[重賞回顧]超絶レコードで兄弟制覇~2021年・毎日杯~

毎日杯は、皐月賞トライアルではないものの、皐月賞のステップとして出走する馬もいる重要な前哨戦。
また、ここからNHKマイルカップや日本ダービーに向かう馬もいて、春に行われる複数の3歳GⅠを占う上で重要なレースとなっている。

過去には、このレースをステップとして、オグリキャップ、テイエムオペラオー、クロフネ、キングカメハメハ、ディープスカイ、キズナといった多くの名馬が誕生。また、それ以外にも後のGⅠ馬が多数出走しており、目が離せないレースとなっている。

出走馬は9頭と、例年通りの少頭数となり、中でも人気は2頭に集中した。

1番人気に推されたのは、関東馬のグレートマジシャン。

父はディープインパクト、母はドイツオークスとバーデン大賞を制して2009年ドイツの年度代表馬となったナイトマジック。ここまで2戦2勝の成績で、前走のセントポーリア賞は、ソエ気味で調教をセーブされながらも、直線ではディープインパクト産駒らしい瞬発力を見せて完勝した。

それでも、騎乗したルメール騎手によると「遊びたがっていた」ようで、戦前から、ここをステップにダービーへという青写真が描かれており、大きな期待を集めることになった。

2番人気となったのは、同じくディープインパクト産駒のシャフリヤール。

こちらも、全兄に2017年のこのレースと皐月賞を連勝したアルアインがいる良血馬。

ここまで2戦1勝という成績で、前走は共同通信杯で3着に健闘した。そのとき勝ったエフフォーリアはもちろんだが、2着のヴィクティファルスも、その後スプリングステークスを勝利。そうした背景からも、この馬にも注目が集まった。

3番人気に続いたのはルペルカーリアで、こちらは、父モーリスに母シーザリオ、兄にGⅠ馬が3頭もいる超良血馬。前走、未勝利戦を勝利したばかりとはいえ、2着に3馬身差をつける強い内容で、血統面と合わせて期待が高まる。最終的に単勝オッズが10倍を切ったのはこの3頭で、注目の一戦のスタートが切られた。

レース概況

ゲートが開くと、ウエストンバートが好スタートを切って、そのまま逃げの手に出た。

その後をダディーズビビッドが続くと思われたが、最初の2ハロンは、2番手が5頭のひとかたまりとなり、最終的には、内からディープリッチ、シャフリヤール、ルペルカーリア、そしてダディーズビビットの4頭が横並びとなった。

グレートマジシャンは、少し離れて6番手。さらにそこから4馬身離れて、レヴェッツァ、ロジローズ、プログノーシスの3頭が1馬身間隔で追走した。

前半1000mの通過は57秒6で、平均より少し速いペース。4コーナーでは、後方3頭も差を詰め、全9頭が一団となって直線に入った。

迎えた直線勝負。

内回りとの合流点で、まず、ルペルカーリアがウエストンバートを交わして先頭に立った。それを、内からシャフリヤール、外からプログノーシスとグレートマジシャンの3頭が追う展開に。

さらに、坂を駆け上がってからは、シャフリヤールとグレートマジシャンが抜け出しマッチレースとなった。

しかし、シャフリヤールが終始わずかにリードし、最後はクビ差しのいで1着でゴールイン。2着にグレートマジシャン、3着にプログノーシスが入った。

良馬場の勝ちタイムは、1分43秒9のコースレコード。シャフリヤールにとっては、全兄アルアインとの兄弟制覇となった。

各馬短評

1着 シャフリヤール

勝ちタイムは、コースレコードというだけでなく、JRAレコードタイという、3歳春の限定戦としてはとてつもない好タイムだった。

兄のアルアインも、毎日杯を好時計で勝利し、1分57秒台で決着した皐月賞も連勝。
次走、その皐月賞に出走するとすれば、懸念材料は、今回の反動が残るかどうかではないだろうか。

また、かなり先の話にはなるが、来年以降、兄が制した大阪杯に出走してきた際も注目の存在となる。

2着 グレートマジシャン

惜しくもクビ差届かなかったが、この馬も非常に中身の濃いレースをした。

2着で賞金加算できたことは大きく、これでおそらく賞金は足りるため、予定通りこのままダービーへ向かうのだろうか。

ダービーでも楽しみな存在というのは間違いないが、母系がヨーロッパの系統のため、この馬にとっての本当の適条件は菊花賞かもしれない。

3着 プログノーシス

この馬が3着に入ったことにより、結果的に3頭出走していたディープインパクト産駒が上位を独占した。

キャリア1戦1勝で臨み、勝ち馬から0秒3差は非常に価値が高い。

賞金が加算できなかったため1勝クラスにも出走できるが、重賞やダービートライアルに出走しても、当然、勝ち負けになるだろう。

レース総評

前述の通り、シャフリヤールが出走した共同通信杯組からは、当時2着のヴィクティファルスもスプリングステークスを制している。

皐月賞はこの組がかなり有力と思われ、勝ったエフフォーリアが厳しい流れのレースを経験していないぶん、もしかすると、今回そういったペースを経験したシャフリヤールが最有力の可能性もある。

特に、2歳から3歳春にかけての大レースでは、人気に推された馬が期待に応えて好勝負できるかどうかは、過去にこういった速い流れのレースを経験しているかどうかによる場合が多い。今回は9頭立てだったが、そのレースが多頭数だった場合は、よりいっそう価値は高まり、出走馬の多くが、後に出世するようなお宝レースとなることがよくある。

いよいよ、皐月賞が迫ってきた。
果たして、どの路線の馬が頂点に上り詰めるのか。

写真:だしまき

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