以降、ホゲットミーノットは繁殖牝馬としての登録を抹消、もしくは死亡しています。
しかし、その年から14年が経てば同じ名前を付けられるため、2019年に生まれたトーセンホマレボシ産駒にホゲットミーノットという名の牝馬がいます。おそらく僕と同じことを考えていた馬主さんがいたのでしょうね。2頭目のホゲットミーノットは2023年に競走馬登録を抹消し、繁殖入りもしていないため、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルの馬名登録サイト(https://www.studbook.jp/bamei-service/search_name/search)で調べると、2027年には使用可能とされています。あと2年早ければ…と思いますが、今年はあきらめるしかありません。
と言いつつも、ダートムーアの23の馬名は、心の中でもうすでに決まっていました。
ルリモハリモ
漢字にすると、瑠璃も玻璃も。この連載をずっと読んできてくださった読者の方でさえ忘れていると思いますが、由来は「月の満ち欠け」という小説の中に登場する「瑠璃も玻璃も照らせば光る」ということわざです。小説の主人公である(何度生まれ変わっても同じ男性を愛する)瑠璃の名前の由来にもなっています。ちなみに、「月の満ち欠け」は映画化され、僕の大好きな女優である有村架純さんが瑠璃役を演じています。
ことわざとしての「瑠璃も玻璃も照らせば光る」は、優れた才能や素質がある者は、どこにいても目立つという意味です。ただし、照らさなければ瑠璃も玻璃も光りません。セレクションセールでもオータムセールでも、たとえ理由はあったにせよ、見いだされなかったダートムーアの23にピッタリの名前ではないでしょうか。僕にとってダートムーアの23は瑠璃や玻璃のように素晴らしい馬であり、誰も光を当ててくれなかったという怨念が込められているような気もしますが(笑)。照らせば光ることを証明していきたいという、僕の強い意志表示でもあります。
ジャパン・スタッドブック・インターナショナルのサイトで検索をかけてみると、ルリモハリモは該当するデータがありませんとのこと。一度も使われたことがないようでひと安心です。馬名登録をするためのIDとパスワードを手に入れ、馬名登録書にそのIDと希望の馬名等を記入し、血統登録書を添付して送れば手続き完了です。その後は審査があり、問題がなければ結果が通知され、その通知を持ってNARに競走馬登録をするという流れです。
あとはイントネーションの問題があります。ルリモハリモは可愛い名前ですが、イントネーションが伝わりづらいと考えていました。ことわざからの由来だとすれば、「ル」と「ハ」にアクセントがありそうですが、僕の考えるイントネーションは違います。どちらかというと「モ」にアクセントをつけて、緑藻のマリモみたいなイントネーションにしたいのです。伝わっていますかね?ルリモ↑ハリモ↑です。
イントネーションまでは馬名登録できませんから、地方競馬の実況をしてくれる株式会社耳目社にかけ合うしかないのかもしれません。何も伝えていないと、ことわざからの由来だと考えて、「ル」と「ハ」にアクセントをつけた読み方で紹介してくれるはずです。そして、その実況のイントネーションを聞いて、たとえばパドック解説のMCさんもアナウンスをするという流れです。最初どのようなイントネーションで紹介されるかで、右にならえ的に決まってしまいますから、最初が大事です。最初から「モ」にアクセントがある可愛い呼び方をしてもらえるうように、働きかけをする必要がありますね。
ルリモハリモー!
ルリ―!
競馬場で皆さんに応援してもらえる瞬間を楽しみに待ちます。
(次回へ続く→)