[重賞回顧]得意の舞台で復活した古豪が、待望の重賞2勝目~2022年・アメリカジョッキークラブC~

東日本でシーズン最初に行なわれるGⅡ、アメリカジョッキークラブCは、創設から60年以上が経過した伝統の中距離重賞。かつては、ミホシンザン、サクラホクトオー、スペシャルウィークといったGI馬が勝利している。その一方で、メジロブライト、マツリダゴッホ、トーセンジョーダン、そしてルーラーシップが後にGI馬へと上り詰めた。

2022年の出走馬は14頭。最終的に3頭が単勝オッズ10倍を切り、その中でも2頭の人気が抜けていた。

1番人気に推されたのはオーソクレース。父エピファネイア、母がGI・2勝のマリアライトという超良血馬は、デビュー2連勝で挑んだホープフルSで2着に健闘。クラシックでの活躍も期待された。ところが、その後に骨折が判明して春は全休。秋は、セントライト記念から戦線に復帰し、そこで3着とまずまずのレースを見せると、続く菊花賞でも2着に好走した。今回はそれ以来3ヶ月ぶりの実戦。念願の重賞初制覇がかかる一戦となった。

2番人気に続いたのがポタジェ。

父がディープインパクト、半姉に重賞4勝のルージュバックがいる、こちらも負けず劣らずの良血馬。ここまでの全12戦で4着以下に敗れたのは、6着に敗れた前走の天皇賞・秋だけ。GIで健闘した実績は今回のメンバーでは上位で、この馬もまた重賞初制覇がかかっていた。

やや離れた3番人気にキングオブコージ。2020年の目黒記念で初めて重賞を制したものの、その後は骨折に見舞われるなど順調さを欠き、1年半で3戦のみに終わっている。過去3戦2勝と相性の良い中山コースで復活なるか、注目されていた。

レース概況

ゲートが開くと、キングオブコージが伸び上がるようなスタート。後方からの競馬を余儀なくされる。

先手を切ったのは、予想通り船橋のキャッスルトップ。2馬身差でダンビュライトが続き、そこからソッサスブレイ、クレッシェンドラヴ、ボッケリーニの3頭が半馬身間隔で続いた。オーソクレースとポタジェの上位人気2頭は、その後ろの6、7番手。出遅れを無理に挽回しなかったキングオブコージは、後ろから2頭目でレースを進めていた。

前半の1000m通過は、1分1秒2のスロー。前10頭は固まっていたものの、後方4頭はそれぞれ離れて追走し、先頭から最後方までは15馬身ほどの隊列となった。

レースが動いたのは、残り800m地点。逃げるキャッスルトップを、ダンビュライトとソッサスブレイがかわし、それをオーソクレースとスマイルが追う。これを機に後方各馬も差を詰め、14頭が8馬身ほどの一団となって4コーナーを回り、最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、スマイルとオーソクレースが先頭に。しかし、ともに伸び脚が鈍く、今度は坂下でマイネルファンロンが先頭に躍り出た。さらにそこへ外からキングオブコージと内からボッケリーニが襲いかかり、上位争いはこれら3頭に絞り込まれる。

そこから3頭の争いが100m近く続くも、決着がついたのは残り50m。3頭の中から抜け出したのはキングオブコージで、最後は後続に1馬身半差をつけ1着でゴールイン。粘ったマイネルファンロンが2着となり、半馬身差の3着にボッケリーニが入った。

良馬場の勝ちタイムは2分12秒7。得意の中山で復活したキングオブコージが、2つ目の重賞タイトルをゲット。騎乗した横山典弘騎手は、史上最多を更新する当レース7勝目となった。

各馬短評

1着 キングオブコージ

スタートで遅れるも、横山典弘騎手が馬のことを考え、無理に挽回せず後方からのレース。それでも、ジョッキーの好判断で仕掛けをギリギリまで我慢し、2つ目の重賞タイトルを手にした。

4歳5月に4連勝で目黒記念を制したものの、秋に京都大賞典で3着とした後、骨折が判明。そこから1年間の休養を余儀なくされ、今回が復帰3戦目だった。そのため、6歳ながらキャリア17戦と使い減りも少なく、引き続き中・長距離路線での活躍が期待できそう。

2着 マイネルファンロン

坂下で一瞬「やったか!?」と思わせたが、さらにワンテンポ遅れて仕掛けた勝ち馬にかわされてしまった。それでも、文句なしの好走といえる内容で、先に動いた点も責められるものではない。

中日新聞杯のアフリカンゴールドに続き、高齢でも侮れないステイゴールド産駒を、またしても見せつける結果となった。

3着 ボッケリーニ

1、2、4着馬は道中10番手よりも後ろを追走し、馬場の外を伸びた。それに対し、上位入線した馬の中で、先行し、なおかつ内を突いたのは本馬のみ。ある意味、最も強いレースをしたといえるかもしれない。

気になるのは、前走に続いて、勝負所でペースが上がったときについて行けなかった点。一度ポジションを下げたものの、そこから再び伸びているだけに、ややもったいないレースとなった。

レース総評

前半1000m通過は1分1秒2。12秒1のラップを挟んで、後半1000mは59秒4。古馬混合の中距離重賞らしく、ロングスパートで底力や持久力が求められるレースとなったものの、キングオブコージの上がり3ハロンは34秒7。やや、瞬発力も求められるレースとなった。上位2頭は、東京と新潟という日本を代表する直線の長い競馬場で重賞を勝った馬。この共通項は、偶然ではないかもしれない。

とはいえ、キングオブコージの母の父は、2020年まで11年連続で欧州のリーディングサイヤーとなったガリレオ。そして、2着マイネルファンロンの父は、サンデー系の中でもヨーロッパ的な要素が強いステイゴールド。冬の中山、そして非根幹距離のレースで最も要求されるのは、やはり底力やガッツ。そして持久力で、いかにもという決着だった。

この2頭が3月の日経賞に出走してきた際は、引き続き期待。そして、5月の目黒記念でも淀みない流れとなって底力が求められる展開になれば、同様に期待できる。また、3着のボッケリーニも直線の長い競馬場が良さそうで、金鯱賞や目黒記念で再びの上位進出があるかもしれない。

一方、敗れたオーソクレースは、やや期待外れの結果に。前年の勝ち馬アリストテレスと父、母父が同じ。そして、菊花賞2着からの臨戦過程も同じだったが6着に終わってしまった。

ルメール騎手によると、前回から10kg馬体が増えて少し太かったそう。また、エピファネイア産駒は距離延長に比べて距離短縮があまり得意ではなく、それもあったのだろうか。

2番人気のポタジェは5着。非根幹距離のレースを得意としたルージュバック(父マンハッタンカフェ)の半弟ながら、こちらは父がディープインパクト。やはり、東京競馬場など直線の長いコースで瞬発力を活かすのが得意パターンと思われる。

写真:shin 1

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