[重賞回顧]盤石のレース運びで連覇達成~2021年・アルゼンチン共和国杯~

先週末に東京で開催された重賞は、いずれも創設から50年以上が経過している、歴史あるGⅡレース。日曜日に行なわれたアルゼンチン共和国杯の歴史を紐解くと、アドマイヤジュピタが勝利した2007年から、このレースの覇者が、後に続々とGIを勝利している。

例えば、2008年の勝ち馬スクリーンヒーローは、次走のジャパンCも連勝。その産駒のゴールドアクターも、2015年に親仔制覇を達成すると、続く有馬記念も勝利した。他にも、トーセンジョーダン、シュヴァルグラン、スワーヴリチャードが後にGIを制し、古馬混合の重賞では、屈指の出世レースとなっている。

2021年の出走馬は15頭。人気はやや割れたものの、1番人気に推されたのは、前年の覇者オーソリティだった。

昨春、青葉賞で重賞初制覇を成し遂げるも、骨折が判明しダービーは無念の回避。その後、休み明けで出走したアルゼンチン共和国杯を快勝した。そこから、GIの舞台で活躍が期待されたものの、有馬記念と天皇賞・春は二桁着順に敗れてしまう。その天皇賞・春の後に再び骨折が判明し、今回は半年ぶりの実戦。前年同様、鞍上にルメール騎手を配し、大きな注目を集めていた。

2番人気に続いたのはアンティシペイト。昨年、未勝利戦から3連勝し、菊花賞で夏の上がり馬として期待されたものの無念の除外。その後、3勝クラスを勝ちあぐねていた。しかし、1年ぶりの勝利となった前走のオホーツクSが素晴らしい内容。父ルーラーシップも晩成傾向だったが、ついに本格化の兆しを見せたとされ、大きな期待を背負っていた。

僅差の3番人気にフライライクバード。こちらは、セレクトセールで税込1億800万円の高値で取引された逸材。青葉賞では、オーソリティよりも上位の人気に推されていた。連勝することができず出世が遅れたものの、前走で3勝クラスを突破。重賞初制覇だけでなく、スクリーンヒーローとの父仔制覇にも期待がかかっていた。

4番人気推されたのは、同じスクリーンヒーロー産駒のマイネルウィルトス。堅実な走りを見せながら、なかなか勝ち上がれなかったものの、この春オープンに昇級。すると、昇級初戦の福島民報杯で、なんと2着に大差をつけて圧勝した。その後、函館記念8着から挑んだ前走の札幌記念で4着と好走し、この馬も重賞初制覇と父仔制覇がかかっていた。

レース概況

ゲートが開くと、出遅れのないきれいなスタート。逃げ馬不在のメンバー構成で、先手を切ったのはボスジラだった。

同厩のアンティシペイトが2番手につけ、ゴースト、オーソリティ、アイアンバローズが、半馬身間隔で続く。その1馬身後ろにフライライクバードが構え、オウケンムーンを挟んで、マイネルウィルトスが中団8番手を追走した。

900m通過は57秒2と遅い流れで、向正面で、先頭から最後方までは13~4馬身の差。その後3コーナーに入ると、ペースは依然として上がらないものの、全体の差は少し縮まった。

残り1000mを過ぎたところからマイネルウィルトスが上昇を開始し、残り800mの標識を通過したところで、アンティシペイトが先頭に並びかける。そこからようやくペースが上がり、15頭が10馬身以内に固まってほぼ一団となり、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、すぐにアンティシペイトが単独先頭に立ち、後続との差を広げにかかる。2番手に上がったのはオーソリティで、マイネルウィルトスもその外から迫ってきた。

しかし、続く坂の上り、昨年と全く同じ位置でオーソリティが先頭に立つと、そこからは一気の横綱相撲。坂を上り切ってから、あっという間にリードを2馬身半に広げると、末脚は衰えることなく、終始その差をキープしたまま1着でゴールイン。2着にマイネルウィルトスが入り、接戦となった3着争いは、わずかにハナ差でフライライクバードが制した。

良馬場の勝ちタイムは、2分32秒4。盤石のレース運びをみせたオーソリティが、レース史上3頭目の連覇を達成した。

各馬短評

1着 オーソリティ

昨年のリプレイを見るかのような盤石のレース運びで、38年ぶりの連覇達成。1年ぶり2度目のコンビとなったルメール騎手は、この馬の強み=坂の途中でスパートしてもスピードが落ちず、坂を上りきった後も末脚が持続することを熟知している。

前走から12kg増えていたものの、太く見せるようなことはまるでなく、キビキビと歩いていた。筆者の感覚的なものでしかないが、パドックでキビキビと歩いているオルフェーヴル産駒は、概して好走する傾向にある。昨年、大阪杯を勝ったときのラッキーライラックや、プリンシパルSを勝利した際のビターエンダー。今年9月のながつきSで2着と好走したクーファピーカブーなどは、まさにこのパターンだった。

父オルフェーヴルと母の父シンボリクリスエスは、有馬記念を2度勝利。特に2度目は、ともに後続を大きく引き離して圧勝した。あえて、ジャパンCで見たい気もするが、今回は故障からの復帰戦。レース間隔を考慮しても、次走はやはり有馬記念だろうか。ついに本格化し、一線級相手に通用するほどの成長力を手にしたか。非常に注目される。

2着 マイネルウィルトス

勝ち馬には引き離されてしまったが、見せ場を作って好走。2000mを超えるレースは初めてだったものの、全く問題はなかった。

母の父ロージズインメイに、ラフィアンの勝負服、そしてデムーロ騎手のコンビ。これは、今年のオークスを制したユーバーレーベンや、新潟記念を勝利したマイネルファンロンと同じ組み合わせ。キングヘイローほどではないかもしれないが、母の父ロージズインメイも、ひょっとするとブレイクを果たすかもしれない。

3着 フライライクバード

昇級初戦で3着に好走。直線で、マイネルウィルトスが通った位置取りか、それよりも外に進路を取っていたら、果たしてどうだっただろうか。

最後は4着馬と接戦になり、それが距離によるものかは分からないが、上限はおそらく2500m。ベストは、2200mと思われる。年明け、中京で行なわれる日経新春杯か、中山のアメリカジョッキークラブCに出走してきたら、有力候補になりそうな存在。

レース総評

ペースが遅く、勝ちタイムも平凡だったものの、オーソリティのレース内容は完璧だった。それも、次位より1.5kgも重い57.5kgを背負ってこの内容は、非常に価値のある勝利。長距離戦で絶好位を取ったときのルメール騎手は、まず崩れることがない。

2200m以上の古馬混合の重賞では、ロベルト、ディクタス、トニービンといった、欧州の血を持つ馬が大活躍。今回の1~3着馬も、すべてロベルトの血を持っていた(他、ノーザンテーストも)。

オーソリティがそうだったように、これらの血、特にロベルトやディクタスを持つ馬は、直線の坂を減速せずに駆け上がり、上りきった後、一気に突き放して押し切るのが特徴。ゴール前に急坂がある中山・阪神よりも、直線に向いてすぐに坂がある、東京と中京の中距離レースに強い。今年1月の中京開催でも、同じパターンで勝利するロベルト系種牡馬の産駒(特にエピファネイア)を、何度も目にしてきた。

底力が問われる年末から年始の開催では、これらの血を持つ馬に、特に注目したい。

写真:shin 1

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