[連載・クワイトファインプロジェクト]第29回 レーベンスティール、ラジオNIKKEI賞結果と未来と

先週行われたラジオNIKKEI賞で、レーベンスティール号(母父トウカイテイオー)が単勝1.9倍と断然の支持を集めながら、上位2頭の後塵を拝し3着となりました。ネット上では トウカイテイオーファンの皆様の悲嘆の声が溢れていましたね。

クワイトファインはまだ産駒デビュー前ですし、多くのファンの皆様がレーベンスティールに期待を寄せるのはわかります。

日高の牧場の生産馬ですが、クラブ法人最大手のキャロットファームの所有馬であることも、多くの競馬ファンの皆様から注目を集める一因でしょう。

現役馬ですし、私はレースでの乗り方云々は素人ですので、ここで論評するつもりはありません。

しかし、おそらく皆様よりほんの少しだけ長いこと競馬を見てきて、特に、トウカイテイオーやメジロマックイーンの牡馬産駒で期待の仔が出てきたときには、「今度こそ!!!」という思いでその馬を見守り続け、その度に最後は失望の歴史を繰り返してきた私から言わせていただければ、レーベンスティールは、まだまだ希望に満ちた未来があります。これからの馬です。

ラジオNIKKEI賞だけで、馬のすべての運命が決まるわけではありません。もちろん、勝つに越したことはないですし、あの末脚をみれば勝つ能力は十分に有していたと思います。しかし、もし多少の無理をして勝利を手にしても、その後調子を崩してしまったら元も子もない。サラブレッドは、それだけ繊細な生き物です。ましてや、JRAの重賞というトップクラスのレースなら尚更。

前回のコラム(新書「トウカイテイオー伝説」を読んで)でも書きましたが、チタニックオーとナチュラルナインが順調に現役生活を送れていればな…という思いは20年たった今でも残ります。

 あと、「母父トウカイテイオー」についても少し触れたいと思います。

 トウカイテイオーの産駒で繁殖入りした牝馬は、88頭しかいません。そして、その88頭のうちおそらく過半が、次の後継繁殖を送り出すことなく役目を終えています。

 没後10年、また晩年の産駒で繁殖入りした馬がそう多くないであろうことを考えると、母父トウカイテイオーという馬がJRAの重賞に出走することは、ないとは言いませんがどんどんその機会は減っていくでしょう。サイヤーラインがつながらないというのはそういうことです。その血統はどんどん忘れ去られていき、やがてアーカイブの一部となっていくのです。

 このコラムの読者の方にはそういう考えの方はまずいないと信じていますが、「ブレイブスマッシュやレーベンスティールがいれば満足で、直系サイヤーラインなど必要ない」という意見も時折目にします。しかし、何度か触れていますがオーストラリアの馬産において牡馬はほとんど去勢されます。ブレイブスマッシュのサイヤーラインが続くのは、ブレイブスマッシュ自身にとっても至難の業。向こうの血統への考え方は基本ドライです。

 そして、私は何度も申し上げているように、ロマンや贔屓目でトウカイテイオーのサイヤーラインを残したいと思っているわけではありません(どれだけ訴えても全く伝わっていないことに最近少し苛立っていますが)。血統がこのままどんどん寡占化されたら、自然交配のみで続いているサラブレッドの血統は50年後、100年後にいずれ行き詰まります。当たり前のことを言っているだけなのです。

 レーベンスティール号は私も応援していきます。トウカイテイオーの名前がJRAG1競走の馬柱欄に乗ればいろいろ話題にもなりますし、まだまだこれからの馬なので長い目で見守っていきたいと思います。しかし、だからといってサイヤーライン不要論が湧き上がってくるようなら、それは本末転倒。そのような意見には与しないよう、皆様もぜひ心を一つにしていただければと思います。

 さて、Twitterではお知らせしていましたが、クワイトファイン、ある牝馬のオーナーさんから急遽種付けオファーをいただき、6月中旬という時期も鑑み一発勝負で種付けを行いましたが、残念ながら不受胎に終わりました。

 よって今年の受胎馬は2年連続となったガレットデロワ1頭のみです。ここで牡馬が産まれてくれるよう、なんとか期待をこめて1年間見守りたいと思います。

そして、昨年生まれたカカラちゃん(バトルクウ2022)及びその全妹(バトルクウ2023)ですが、ちょっとだけ前向きになれるお知らせがあります。現在、諸々水面下で調整中ですが、7月中に動画を公開し、そのなかで発表したいと思います。

写真:かずーみ

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