史上初となる無観客競馬でのオークス開催。
それだけでも話題になるであろう一戦に、63年ぶりの大記録を狙う牝馬が参戦した。
無敗の二冠達成を目指す牝馬・デアリングタクト。
2戦2勝で挑んだ桜花賞を完勝し、単勝1.6倍というオッズが、彼女の偉業達成への期待を表していた。
2016年シンハライト以来、連勝を重ねている「オークス1版人気」。しかしその中でもアーモンドアイの1.7倍を超える人気を集めたことになる。
彼女が期待に応えるのか。
それとも伏兵がそれを阻止するのか。
3歳女王の座を狙う18頭が集った。


レースが始まると、大方の予想通りにスマイルカナが飛び出した。桜花賞では9番人気3着と波乱を演出した逃げ馬が、オークスの舞台でも同じく9番人気に。再度波乱を目指して突き進む。
スマイルカナを追うようにアブレイズ・ウインマリリンらが先行し、レースを引っ張っていく。
オルフェーヴル産駒・ホウオウピースフルは多少いきたがる様子を見せていた。

そして1番人気デアリングタクトは、中団やや後方。
そのすぐ後ろに、無敗馬デゼルがポジションを確保していた。
レーン騎手とのコンビを組んだデゼルは、どこで仕掛けるか。
中団の馬たちはデアリングタクトへの意識を切らさぬようにしつつ、レースを展開していく。

道中は隊列もさほど入れ替わらない、平穏な流れとなった。
こういう平穏すぎるレースでは、ひっそりと仕掛けていた名手がニヤリとしていることもある。
果たしてどの騎手が、笑っているのだろうか?

そして最終コーナー。
以前先頭を走るスマイルカナに、外からデムーロ騎手・クラヴァシュドールが襲いかかる。
内ではウインマリリンがタイミングを見計らっていた。

最終直線。
隊列がほとんどそのままに迎えた府中の長い直線で、多くの観衆は息を飲んだことだろう。
──デアリングタクトが、届かない位置にいる。
デゼルが猛然と外から追い出しているなかで、デアリングタクトは馬群の中にいた。
さらには他馬が壁になって進路が見つからない。
63年という長い年月、無敗の二冠牝馬が誕生しなかったというハードルの高さを、この直線入り口で痛感する。

となると、前にいる馬での決着か。
スマイルカナは流石にレースを引っ張ってきた消耗を感じる。内に進路をとった横山典騎手・ウインマリリンがここぞとばかりに脚を伸ばし始めた。
しかしさらに外からもう一頭の「ウイン」、和田騎手とウインマイティーが勢いよくあがってきた。
この「ウイン」所属馬2頭によるワンツーか。そうなれば、大波乱だ。どちらも前哨戦を勝利していたが、7番人気と13番人気。3着に食い込む馬次第ではオークス史上に残る大波乱の決着になりそうだ。
3着に食い込みそうな馬はどの馬か。

──いや、馬をかわしながら猛然と追い込む1頭がいる。

デアリングタクトか?
あそこから、このポジションにあがっているのか?

息をのむ観衆をよそに、デアリングタクトがぐんぐんと差をつめる。
そして半馬身差し切ったところがゴール板。

63年ぶり無敗の二冠馬は、驚くような強いレースぶりで誕生した。

各馬短評

1着 デアリングタクト 松山弘平騎手

強かった。
エピファネイア産駒から、初年度にして最高傑作と呼べるかもしれない逸材が登場した。
桜花賞上位組がスマイルカナ16着・クラヴァシュドール15着に沈む中、唯一上位にきたというだけでも褒められるのに、しっかりと差し切るのが天賦の才を感じさせる。
幸か不幸か、アーモンドアイという史上最強クラスの名牝がまだ現役バリバリで君臨している。秋に一戦を交えることになれば、競馬界全体が盛り上がるのは間違いない。
あとは、桜花賞・オークスとタフなレースを続けてきたことによるダメージだけが不安要素か。
体調面・精神面を維持し、万全の状態で三冠達成・古馬撃破に臨んでほしいところ。
まずは完勝に拍手を送りたい。

2着 ウインマリリン 横山典弘騎手

ベテラン・横山典騎手が、ほとんど完璧な騎乗ぶりで、オークスの大舞台での好走をアシスト。息子の横山武史騎手は騎乗停止で今回乗り替わりになっていたわけだが、果たして父の騎乗をどんな思いで見つめていたのだろうか。
横山武史騎手が乗っていたらどんな走りを見せたのかも気になるところ。
スクリーンヒーロー産駒の成長力を考えると、秋以降も楽しみな馬だろう。展開は向いた、好騎乗でもある、しかしマグレではない。これまで5戦全てが関東。遠征などハードルはいくつかあるが、それも乗り越えて大物になってもらいたい。

3着 ウインマイティー 和田竜二騎手

この馬が勝利するかと思った瞬間があった。
それほどの雰囲気がある走りだったと思う。
2月のエルフィンSでデアリングタクトと対決した時は1.5秒差の7着だったが、そこから大きく成長を遂げている。
好位からレースを進めるタイプの競馬を続ければ、また大きなレースでこうした走りを見せてくれそうだ。
ゴールドシップの初年度産駒からいきなり活躍馬が出てくれたことで、一安心。これからさらに人気を集める種牡馬になってほしい。

総評

デアリングタクトの偉業達成に目が奪われるレースとなった。
しかし惜しくも負けた馬たちも、光るものが感じられた。
人気を集めたデゼルは惨敗してしまったが、道中の操縦性などを見ると今後の成長次第では大物として君臨する可能性があるはずだ。精神面へのダメージケアなどをしながら、得意条件を探してほしい。
また、スマイルカナも最後は力尽きたが、スタートの良さなど武器が多い馬でもある。

偉業達成を目撃したものの、彼女たちはまだ3歳春を迎えたばかりの若駒たちだ。
無理をせず、しっかりと成長し、秋以降もきっと我々を夢中にさせてくれるだろう。

才女たちのターゲットとなったデアリングタクトは、これから無敗の三冠牝馬を目指すわけだが、プレッシャーに負けずしっかりと良い夏を過ごしてほしい。

あなたにおすすめの記事