2022年、阪神競馬場で最初に行なわれる重賞が京都記念。過去2年は、同世代の牝馬クロノジェネシスとラヴズオンリーユーが勝利し、ともにそこからGIを3勝。前者はグランプリ3連覇を達成し、後者は日本調教馬として初のブリーダーズカップ制覇と、史上初の海外GI年間3勝の偉業を達成。それぞれが、歴史的名牝へと駆け上がった。
2022年の出走馬は13頭。6頭が単勝10倍を切る混戦ムードの中、4歳牝馬のユーバーレーベンが1番人気に推された。
新馬戦を勝利後は惜敗が続くも、大一番のオークスで2勝目を挙げGI初制覇。その後、秋華賞は調整遅れで大敗したものの、ジャパンカップでは6着と健闘した。今回のメンバーでGI馬は2頭のみと、実績上位の存在。注目を集めていた。
少し離れた2番人気にレッドジェネシス。前走の菊花賞は、1番人気に推されながら13着に大敗したものの、2200mの重賞は2戦1勝2着1回。得意の距離で、重賞2勝目を狙っていた。
僅差の3番人気にレッドガラン。前走の中山金杯は、7歳にして重賞初制覇。さほど実績がなかった2000mを克服し、ロードカナロア産駒でも距離延長は問題ないとみられたか。目下の調子の良さも合わせ、人気を集めた。
以下、ともに年度代表馬に輝いた両親を持つ超良血のジェラルディーナ。ここまで、7戦連続3着以内と安定感が魅力のマリアエレーナ。さらに、天皇賞・秋とジャパンカップで連続4着に好走したサンレイポケットが人気順で続いた。
レース概況
揃ったスタートから飛び出したのは、7歳の古豪アフリカンゴールド。4歳牝馬のマリアエレーナとユーバーレーベンが続き、拍手が送られる中ゴール板を通過。1コーナーに進入した。
続く2コーナーで、タガノディアマンテが掛かり気味に3番手へ上がり、ユーバーレーベンと並走。その後ろはレッドガラン、ラーゴム、ディアマンミノルが横一線で、サンレイポケットが8番手。ジェラルディーナは、後ろから3頭目。そして、レッドジェネシスは最後方を追走していた。
前半1000m通過は1分1秒7のスロー。するとここで、早くもレッドジェネシスがラーゴムとともに進出を開始。ユーバーレーベンの直後につけ、プレッシャーをかける。
そこで馬群はひとかたまりになったものの、残り1000m地点からペースが上がると、再びやや縦長に。4コーナーでも、先行各馬の手応えが楽に見える中、直線勝負へと移った。
直線入口で、アフリカンゴールドのリードは1馬身半。2番手は3頭が並ぶも、坂下からユーバーレーベンとマリアエレーナは伸びを欠き、タガノディアマンテが単独2番手に上がる。
残り100m。ラストスパートをかけたアフリカンゴールドのリードは2馬身。焦点は、むしろタガノディアマンテを挟んだ3番手争いとなり、サンレイポケットとジェラルディーナが猛追するも、前2頭には届かず。
結局、アフリカンゴールドがまんまと逃げ切り1着でゴールイン。1馬身4分の1差の2着にタガノディアマンテが続き、サンレイポケットが大混戦の3着争いを制した。
稍重馬場の勝ち時計は2分11秒9。2年4ヶ月ぶりの勝利を挙げたアフリカンゴールドが重賞初制覇。ステイゴールド産駒は、17年連続重賞勝利を達成した。
各馬短評
1着 アフリカンゴールド
17番人気で2着に激走した中日新聞杯に続き、今度は12番人気での激走。上位人気馬の凡走に助けられたとはいえ、自ら展開を作っての勝利だけに価値は高い。
小回りコースや非根幹距離のレース、道悪、海外のレースでは常に警戒すべき存在。同じコースで行なわれる宝塚記念に出走した際、三度目の激走があっても驚けない。
2着 タガノディアマンテ
こちらは、オルフェーヴル産駒でステイゴールドの孫。人気のゴールドシップ産駒が敗れ、人気薄のステイゴールド産駒とオルフェーヴル産駒が好走するのも、この系統らしい結果といえる。
タガノディアマンテに関しては、前走の中山金杯でも、3着からハナ差の4着と見せ場を作っていた。6歳とはいえ、今回がまだ16戦目。成績にムラはあるものの、現状では、中山か阪神の2000m以上が最適だろうか。
3着 サンレイポケット
勝ち馬と同じ7歳馬。近2走は、天皇賞・秋とジャパンカップに出走し、連続4着と好走。今回は、小回りコースに加えて1年9ヶ月ぶりの右回りという、前走とはまるで違う条件ながらこなしてみせた。
相手なりに走る面があり、GIの舞台であっても、再び好走する可能性は十分にありそう。
レース総評
前半1000m通過が1分1秒7。12秒7を挟んで、後半1000mは57秒5と完全な後傾ラップ。こうなると、中団より後ろに構えていた馬は56秒前半、3ハロンも33秒前半で上がらねばならず、厳しい展開になってしまった。
年齢でいえば、上位を独占したのは6歳以上のベテラン勢。一方、29年ぶりに3頭出走した4歳牝馬は、いずれも上位人気ながら、ジェラルディーナの4着が最高。持久力が求められる古牡馬混合の中距離重賞で、適性の差が出てしまった。
そして、触れなければいけないのは、なんといっても種牡馬ステイゴールドの偉大さだろう。
宝塚記念や有馬記念に強いことで知られる「非根幹距離の鬼」ステイゴールド。高齢であっても好走し、同じ条件で何度も好走するのが特徴。京都記念のステイフーリッシュ以外に、エリザベス女王杯で3年連続2着したクロコスミアも、まだ記憶に新しい。そして、先日のアメリカジョッキークラブCでは、同じ7歳馬のマイネルファンロンが2着に激走。波乱を演出している。
これで、産駒は17年連続の重賞制覇。その父サンデーサイレンスに、いよいよ肩を並べるところまでやってきた。去る2月5日が命日で、そこからおよそ1週間で産駒が重賞を勝つのもドラマチックで、いかにもステイゴールドらしい。
実質のラストクロップはこの7歳世代で、26日には、サウジアラビアのレッドシーターフHCにステイフーリッシュが出走予定。他に、マイネルファンロンや8歳のクレッシェンドラヴが現役を続け、大御所と呼ぶに相応しい11歳馬のオジュウチョウサンも、現役続行を表明している。
2006年のマーメイドS。父のラストランを再現するような鬼脚で勝利したソリッドプラチナムから、そのバトンは繋がり始めた。産駒たちの「黄金旅程」は、まだまだ終わりを知らない。
写真:RINOT