[POG2020-2021]法則発見!?キズナ産駒の分析結果と期待馬紹介

初年度からダービー5着馬をはじめ!頭もの重賞馬を輩出したキズナ。
早いうちから活躍し、しっかりとクラシック戦線まで走りきってくれる産駒たちに、好感を抱いた人も多いだろう。
巷では「日高との繁殖で活躍馬を出している!」と話題になっているが、なぜだろうか?
サンプルが少ないこともあり、血統的な傾向を見出すのはまだ早計な気もする。
よりシンプルな法則を探してみたので、そちらをご紹介したい。

血統だけでの判断は難しい!?活躍したキズナ産駒の血統とは。

まずはセオリーとして、母父との相性を考えてみる。
ステイ×マック、ディープ×ストームキャットのような抜群の相性を誇る配合を見つければ、ライバルたちを置き去りにできそうだ。
重賞で活躍している主なキズナ産駒の「母父」は、以下の通り。

  • マルターズディオサ(Grand Slam)
  • ビアンフェ(サクラバクシンオー)
  • ディープボンド(キングヘイロー)
  • クリスタルブラック(タイキシャトル)
  • アブレイズ(ジャングルポケット)
  • キメラヴェリテ(Cozzene)
  • レジェーロ(ロックオブジブラルタル)
  • スマートリアン(Mr. Greeley)
  • ショウナンハレルヤ(クロフネ)

なんと、1頭も同じ配合がいないのだ。
さすがにバリエーション豊かな母父で、それほど多くの重複もないのかもしれない……と、気を取り直して、より範囲を広く、母父の系統を並べてみる。

  • Grand Slam=Mr. Prospector系
  • サクラバクシンオー=テスコボーイ系
  • キングヘイロー=Lyphard系(Northern Dancer系)
  • タイキシャトル=Halo系
  • ジャングルポケット=ゼダーン系
  • Cozzene=Caro系
  • ロックオブジブラルタル=Danzig系(Northern Dancer系)
  • Mr. Greeley=Mr. Prospector系
  • クロフネ=Deputy Minister系(Northern Dancer系)

うーむ、と唸り声をあげたくなる結果だ。
特にこれといった傾向はなさそうで、ノーザンダンサー系が悪くなさそうというありがちデータに留まった。

一方、クロスの有無は重要な指標に?

2020年6月1日現在、エピファネイア産駒の獲得賞金額TOP5は、デアリングタクトを含めた全頭が「サンデーサイレンスの3×4」持ち。今話題のサンデー奇跡の血量だ。T
OP10まで範囲を広げても、8頭がサンデーの3×4、残りの2頭のうち1頭はサンデーの4×4だった。

この勢いにのって、キズナ産駒でも「サンデーサイレンスの3×4」を狙うべきだろうか?
早速、上述した活躍馬たちのクロスを調べてみた。

  • マルターズディオサ(Northern Dancer 5×5×5、Secretariat 5×5)
  • ビアンフェ(Northern Dancer 5×5)
  • ディープボンド(Halo 4×4、Lyphard 5×4、Northern Dancer 5×5)
  • クリスタルブラック(Halo 4×4、Hail to Reason 5×5×5)
  • アブレイズ(Halo 4×5、Northern Dancer 5×5)
  • キメラヴェリテ(Northern Dancer 5×5、Secretariat 5×5)
  • レジェーロ(Northern Dancer 5×5×5)
  • スマートリアン(Northern Dancer 5×5、Secretariat 5×5)
  • ショウナンハレルヤ(なし)

ライバルのエピファネイアとは反対に、濃いクロスの馬がほとんどいない状況だ。
母父スペシャルウィークや母父アドマイヤムーン、母父ネオユニヴァースなど、サンデークロスを持つ馬もいたが、今の所は苦戦している馬が多い。これはサンデーのクロスに限ったことではなく、ストームキャットの3×4なども同様だ。

ノーザンダンサーのクロスは、合っているというよりは「まぁ、今の生産界では、ノーザンダンサーのこれくらいのクロスは避けられないよね?」というくらいに考えて良いと思う。Secretariatの5×5も同様で、マイナスにはならないだろうが、これがあるからグンと評価を上げていいかといえば、そこまでではないだろう。
つまりは、なるべくクロスがない馬を優先しておいた方が良さそう、ということだ。

キズナ×逃げ切り勝ちできる繁殖=活躍馬の法則!?

続いて、キズナ初年度産駒の重賞馬たちの「母親」に注目していく。
注目すべきは「血統」ではなく「牧場のある場所」でもなく、「現役時代の戦績」だ。
今回は、それぞれの母馬が現役時代にあげた勝ち星と、その際の通過順位を確認してみた。

マルターズディオサ

チューリップ賞 1着、阪神JF 2着、サフラン賞 1着、桜花賞・オークス出走

母トップオブドーラ 現役時代20戦3勝
勝ち星:3歳未勝利(ダ1000m・通過2-2)、3歳以上500万下(ダ1000m・通過1-1)、3歳以上500万下(ダ1000m・通過1-1)

ビアンフェ

函館2歳S 1着、葵S 1着、京王杯2歳S 2着、朝日FS出走

母ルシュクル 現役時代15戦3勝
勝ち星:2歳新馬(芝1200m・通過3-3)、すずらん賞(芝1200m・通過5-6)、道新スポーツ杯・1000万下(芝1200m・通過4-3)
※中スポ賞ファルコンSで3着、阪神JF・桜花賞出走

ディープボンド

京都新聞杯 1着、ダービー 5着、皐月賞出走

母ゼフィランサス 現役時代22戦3勝
勝ち星:2歳未勝利(芝1200m・通過2-2)、3歳500万下(芝1600m・通過2-2)、4歳以上500万下(芝1800m・通過1-1-1-1)

クリスタルブラック

京成杯 1着、皐月賞出走(怪我で戦線離脱)

母:アッシュケーク 現役時代4戦1勝
勝ち星:2歳新馬(芝1200m・通過3-2)

アブレイズ

フラワーC 1着、オークス出走

母:エディン 現役時代20戦5勝
勝ち星:3歳新馬(ダ1400・通過2-2)、4歳以上500万下(ダ1800m・通過1-1-1-1)、湯浜特別・500万下(芝1800m・通過1-1-1-1)、古都S・1600万下(芝2200m・通過1-1-1-1)

そのほか、フラワーCで5着、アイビーSで2着などで活躍したクリスティの母ホワイトアルバムは、未勝利戦(ダ1800m)を逃げ切り勝ちを収めているし、未勝利戦・1勝クラスを連勝し朝日FS出走・マーガレットSでも3着に好走したエグレムニの母ビーチアイドルも、新馬戦(芝1200m)を逃げ切り勝ちしている。
デビューから9戦して8度掲示板に食い込んでいるアカイイトも、母ウアジェトは現役時代にあげた2勝どちらも逃げ切り勝ちという成績だ。

つまり、活躍するキズナ産駒の母には「逃げ切りがちができる馬」が非常に多いということがわかる。

もちろん活躍馬の母には未出走馬や日本での出走経験がない輸入牝馬もいるし、追い込み馬もいる。

しかしここで強調したいのは、キズナが日高の馬と相性が良かった理由は「単純なスピード値が高い繁殖が多かったから」という仮説だ。
筋肉良し、スタミナ良し、馬格良しと三拍子揃っているキズナに、シンプルなスピードを付与することでさらにスキのない競走馬を目指す配合が良さそうだ。

キズナ自身は、国内であげた6勝はすべて「上がり最速」。
そして2番手からの競馬を試したラジオNIKKEI杯では3着に敗れている。キズナの持つ瞬発力は、補う必要がないほど鋭かったのかもしれない。
そしてダービーだけでなくフランスの重賞・ニエル賞(芝2400m)で優勝、凱旋門賞(芝2400m)で4着と好走しているように、洋芝すらものともしないパワフルさがあった。

そこに、短距離戦で軽く逃げ・先行ができてそのまま絶対的なスピードで押し切れる牝馬の血が加わったら……。
もしかすると、キズナ産駒における配合のカギは、そこにあるのかもしれない。

さらに雄大な馬体も魅力で、その馬体はしっかりと遺伝している。
上述した母馬のうち、マルターズディオサの母トップオブドーラは現役最低体重428Kg、ディープボンドの母ゼフィランサスは現役最低体重404Kgと小柄な馬だった。そうした小ささをものともしない遺伝力は大きな武器だろう。

今年オススメの2歳キズナ産駒たち

上記の条件を総合すると

  • 母父は特に強調すべき血統はいない、強いて言うならNorthern Dancer系。
  • クロスはなるべく濃くない方がベター。4×3よりも薄い方が良さそう。
  • 母親は現役時代に中央で逃げ切り勝ちをあげている方が良い。

という条件が、「走るキズナ産駒」を導き出すカギになりそうだ。

そこで、その条件に合致する今年の2歳馬から、何頭かピックアップしてみた。

ニホンピロアンバーの18

母父:スウェプトオーヴァーボード(Mr. Prospector系)
Damascus 9.38% 4×5
Secretariat 6.25% 5×5

母のニホンピロアンバーは生粋の逃げ馬で、現役時代にあげた2勝はどちらも逃げ切りがち。
重賞・フィリーズレビューでも逃げて2着に粘り込んだ。
桜花賞・阪神JFに出ていたという点も含めて魅力的な繁殖だと感じる。
叔父には ニホンピロレガーロ・ニホンピロサートという2頭の重賞馬も。

マコトオテギネ

母:マコトブリジャール
母父:ストーミングホーム(Mr. Prospector系)
Northern Dancer 9.38% 5×5×5
Halo 9.38% 4×5
Mr. Prospector 9.38% 4×5
Hail to Reason 6.25% 5×5

母のマコトブリジャールは6歳まで現役生活を続け、引退前の2戦で福島牝馬S(15番人気)、クイーンS(7番人気)を連勝し、まだまだ底知れぬポテンシャルを感じさせた馬だった。
この馬はデビュー戦でも9番人気ながら勝利していたが、その際の走りがかなり強さを感じさせる逃げっぷり。それ以降も逃げ・先行を武器に大穴をあけ続けた牝馬である。意外性は十分すぎる逸材だ。

サイキユイコウル

母:グッドチョイス
母父:フレンチデピュティ(Deputy Minister系)
Northern Dancer 6.25% 5×5

母のグッドチョイスはダートの逃げ馬。デビューは芝レースだったが、そこでローレルゲレイロと対戦している。デビュー2戦目では446Kgだった体重が、5歳の引退前には490Kgに増えていたという成長力にも期待したい。
母父がDeputy Minister系(Northern Dancer系)というのも好印象。母父クロフネで活躍した馬がいるなら、母父フレンチデピュティを狙うのもひとつのセオリーだ。
近親馬には、G1馬グレープブランデーのほか、タヤスエトワール・マルカベンチャーといったダート重賞の活躍馬もいる。

エープラス

母:アドマイヤスペース
母父:アドマイヤコジーン(Caro系)
Northern Dancer 6.25% 5×5
Lyphard 6.25% 5×5

4戦2勝、2着1回という戦績で、オークスにも出走したアドマイヤスペースが母。芝の中距離路線で活躍し、逃げ切り勝ちだけでなく差し切り勝ちもある器用な馬だった。
非常に強い勝ち方を見せたキメラヴェリテが母父Cozzeneというのも心強い。
かなり魅力的な伏兵だと感じる。

レプンカムイ

母:ローレルアンジュ
母父:パラダイスクリーク(Irish River)
Northern Dancer 6.25% 5×5

青森県産馬。
母のローレルアンジュも青森県産馬で、交流重賞・エンプレス杯を制覇している。
初勝利はダート1200m戦を逃げ切っている。ちなみに2勝目の鞍上は、オジュウチョウサンの鞍上で有名な石神深一騎手だった。
ローレルアンジュはすでにJDD勝ち馬のキョウエイギアを輩出しているのも心強い。この母にとっては2013年のキョウエイギア以来となる子供で、そうした意味でも期待が大きい馬である。

ヴィゴーレ

母:ヴァイセフラウ
母父:キングカメハメハ(Mr. Prospector系)
クロスなし

ノースヒルズの誇る名繁殖の1頭、ラティールを祖母に持つ。
ラティールといえば、重賞馬ヒットザターゲットをはじめ、多くの活躍馬を輩出した。
ヴィゴーレの母・ヴァイセフラウもその1頭で、現役時代には全て逃げ切りで3勝をあげている。
タマモクロスやニホンピロウイナーといった血が流れている点も、古くからの競馬ファンには思わず応援したくなる血統ではないだろうか。

他にも、近親に名種牡馬サウスヴィグラスがいるサステナブル(母:ベネラ)、1000m戦だけで4勝をあげたスピードタイプの逃げ馬だった母を持つドリアード(母:ナイアード)、フラワーC勝ち馬アブレイズの全妹・ブライエス(母:エディン)、父キズナ×母父ブライアンズタイムという夢のある配合が実現したプライムデイ(母:ベストオブミー)などはかなり魅力ある配合。どこから重賞馬が出てもおかしくないだろう。また、レガーメダモーレ(母:ヒカルアモーレ)も、ダートでは面白そうな存在だ。

以上が、キズナの初年度産駒から得たデータをもとに導き出した、今年の期待したいキズナ2歳産駒たちだ。ぜひ参考にしていただきたい。

写真:Horse Memorys

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