[地方レース回顧]秋への一歩を踏み出して~2021年・クラスターカップ~

暦の上では8月7日の土曜日に立秋が訪れ、秋へと季節が移ろい始めます。競馬界も来たる秋の大一番に向けて、夏競馬も文字通りの熱戦が続いています。
盛岡競馬場1200m戦で競うクラスターカップに、今年のダート短距離戦で好走している馬たちが集いました。

昨年このレースで日本レコードを樹立したマテラスカイ、東京スプリント&北海道スプリントの2戦で鎬を削ったリュウノユキナとヒロシゲゴールド、重賞は未勝利ながらダート1200mで着実に成長しているサイクロトロン、函館スプリントステークスを叩いてダートに戻るジャスティンの5頭が中央から参戦。

浦和からはナリタスターワンが、愛知からはメイショウオオゼキが遠征し、地元岩手競馬のメンバーを交えた14頭でレースが行われました。

レース概況

マテラスカイがいつも通り抜群のスタートを切りますが、内枠の馬たちが二の足をつけて飛び出します。
地元開催でとにかく逃げるシークザトゥルースがハナに立ち、2番手にサイクロトロンとヒロシゲゴールド、ジャスティンがポジションを確保。マテラスカイは5番手の外でレースを進めます。リュウノユキナは先行各馬を3~4馬身先に見るいつものポジションで、インコースから仕掛けるタイミングをうかがう展開に。

逃げるシークザトゥルースとリュウノユキナの外にいるツルオカボルトは果敢に中央勢についていきますが、後方は5馬身以上離されてしまいます。
懸命に逃げたシークザトゥルースも残り600mで捉えられ、ジャスティンとサイクロトロンが前に出ます。ヒロシゲゴールドは追われて3番手、マテラスカイはその外4番手、リュウノユキナが5番手からコーナーでインコースに進路を取って直線の攻防へ。

先頭に立ったジャスティンを内のサイクロトロンが振り切ろうとしますが、更にその内からリュウノユキナが手ごたえ十分に抜け出します。外からはヒロシゲゴールドがじりじりと伸びてきますが、リュウノユキナの末脚には届きませんでした。

リュウノユキナが最後まで力強く伸びて1着でゴールし、サイクロトロンは後続を振り切りましたが2着まででした。
最後にジャスティンを3/4馬身交わしてヒロシゲゴールドが3着、ジャスティンが4着、マテラスカイは5着まででした。

各馬短評

1着 リュウノユキナ

今年の地方レース回顧3回目の登場ですが、東京スプリント1着→北海道スプリント2着→クラスターカップ1着と、常に勝ち負けできる安定感があり、昨年の9月末から約1年にわたり連対を外していません。

鞍上の柴田善臣騎手はいつも通りのリュウノユキナのレースを進めていましたが、最内をロスなく回して勝利に導いた手腕は流石ベテランですね。

リュウノユキナ自身の走りを見ても、軸のぶれないパワフルな走りで駆け抜けていて、前走からリフレッシュした効果も出ていたように見えます。

今後はJBCスプリントに向けて東京杯を使うか直行か……とのこと。東京スプリントの走りを見れば大井コースは問題ないですし、金沢競馬場は未経験ですが全国どこでも勝ち負けできる安定感があれば、今の実力で十分勝負になることでしょう。

2着 サイクロトロン

前走は重賞初挑戦の東京スプリントで果敢に逃げ合いに挑むも、最後は差し切られて8着まででしたが、今回は手ごたえ良く2番手につけるとそのままジャスティンの追撃も振り切って2着に残すことが出来ました。

ダート1200m戦に矛先を変えてから少しずつ実力をつけて、マイペースで先行できれば粘り込めるようになってきました。半面、前走のようにハイペースで息を入れる隙も無いような展開になるとばててしまうので、今回あえて逃げ馬を行かせて2番手で折り合って競馬を進められた走りが次走も出来れば理想的です。

このメンバーの中では年少の4歳馬ですから、これから先の伸びしろに期待しましょう。

3着 ヒロシゲゴールド

前走・北海道スプリントでリュウノユキナを差し切って念願の重賞初勝利を掴みました。リュウノユキナと同世代で、馬齢を重ねたことで逃げを打つテンの速さは落ちましたが、今回のように最後までしぶとく伸びてくるタフさは健在です。

3コーナー入り口から幸騎手が追い始めて、一瞬前の2頭から置かれますが、それでも最後までじりじりと差を詰めて3着に入ることが出来ました。

今回のメンバーと何度も走っている経験もある馬。得意な良馬場でのタフネス比べになれば、もう一度重賞を勝つこともできるでしょう。

4着 ジャスティン

今年はサウジアラビアとドバイを走って、国内ダートは初参戦でした。前走は函館スプリントステークスで2年ぶりに芝を走りましたが、やはり今はダートのスプリント戦に適性がありますね。

唯一の斤量58キロを背負いながら先行してコーナーで手ごたえ良く抜け出していたところを見ると、今回の敗因は斤量差が大きかったと見て良いでしょう。次走で得意な大井コースの東京杯を使うのであれば、逆転も十分あり得ます。

5着 マテラスカイ

ジャスティン同様に春は海外遠征してこのレースが復帰初戦でした。とにかく快速を飛ばして一本調子でどこまで行けるかの馬なのですが、昨年のJBCスプリントでは3番手からのレースで苦手な大井コースを克服する走りを見せるなど、逃げなくてもレースが出来るようになってきました。

そうは言っても今回は間隔があいた分なのかスタート後の脚が一息で、終始外を回って終わってしまいました。
ワンペースで逃げ切るか前がばてたところをスピードで押し切るレーススタイルに持ち込まないと脆いところがありますが、この1戦を使って調子が上がれば次走はあっさり逃げ切って見せるかもしれません。

国内でも海外でも大勝負になると駆けてくるタイプなので、JBCスプリントに向けての仕上げに注目しましょう。

レース総評

中央勢5頭が掲示板を独占する結果となりましたが、国内で安定して結果を出しているリュウノユキナの強さが特に目を惹くレースでした。海外帰りのジャスティンやマテラスカイは秋に向けてこれから仕上げていく段階ですが、それを抜きにしても現状の強さでJBCスプリントでも好勝負が出来そうな走りを披露しています。

ヒロシゲゴールドは今回はリュウノユキナに勝てなかったものの3着に来ていますし、サイクロトロンも重賞経験を積めばそう遠くないうちに勝てる馬に見えました。

秋の本番に向けて各馬が始動する夏競馬、短距離戦は佐賀のサマーチャンピオンに浦和のオーバルスプリントがありますので、そちらへ向かう人馬の走りにも注目して夏競馬を楽しみましょう!

写真:みちのくあめおとこ

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