世代最初のJRAの重賞として行われている函館2歳ステークス。
今年は、中央からの14頭にホッカイドウ競馬からラジアントエンティが参戦して、計15頭が覇を競った。

単勝オッズ1.5倍の圧倒的な1番人気に推されたのは、大外15番枠に入ったモンファボリ。父は歴代の欧州最強馬の一頭Frankel、そして騎乗するのが武豊騎手というコンビである。同条件で行われた新馬戦を5馬身差で圧勝し、なおかつ4年ぶりにコースレコードを更新するというド派手なパフォーマンスを見せた。

2番人気は、新種牡馬モーリス産駒のカイザーノヴァ。デビューする前から産駒の注目度が大変に高かったモーリスだけに、なかなか産駒が勝ち上がれず少しもどかしい雰囲気が漂っていた。しかし、この馬はデビュー戦となった新馬戦で、そのもどかしさを吹き飛ばす目の覚めるような末脚で勝利し、父に産駒初勝利をプレゼント。そこから、厩舎得意の連闘でここに参戦してきていた。

単勝オッズが10倍を切ったのはこの2頭だったが、他にもダート1000mの新馬戦をレコードで圧勝した新種牡馬マクフィの仔ルーチェドーロや、やはりデビュー戦を逃げ切りで快勝してきたラヴケリーとフォドラなどが上位人気に推された。

レース概況

ばらっとしたスタートから好スタートを決めたのは、やはりモンファボリだった。しかし無理に先手を奪わない。フォドラとホーキーポーキーに加え、7枠の2頭ルーチェドーロとリンゴアメが積極的に前にいき、先行集団はこの5頭で形成される。
その中でも、フォドラが単騎で先手を奪った。
カイザーノヴァはちょうど中団の馬群の中、3番人気のラヴケリーは後ろから4頭目を追走していた。

前半3ハロン通過33秒5は4年前にレコードが出た時と同じタイムで、過去10年の同レースでは最速タイのペースだったが、フォドラは気分良さそうに逃げていた。逆に、2番手のルーチェドーロは早くも手が動き始める。モンファボリも前を捕まえるべく外から徐々に進出。リンゴアメはコーナリングで少し難しい面を見せつつも、大外から前との差を詰め、逆にそこから後続は少し差ができてしまった。

直線に入るとフォドラが後続を一気に2馬身ほど突き放し、逆にモンファボリは残り200m付近でずるずると後退してしまう。ルーチェドーロとリンゴアメの2頭が前を追い、そこへ直線入口では後ろから2頭目にいたラヴケリーがコーナーワークで一気に差を詰め、この3頭がフォドラを追う形に。
残り50mほどでフォドラの脚がなくなると3頭が一気に襲いかかり、大外からリンゴアメが一気に差しきったところがゴールだった。
2着ルーチェドーロ、3着ラヴケリーの順で入線し、最後に捕まったフォドラが4着だった。

各馬短評

1着 リンゴアメ

函館開催最初の新馬戦を勝利した馬。
そのレースでは、スタート後に前をカットされるも挽回して直線突き放す強い勝ち方だった反面、ゴール後に物見をして外に飛びそうになるなど幼い一面も見せていた。


今回のレース後のインタビューで、ゲート内や道中でもフラフラしたり幼い面はあると丹内騎手が言っていたように課題はいくつかありそうだ。しかし過去10年で7、8枠が3頭しか3着以内に来ていない内枠有利のこのレースで、外枠を克服し勝利した点は、十分に評価できる内容だった。マツリダゴッホ産駒や丹内騎手は函館1200mに相性が良いので、来年以降このコンビで函館スプリントステークスなど同じ条件に参戦した際も是非注目したい。

2着 ルーチェドーロ

前走がダート戦だったため、初めての芝を克服できるかが懸念されたが、全く問題にせず好走。残り3ハロンからはずっと追い通しだったが、しぶとく末脚を伸ばし、勝ち馬には差されたものの逃げ馬は捕らえていた。
レース後に鞍上が「やはりダートではないか」という旨がコメントされたが、結果だけ見ると芝ダートともにこなせることを実証しているようにも考えられる。次走以降の選択肢が増えたことも、大きな収穫になったのではないだろうか。
また、新種牡馬のマクフィにも改めて注目が集まる内容と結果だった。

3着 ラヴケリー

先行集団以外に位置していた馬で、唯一3着内にきたのがこの馬だった。
3~4コーナーの中間で馬群を捌くのに苦労するロスがあるなど決してスムーズなレース運びはできなかったが、4コーナーで最内を回って前との差を詰めると、直線でも馬群の間を一気に伸びてきて僅差の3着という非常に惜しい内容。
2週間前の落馬が心配された団野騎手だったが、幸いにして1週間休んだだけで今週から戦列に復帰。引き続き好調をキープしているようで、初重賞制覇も遠くはないように思う。

総評

新種牡馬の産駒が4頭参戦し、バラエティに富んだメンバーによる一戦。

勝利したのはリンゴアメという非常にかわいらしい名前の牝馬と、地元函館出身の丹内騎手だった。課題がまだいくつかあるからだろうか、神妙な面持ちで勝利騎手インタビューに答えていた同騎手だったが、インタビューが終わるととても爽やかな笑顔がはじけ、両手を挙げていたのが大変印象的だった。

2歳世代の戦いはまだ始まったばかり。今回敗れた馬の中にも将来性がありそうな馬はたくさんいた。昨年の1、2着馬はその後も重賞を制したように、今年の出走馬からも後の重賞勝ち馬だけでなく、GⅠで好走するような馬が多数出てくることを願っている。

あなたにおすすめの記事