新馬戦回顧、6月13日の新馬戦を取り上げます。今回は少頭数のレースが中心ですね。
12日に引き続き、東京、中京、札幌の各競馬場の第5競走に新馬戦が組まれました。

東京5R 芝1800m ヴァーンフリート 美浦:手塚厩舎

東京スポーツ杯2歳ステークスや共同通信杯と同じ東京1800m戦、少頭数の8頭立てで行われました。
前半のハナ争い、後半の末脚比べの二部構成のレースでしたが、最後はヴァーンフリートが差し返しての勝利でした。

レース概況

大外枠のグランシエロが出遅れた以外は一団でのスタートとなりました。
スタートダッシュがついたアニージョが飛び出そうとしますが、戸崎騎手が抑えて位置を下げます。外からビレッジライナーが二の足でハナに立ち、内から並びかけたフィフティシェビーと2頭でレースを引っ張ります。前を行く2頭を見ながら内にブレットフライ、外にヴァーンフリートが続き、前の4頭を見る位置にアニージョがいます。

前半1000mを64.3秒のスローで入ると、3コーナーに入る手前で後方にいたグランシエロが捲り気味に上がり始めます。アンビションはコーナーでは末脚をためて後方2番手、ダンディチョウサンが最後方から上がり始めて直線に入ります。

直線で先頭まで位置をあげたグランシエロが先頭に立ちますが、これに併せる形でヴァーンフリートが並び、2頭の末脚比べとなります。残り200mでグランシエロの手前が変わり、その際に内にもたれてヴァーンフリートに当たりますが、その瞬間ヴァーンフリートがもうひと伸び差し返して1着でゴールに飛び込みました。
グランシエロももう一度伸びましたが半馬身差の2着まで、3着は先行馬を後方から交わしたアンビションでした。

勝馬・注目馬短評

勝馬:ヴァーンフリート

名牝ソニンクの血を引くリオンディーズ産駒で、ディアドラ、ロジユニヴァースなどG1活躍馬も多数のファミリー出身です。また、血統表内にキングカメハメハ、スペシャルウィーク、アドマイヤベガの3頭のダービー馬が名を連ねています。

直線でグランシエロと併せて退かず、当てられてから差し返すという勝負根性の強さを見せてくれました。
脚比べでは何度も手前が変わり、余裕はなかった様子ですが、それでも最後の10完歩は回転数を上げており、体力がつけば末脚に安定感が出そうです。

注目馬:グランシエロ

こちらはヴァーンフリートに挑んでの2着でしたが、後方からハーツクライ産駒らしいロングスパート戦を仕掛けました。ピッチ走法のヴァーンフリートに比べて跳びが大きく、追ってからのバランスが安定しないため内外によれてはいますが、三浦騎手が追ったところで最後まで伸びているため、スタミナはまだ余裕がありそうです。

スローペースで自ら仕掛けなければならず、回転数の差で敗れはしましたが、3着以下は離していますので、次走で勝ち上がれそうです。引き続き1800mや2000mの中距離戦で見たいですね。

中京5R 芝1200m メリトクラシー 栗東:武幸四郎厩舎

重賞勝利実績が無いにも関わらず、主戦の福永騎手に「乗った中でも1番強い」とまで評された未完の大器シルバーステート。
父と同じ勝負服、同じ鞍上でデビューしたメリトクラシーは、雨の中を逃げ切っての勝利でした。スピード能力の高さでまずは好発進です。

レース概況

メリトクラシーは好スタートで楽にハナに立つと、2番手のダグザ、3番手のトーホウラビアンから約2馬身のリードをもってレースを進めます。ジューンピンクマン、ルショコラが続き、フェブサンカラ、インプロバイザーが後方に位置します。出遅れてしまったダイゴシンリュウと行き足がつかなかったイチザウィナーが殿。

楽な手ごたえでコーナーに入るメリトクラシーに離されまいと、3コーナーから各馬追い出し始めますが、メリトクラシーは4コーナーを抜けるまで持ったままの手ごたえで直線に向きます。

直線で先に追った馬たちの脚が上がり始めますが、メリトクラシーは最後まで粘り通して1着でゴールしました。
先行馬たちの外からインプロバイザーが差して2着、先行した馬たちがそのあとに続く結果となりました。

勝馬・注目馬短評

勝馬:メリトクラシー

スタートを出てからゴールに至るまでワンペースで走り切っての逃げ切りでした。
パトロールビデオを見るとわかりやすいですが、スタートを出た1歩目からしっかり前に進んでいるので、追い出さずに自然にハナに立つことが出来ました。

外から各馬が迫ってくる中直線に入るまで福永騎手の手は動かず、メリトクラシーは最後に追い出しました。
この冷静な判断の結果、最後は先行馬たちと脚色が一緒になっても粘り通すことが出来ました。

今後は距離にどの程度対応できるかが課題となりそうですが、芝がきれいで走りやすければなおのことこの馬のスピードが活きるレースが出来るでしょう。

注目馬:インプロバイザー

馬群の後方で脚を溜めて末脚勝負を試みましたが、メリトクラシーのレース運びの巧さに敗れてしまいました。
内埒沿いで最短経路を進んだメリトクラシーに比べて、後方から外を回して最後はよれるなどロスがあった中で1馬身差まで詰めていますので、内枠を引いてロスなく運べるレースが出来れば前進ありそうです。

ダイワメジャー産駒、母は短距離戦で活躍したリトルゲルダなので、引き続き短距離戦に向かうのではないでしょうか。

札幌5R 芝1200m トーセンサンダー 美浦:杉浦厩舎

札幌の新馬戦は島川隆哉オーナーのトーセンサンダーが2歳コースレコードで勝利しました。
現役馬で3頭、この世代ではトーセンサンダーのみの父トーセンファントムは、島川オーナーがセレクトセールで購入し、いちょうステークスを勝って朝日杯に挑んだ馬でした。残念ながら故障引退してしまいますが、プライベート種牡馬として次世代に夢を繋ぎます。

レース概況

外枠のハマーフェイスが抜群のスタートで飛び出しますが、内枠の馬たちも押して位置を取りに行きました。
最初の1ハロンでアスターヘキサゴンがハナに立ち、トーセンサンダーが二の足で加速して2番手に並びかけます。その外にギンノアメガフルが3番手で続き、先頭集団を形成します。

集団の内からグッドディールとスマイルバックが位置を上げて、後方ではグラスミヤラビが末脚を温存します。
開幕集の良馬場も相まって前半600mを34.2秒で入り、コーナーでついていけなくなった馬たちが後退し始めます。
逃げるアスターヘキサゴンは馬なりのまま直線に入り、終始外に併せていたトーセンサンダーが抜け出そうとします。その外へグッドディールも進路を切り替えて進出を開始します。

残り200mでアスターヘキサゴンを交わしてトーセンサンダーが先頭に立ちますが、最内で末脚を温存していたグラスミヤラビが外に進路を切り替えてストライドを伸ばします。重心の低い鋭い末脚に迫られましたが、首差凌ぎ切ったところがゴールでした。
逃げたアスターヘキサゴンは末脚勝負に敗れて3着、グッドディールは伸びきれず4着に敗れました。

活躍馬・注目馬短評

勝馬:トーセンサンダー

エスティファームのプライベート種牡馬として供用されていたトーセンファントムは昨年で種牡馬を引退しており、この世代唯一の産駒がトーセンサンダーです。数少ない産駒の中にはオーストラリアでG1を2勝したブレイブスマッシュがいるので、今のところ父系は南半球で繋がっています。

父を彷彿とさせる黒光りする馬体の持ち主は、足さばきが柔らかく、手前を変えてからの加速力もあり、才能豊かな馬に見えます。

次戦は函館2歳ステークスの予定とのことですが、今回の走りが出来れば重賞でも通用するでしょう。
マイナー血統を国内でも繋ぐ産駒となれるか、今から期待される存在になりましたね。

注目馬:グッドディール

このレースで単勝1番人気に推されていたグッドディールは父ビッグアーサーの初年度産駒です。
デビュー前の追切で速い時計を計時していたため、そのスピードがレースでも発揮されると期待されていたのですが、4着に敗れてしまいました。

パトロールビデオを見返すと、3コーナーに入るところでスマイルバックに埒際まで寄せられてしまったところで引っかかっていて、ブレーキがかかってしまったのが惜しまれます。

直線でグラスミヤラビに交わされたところを見ると、瞬時の加速は苦手なタイプのように見えるので、被せられない外を回してスピードを維持するレースの方が向きそうです。

総評

新馬戦回顧の2週目が終了しましたが、新種牡馬の産駒も早い段階で初勝利を挙げているので、既に地方競馬で新馬勝ちしているコパノリッキーや、来週産駒の初陣となるキタサンブラックらの産駒にも期待が集まりますね。

もちろん、これまで競馬界をけん引していた種牡馬たちの産駒もこれから続々デビューしますので、新旧種牡馬の対決にも注目です。

また、次週からは西の開催が阪神競馬場に変わるので、新馬戦からコースの傾向も紹介出来たらと思います。

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