[地方レース回顧]春一番の「風になる」~2021年・黒船賞~

高知競馬唯一の指定交流競争である黒船賞。
創設以来、高知競馬場1400mを舞台に、中央・地方のスピード自慢がそろうレースです。

今年は一昨年の勝馬サクセスエナジーや、東京ダービー馬ヒガシウィルウィンの半弟スリーグランド、1年5か月ぶりのレースとなったグリムらがJRA代表として参戦。

また、地方競馬からもマイルチャンピオンシップ南部杯の3着馬モジアナフレイバー、全日本2歳優駿勝馬ヴァケーション、地元の雄スペルマロンらが顔を揃えた12頭立ての1戦でした。 

レース概況

3番枠からすんなりスタートを決めたグリムがそのまま埒に沿ってハナを主張し、2番手に外枠からテイエムサウスダンが続く展開。ヴァケーションが鞍上に押されて3番手、その内にサクセスエナジーが大きな馬体をのぞかせます。出負けしたスリーグランドは、末脚にかけて後方からとなりました。最初の400mのタイムは過去5年で最も速い22.6秒で1コーナーに入ります。

コーナーを回って向こう正面でもグリムはペースを落とさず、その外にはテイエムサウスダンがぴったりマーク。3番手にサクセスエナジー、モジアナフレイバーが4番手で食らいつきます。スピードについていけなくなる馬たちの外を通って、後方にいたスリーグランドも残り800mから仕掛けてスパートに入り、3コーナーへ。

グリムを抜いて先頭に立ったテイエムサウスダンがコーナーを大きく回って先頭へ。スリーグランドも一気に2番手まで捲り上げてきましたが、時すでに遅し。

テイエムサウスダンが8馬身前を駆け抜けて1着でゴールイン。終始中央勢に食らいついたモジアナフレイバーが3着、グリムは最後一杯になりながら4着に粘り、サクセスエナジーが5着でした。

各馬短評

1着 テイエムサウスダン

好発進から逃げるグリムをマークし、コーナーで加速して抜き去る強いレースを見せてくれました。

2年前に兵庫ジュニアグランプリを勝っていますが、まさにその時のレースぶりを再現する「勝ちパターン」と言えるでしょう。前走根岸Sではハイペースに巻き込まれてしまいましたが、自らペースメイクできるメンバー構成なら引き続き強い走りが見られそうです。

2着 スリーグランド

重賞初チャレンジで2着、スタートで出負けしてしまったのが悔やまれます。

逃げても控えてもレースができる馬なので、次戦でもう一段前に位置取りを上げられれば重賞制覇も遠くはなさそうです。1着馬と同じく4歳世代で、半兄ヒガシウィルウィンはデビュー時から現在まで地方競馬を転戦して長く活躍している名馬ですから、スリーグランドも今後への期待が大きい1頭です。

3着 モジアナフレイバー

南関東生え抜きのモジアナフレイバー。南関東にも1400mの重賞フジノウェーブ記念がありますが、より強い全国の強豪との1戦を選択し参戦してきました。デビュー以来のコンビを組む繁田ジョッキーが強気のエスコートで勝ちに行くレースをしていたことも好感が持てます。

このレースで初めての1400mに挑みましたが、スピード勝負で2着スリーグランドと1馬身差の決着でした。思い返せば昨年レコード決着となった南部杯の3着馬なので、中央所属の馬たちを相手に勝利できるチャンスはまだまだありそうです。

4着 グリム

2019年10月1日の白山大賞典以来、久しぶりのレースになったグリム。休養前は黒かった馬体も、葦毛馬らしく少し白くなっての参戦でした。

スタートで軽く促して逃げに行けたように、能力の衰えはなさそうで、今回は勝馬にうまく乗られてしまったことと、久々の分最後は一杯になったことが敗因でしょう。これまで勝利してきた中距離戦のほうがゆったり進められそうですし、今年は白山大賞典を連破している金沢競馬場でJBCが開催されるので、まずはそこまで無事に進んでほしいです。

5着 サクセスエナジー

550キロ近い超大型馬で、中央のオープン競走なら59キロのハンデも気にせず勝ち切ってしまうパワーの持ち主です。交流競走で何度も好勝負をしているように、大型馬ではあるもののコーナーワークが上手く、埒沿いでロスなくレースを進めての善戦できるタイプです。

今年に入ってからはスタートしての二の足がつかず置かれてしまうレースが増えていて、直線で足が上がっていたことを見ても、今回は本調子ではなかったのかもしれません。

レース総評

優勝インタビューの中で、「風になっていました」という岩田ジョッキーのコメントが印象的でした。高知競馬の春を告げる1戦でテイエムサウスダンはまさに春一番を吹かせる快勝です。
今年は各地の重賞や過去のこのレースを勝利したメンバーが揃っていましたので、例年以上に価値のある1勝だったかと思います。

昨年度は無観客開催になったこのレースにもお客様が戻り、レースの賑わいが少しずつ戻ってきました。
1400mの全国交流競走は、5月3日に名古屋競馬場でかきつばた記念が、6月3日に浦和競馬場でさきたま杯が開催される予定ですが、そのころにはさらに歓声の聞こえる熱戦が繰り広げられるかもしれません。

写真:Mr.KQ

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