![[連載・クワイトファインプロジェクト]第52回 ガラスの天井を打ち破れ!](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2021/10/line_207599964038877.jpg)
今回ちょっと刺激的なタイトルにしてみました。この言葉自体はいろいろ深い意味があるようですが、このコラムはあくまで競馬コラムです。タイトルに込めた真意を行間から察していただければありがたいです。
クワイトファイン号が死亡し、2頭しかいない牡馬産駒のうち1頭も蹄の具合が思わしくなく種牡馬入りを断念したことから、シンボリルドルフ⇒トウカイテイオーのサイヤーラインを継ぐ可能性がある牡馬は、「バトルクウの2025」だけとなっております(来年誕生予定の2頭から牡馬が誕生する可能性はあります)。
しかし、現実問題として、クワイトファインのような無名馬の種牡馬入りには極めて多くの障害があります。この馬はまだ少ないながらも外部から種付けのオファーをいただき延べ13頭に種付けをできましたが、現実問題としてマイナー種牡馬は自ら繁殖を用意しない限り種付けすることすらできません。そして自ら種牡馬と繁殖を繋養するとなればオーナーの金銭的負担ばかりが増え、結局断念せざるを得なくなるのです。
よって、「バトルクウの2025」を現役引退後に種牡馬入りさせるために必要なことは、
- 最低限、種牡馬の預託料を払い続けるだけの収入源があること
- 競走馬となった「バトルクウの2025」が一定の知名度を得ていること
- 競走馬となった「バトルクウの2025」が一定の実力を示すこと
だと思います。
そして結局、この3条件は同根なのです。多くのファンの方に支えられ、注目を集める存在であり続ければ種牡馬入りへの世論が自然と形成されていくと思います。そして、そのためにオーナーとしての私がやるべき唯一のミッションは「バトルクウの2025の実力を最大限発揮できる環境を整えること」に尽きるのです。
正直なところ、姉クワイエットエニフについては「父の種牡馬としての評価を高める」というミッションを課していました。だからこそ地方競馬の最高峰である大井に入厩し、早めの成果を求めなければなりませんでした。しかし、デビュー戦は3歳4月まで遅れ、それも辛うじて能検をパスした状態でした。そして大井4戦は見せ場こそ作ったものの入着も果たせず、結果としてミッションは失敗に終わりました。そのことについては、馬にも無理を強いたのみならず、預託を引き受けてくれた真島大輔調教師や、共有オーナーの皆様に多大なるご迷惑をおかけしました。
しかし今、父クワイトファインはもうこの世にいません。クワイエットエニフやベラジオノユメがこれからどんなに活躍しようと父に新たな種付けオファーが来ることはないのです。ですが、逆にそのことを気にしなくてもよくなりました。すなわち、「バトルクウの2025」にとって彼が最大限の実力を発揮するためにどうすべきか、それだけを考えればよいのです。
「サラブレッドは経済動物だ」という議論の中で、多くの皆様が「命」のことにスコープを当てて議論されていますが、私はそれよりも「流通促進のためにどんどん早期デビュー・早期からの活躍が要求される。そのサイクルに乗れない馬は力があってもそれを発揮することなく淘汰される」ことが根本の問題だと思っています。本来は3歳秋や4歳で本格化する馬が歩様をおかしくして大成を阻まれたケースは多々あったと思います。
「バトルクウの2025」は、姉たちのこれまでの戦績や成長曲線をみる限り、じっくりと乗り込んで必要な体力を養い、馬体の成長に合わせて3歳年明けくらいのデビューを目指した方がいいタイプと今のところは思っています。そして本格化するのは4歳秋から5~6歳くらいかと。そこまで待って、じっくり鍛えてようやく「ガラスの天井」を破るときが来るのかもしれない。
これまで、クワイトファイン産駒に対して悪評がちらほら聞こえてきます。「馬体が小さい」、「スピードがない」、「晩成」、主にこの3つですが、少なくとも「クワイトファイン✕バトルクウ」の配合に関してはどの悪評も当てはまらないのです。というより「晩成」であることは悪評ではないと思います。仮に晩成なら、それに適した育成をすればよいだけのことです。もともとダートの活躍馬は息の長いタイプが多いです。
あとは、時間軸との闘いですね。この仔が6歳まで現役で走ったとして引退時に私は61~62歳です。そこから種牡馬入りとなると、・・・人間が先に力尽きるかもしれません。
でも時間軸はどうすることも出来ません。馬自身の実力の最大値を発揮させるために「ガラスの天井」を破る努力に加え、実はオーナーの私自身も「ガラスの天井」を破らなければならないのかも知れません。
やれ、サラリーマンだから、会社経営者でも著名人でもないから、中央の馬主でないから、とか「出来ない理由」をつけるのは簡単ですが、そういう私の「甘え」に対して、クワイトファイン自身が己の死をもってそれを否定し、私の逃げ道を塞いでくれました。多くの皆様の関心が、インプレッション160万件以上、いいね15,500件以上という数値で証明されました。ネットニュースでは名騎手田原成貴さんのコメントまでいただけました。私はもう逃げられません。
奇しくも、産駒が6歳になる2031年はシンボリルドルフ生誕50年の記念の年です。そして、もうこの頃にはバイアリーターク系の平地用種牡馬は0になっているかもしれません。そんな現実に抗うべく、これからも共に闘いましょう。