新馬戦回顧、第3回は6月12日の東西新馬戦を取り上げます。
今週から札幌開催が始まり、各競馬場の第5競走に新馬戦が組まれました。
東京5R 芝1400m ハイアムズビーチ 美浦:荻原厩舎
この世代ただ1頭の白毛馬ハイアムズビーチ、美しく白い砂浜がその名の由来です。母ユキチャンはシラユキヒメ一族、関東オークスをはじめダート重賞で活躍しました。父ドレフォンの初年度産駒としても注目されたレースは、美しい走りを魅せつけての差し切り勝ちでした。
レース概況
スタート直後に藤懸騎手に軽く促されたハギノモーリスが先頭に立ちます。
ハギノモーリスを追いかけてテンクウハン、ベルウッドブラボー、キチロクハニーの3頭が先行し、キョウコウトッパ、シーズアクイーン、ビレッジシングルがその後ろに続きます。
ハイアムズビーチは先行手段を見ながらマイペースに中段外目を追走して3コーナーへ入ります。
4コーナーまで隊列が大きく崩れずに直線に入り、各馬直線の勝負に入ります。先行集団の外目にいたベルウッドブラボーがばてた馬たちを交わしてハギノモーリスを追いかけますが、その外にはハイアムズビーチの白い馬体が伸びてきます。
ハギノモーリスは残り200mで約2馬身差をつけて粘り込みをはかります。逃げ切り勝ちまで残り10mまで粘りましたが、最後はハイアムズビーチの完歩の広い走りに追いつかれてしまいました。
ベルウッドブラボーはハギノモーリスと1馬身差の3着でしたが、捉えることができませんでした。
勝馬・注目馬短評
勝馬:ハイアムズビーチ
ドレフォンの初年度産駒として、また母ユキチャン譲りの白毛馬として、デビュー前から期待と注目が集まっていました。
父ドレフォンはダートのスプリント路線で活躍した馬ですが、その父ジオポンティはアメリカで芝マイル~中距離路線のG1を勝っています。いとこには阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を勝利したソダシがいますので、ハイアムズビーチもソダシ同様に牝馬クラシック路線を進むことになるでしょう。
母ユキチャン、その父クロフネのような大跳びの綺麗なきれいな走り方をする馬で、1完歩で進める距離が長い分、長くいい脚を使って伸びやかな走りが出来るので、直線の長い東京コースもこの馬に合っています。
シラユキヒメ一族は究極の瞬発力勝負になった時に分が悪いため、持ち前のスピード能力を使い切るレース運びが必要ですが、折り合いも良さそうなので、レースセンスの良さで補えるでしょう。
注目馬:ハギノモーリス
この新馬戦の着順を見ると、東京開催の後半戦らしく差してきた馬たちが上位の大半を占めています。その中でも、自ら逃げて2着に残したハギノモーリスの強さに注目です。
前半600mを34.7秒と新馬戦にしては早い時計でコーナーに入ったので、直線に入った時点で先行馬たちの多くは手ごたえ一杯になっていた中、ハギノモーリスは残り400mまで仕掛けを我慢できました。走破時計も1分22秒台でまとめており、敗れはしたものの1番人気に支持された実力は示せたのではないでしょうか。
鞭が入ったところで驚いたのか少しよれていましたが、レース慣れすれば直線の走りも安定するでしょう。
距離は今のところマイルでは少し長いように見えますが、次走も強気の逃げを打ってほしいところです。
中京5R 芝1600m セリフォス 栗東:中内田厩舎
中内田厩舎、川田騎手のコンビで出走したセリフォスが上位人気に応えて勝ち上がりました。ダイワメジャー産駒は新馬戦や距離の短い2歳オープン戦で存在感がありますが、セリフォスも例に漏れずマイル戦での勝利でした。半兄フォルテデイマルミは現時点で9戦走って馬券内8回の安定した成績で、兄弟そろって素質の良さが光ります。
レース概況
エコロジェネラスがタイミングが合わず大きく出遅れてしまいます。スタートダッシュがついたヒルノローザンヌが飛び出しますが、プレミアムスマイルが交わして逃げようとします。
外からアップトゥザナインがプレミアムスマイルをマークし、セリフォスは前の2頭を見ながら3番手の競馬となります。トゥードジボンがセリフォスの外に、ヤマタカフェイスとベルクレスタまで7頭がひとかたまりの状態で3コーナーへ向かいます。
馬群の中からセリフォスが2番手にあがり、逃げるプレミアムスマイルを追いかけます。
先行していた馬たちは手ごたえが一杯になりますが、セリフォスはコーナーを抜けるまで余裕があり、直線に向いたところで抜け出して先頭に立ちます。
馬群の外からベルクレスタがセリフォスを差し切ろうと末脚を繰り出しますが、残り200m付近で迫られると、二枚腰を繰り出して突き放し、1馬身半の着差をつけて勝利しました。
振り切られたベルクレスタがそのまま2着、外から差すために一瞬追い遅れたトゥードジボンが3着でした。
勝馬・注目馬短評
勝馬:セリフォス
先行力とパワーが武器のダイワメジャー産駒らしい走りで勝利しました。10頭立てのレースながら7頭がひとかたまりで直線まで競ったため、序盤は馬群の中で我慢し、ペースを見て逃げ馬を競り落とし、最後は追ってくる差し馬を突き放すという完成度の高いレースを披露しました。
直線で前脚を伸ばして蹴り込む走りに力強さがあり、現時点で素質が高い1頭に見えます。
血統背景から目標は朝日杯になるかと思いますが、中内田厩舎&川田騎手のコンビはダノンプレミアムで勝利しており、G1でも期待して良いでしょう。
注目馬:ベルクレスタ
半姉にヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードがいる良血馬です。小柄なステイゴールド産駒のアドマイヤリードに比べると、父が2冠馬ドゥラメンテに変わったことで馬格が一回り大きくなりました。後ろ脚が長く伸びやかに使えることで、前脚がやや短めに見える馬体は姉妹似ています。
外枠からの終始先団馬群の外を回り、セリフォスがほかの各馬を振り切ったところで追い出しましたが、相手のパワーと二枚腰に一歩及びませんでした。上りタイムもセリフォスと0.1差しか無いので、位置取りの差で明暗が分かれた結果と言えるでしょう。
前脚でパワフルに蹴り込んでいたセリフォスと比較して、ベルクレスタは後脚が使えているように見えます。
長い直線での脚比べに向きそうなので、夏の新潟や秋の東京開催でさらに末脚が活きるはずです。
札幌5R 芝1000m カイカノキセキ 栗東:池添学厩舎
札幌開催で2009年の新馬戦以来12年ぶりに行われた芝1000m戦は、スプリント戦線に活躍馬を輩出するキンシャサノキセキ産駒カイカノキセキが2歳コースレコードとなる56秒9のタイムで一気に駆け抜けました。牝馬なので、目指すは春の桜前線でしょうか。これからの軌跡に注目したい快速馬が現れました。
レース概況
ダイチスマイル、ミスリチャード、ブッシュガーデンが出遅れて後方からレースを進めます。
好発進を決めたカイカノキセキが鮫島克馬騎手に促されてハナに立ちます。外からリブラソナチネ、プラソン、ミンナノユメミノル、コラリンが続き、内枠のリトスは掛かり気味ですが控える競馬を選択します。リトスの直後でスマイルアップが末脚をためて、3コーナーへ入ります。
プラソンがコーナーで外に張り出してしまい、ブッシュガーデンとミンナノユメミノルが大外を回る不利を受けます。インコースに控えていたリトス、コラリンは空いたうちから抜け出しにかかり、最後の直線へ。
コースロスなく先頭を守り切ったカイカノキセキは脚色が鈍ることなく、後方から追いかけてきた馬たちを1馬身半差突き放して1着でゴールしました。
2着にインコースから追いかけたリトス、3着は外を回りながらも鋭い末脚を見せたブッシュガーデンでした。
活躍馬・注目馬短評
勝馬:カイカノキセキ
スタートで好発進を決め、二の足ですぐにハナに立てる加速力を武器に逃げ切って新馬戦を勝利しました。
コーナーでも膨れることなく埒沿いの位置をキープし、距離ロスを最大限省いたコース取りも出来たので、現時点での完成度も問題ないでしょう。
北海道で続戦するのであれば、次走は7月の函館2歳ステークスでしょうか。ロスなく走って振り切れれば世代最初の2歳ステークス勝馬も十分に狙えそうですね。
注目馬:ブッシュガーデン
出遅れて後方からのレースになり、コーナーではプラソンが外に張り出したことで大外ぶんまわしの大味な競馬になりました。それでも上り最速の33.1秒を繰り出して3着に追い上げており、展開がかみ合えば次走は差し切ってみせるでしょう。
父リオンディーズの産駒は今年が2世代目ですが、サウジダービーを勝利したピンクカメハメハや兵庫チャンピオンシップを勝利したリプレーザなど、マイル以下なら芝ダート問わず走れてしまうストライクゾーンの広さが産駒の武器になりそうです。
総評
土曜の新馬戦で勝利した3頭はいずれもスピードの持続力を武器に、1着を掴み取りました。
また、今回注目馬に取り上げた各馬も今回は展開や相手に恵まれなかったための結果なので、未勝利戦では能力を改めて発揮して勝ち上がってくるでしょう。
土曜日の新馬戦は走破時計も優秀でしたので、この組の馬たちは次走も注目しておきたいですね。