ウマフリ読者の皆さま、初めまして。
縁あって寄稿させていただくことになりました、オラシオンです。普段は引退馬支援の活動をさせていただいております。
今回は、そんな引退馬支援について、皆さまに考えていただけたら、と思い筆をとりました。
私が『引退馬』のその後に気がつくまで。
競馬ファンの方であれば多くの方が、応援した馬が競走馬を引退した後、どこに行くのかを考えるのではないでしょうか。
私は映画『優駿』を見て、初恋の馬・オラシオンことメリーナイスに出逢います。
さらにはトウカイテイオーとの出会いを果たし、彼を応援しました。
しかし、彼らがどうなるのか──まだまだ情報か得難い四半世紀前のことでしたから、ほとんど知らなかったのです。
テイオーは引退した後、社台スタリオンステーションで種牡馬として繋養されることが知らされていました。
──でも、他の馬はどうなんだろう?
当時二十歳やそこらの私には知る由もなく、引退馬は皆、牧場に戻って繁殖になるのだと思っていました。
そしてインターネットが普及し、トウカイテイオーが引退した1994年当時よりもずっと、馬の足跡を辿りやすくなりました。私はテイオーの同期生をはじめ、自分が競馬を見始めた1990年代初頭の活躍馬達の足跡を辿りました。
その時、テイオーの同期生・ナイスネイチャを見つけたのです。
それが、NPO引退馬協会でした。
その時どうしても見つけられなかったメリーナイスの足跡も、ナイスネイチャのいる渡辺牧場さんで見つけることができました。
幸い、渡辺牧場さんには裏山にお墓があり、そこにメリーナイスも眠っていることが確認できたので、毎年お花を送っています。
メリーナイスに出会わなければテイオーにも、後に好きになる馬たちにも出会えなかったからです。感謝を込めて……また会いに行けずに過ごした時間の分も込めて、送っています。
その渡辺牧場さんの奥様、渡辺はるみさんが自費出版された『馬の瞳をみつめて』を読み、激しいショックを受けました。
“繁殖”に上がれる馬はほんのひと握り、後の馬は“乗馬”や“使役馬”(警察や施設等)なら幸運で、下手すれば“馬肉(食肉)”として売られてしまう。
競走馬として生まれても、走らないと食肉としての値段で売られ、恐怖に慄きながら嘶き殺されていくことを知りました。
読んでいて、涙は止まらないですし、その時の馬の心の中や……その現実を目の当たりにしているはるみさんの心の中を自分の中に感じた時に、余りにも残酷で哀しすぎて、呆然としてしまいました。
そんな馬を一頭でも減らそう。
恐怖と不安の中で死ぬ馬を減らそう。
せめて自分たちが生産した馬くらいは、安楽死で恐怖のない状態で虹の橋を渡れるように。
──そうした信念を、沢山のいわれなき中傷を受けても批判を受けながらも貫いたはるみさん。
そんなはるみさんに共感しましたし、また、お手伝いがしたくなりました。
私がしている『引退馬支援』。
NPO引退馬協会の申し込みは、ホームページからできます。
会員種別があるので自分のできる範囲で支援することが可能です。
私はフォスターペアレント(以下FP)と呼ばれる種別を選択していますので、今回はFPを案内します。
他の種別は協会HPでご確認下さい。
FPは月会費1000円と、0.5口2000円(1頭につき)から始められます。
そしてフォスターホース(以下FH)は何頭もいるので好きな馬に登録できますし、選ばずに“全てのFH”のFPとしても0.5口から登録できます。自動引き落としですので、手数料はかかりません。
つまり、1か月に3000円から支援が可能です。
私は他にもNPOの引退馬支援事業の一環で引退馬ネットの活動にも参加しております。会の設立、運営の支援を受けている渡辺牧場里親会にも参加していますが、こちらの申込ページもNPOのHPの中にある“引退馬ネット”から探すことができます。
こちらの里親会は1口2000円です。NPOと一緒に引き落としが可能です。
例えば、NPOのFP0.5口で会費と合わせて1か月3000円と、里親会1口で1か月2000円、合計5000円からNPOと里親会の支援ができるのです。
また「チーム・テイオー」という、トウカイテイオーファンが運営している支援会もあります。
「チーム・テイオー」は誰でも無料会員として、参加が可能です。
「トウカイテイオー産駒の会」はテイオー産駒の引退後の支援を行っています。
現在は、テイオー産駒ゴールドショットの支援として、1ヵ月1口2000円から支援ができます。
こちらは自動引き落としではないので手数料がかからない送金方法を使うことをおススメします。
私は2か月に1回送金することにしています。
例えば、4月に5,6月分を振り込めば大丈夫です。
また、どの支援においても「1か月休みたい」とか「引き落とし日に用意ができないので○○までに振り込みます」といった融通が効きます。
引退馬支援も、無理は禁物です。
自分ができる範囲、続けられる範囲でいいので、まずは「継続支援」をすることが、その馬の余生を守ることに繋がるのだと思います。
私はツイッターの自己紹介文で、沢山の馬の支援をしていることを紹介しています。
「聞いたことがある!」とか「知ってる!」とか、そうしたことをきっかけに、興味を持ってくれたらいいなと思っています。
昨今、ホースマンと呼ばれる厩舎関係者の方々や牧場関係者が協力したり、ファンが支援しやすい環境が整い始めています。
ですから、1人でも多くのファンが、応援した馬やその産駒達の余生を考えてくださればいいな、と思います。
NPOの活動報告で、引退馬支援に批判的な方もいるとの声もありました。
しかし一方で、懐かしい名前に喜ぶ方、元気な様子を見て支援に興味を示して下さる方、グッズを買うことで支援して下さる方もたくさんいらっしゃるのも事実です。
そんな支援者がもっと増えるといいなと、強く感じます。
私の願う『人と引退馬』の、これから。
馬が好きな私としては、もっと身近に馬と触れ合える公園などがあればいいのにな……と思うことがあります。
そして幼い子供たちに、早くから馬に接して欲しいな、と思っています。
競走馬として活躍できない馬の中には、性格が素直で優しく、大人しい馬が案外いるのだと聞きます。
そんな大人しい馬なら、人間にもゆったり接してくれるはずです。
馬と身近に触れ合う機会が増えれば、馬の怖がることや嫌がることを学べます。
そうすれば、馬も人間も、ハッピーに過ごせるのではないでしょうか?
子供の頃から動物と接することは、言葉でのコミュニケーション以外の、想像力や思いやり、観察力や注意力を養います。
それは人間以外の動植物への、思いやりある触れ合い方の形成へと繋がります。
そして、自分を愛し大切にする気持ちや、他者への思いやりを持つ、素晴らしい情操教育にもなると思います。
IT化が進んで行く近年において、何よりの財産は人間力だと、私は考えます。
人間力を育てる事にもきっと、幼い頃から馬と関わること始めるのは、良いことではないでしょうか?
馬は大変頭のよい動物です。
彼らと接することで育つ人間力を、私は信頼しています。
そして、彼らの持つ優しい波動は心が疲れたどんな世代の人にも、心からの深い癒しをもたらしてくれると思います。
そんな、人間と馬たちとの平和的共存ができる社会を目指して、支援を続けたいと思います。
そしてそのためにも、支援者が増えることを願ってやみません。
写真:チーム・テイオー、渡辺牧場