[インタビュー]セッカチセージ、エエカゲンニセイジ…ファンに愛された馬たちに囲まれた松田整二オーナーが語る、我が競馬人生。

馬名にセッカチセージやエエカゲンニセイジなど”セイジ”の冠号を持つ松田整二オーナー。
札幌市で眼科医をされていましたが、現在は引退しセカンドライフを送られています。
今回は、馬産地・北海道ならではのオーナーライフと、愛馬を家族のように大切する精神の源を語って頂きました。

G1出走を叶えた初めての愛馬。
セッカチセージとの出会いと別れ。

2008年5月11日、前日から降り続いた雨の影響から曇天の中、やや重で開催された東京競馬。
メインレースが近づくにつれ陽射しが戻ってきたこの日、後に2004年キングカメハメハ以来の“変則2冠馬”となるディープスカイが制した「第13回NHKマイルカップ」に、松田オーナーの愛馬セッカチセージが出走しました。
前走は2月東京のダート3歳オープン、ヒヤシンスステークス。後のGⅠ馬サクセスブロッケンの3着から、思い切った芝マイルGⅠへの挑戦でした。

「初めて持った馬でGⅠに出られたからね。周りからは『超ラッキーな馬主さん』と言われたね(笑)」

セッカチセージは松田オーナーにとって初めての所有馬。そんなセッカチセージとの出会いを振り返る時、松田オーナーに笑みが溢れます。

「野島牧場で当歳のセッカチセージに最初に会った時ね、ハナミズ垂らして口あけてぼーっと空を眺めていてね(笑)それを見て、『あぁ、この馬の面倒は俺が最後まで見てやらないといけないな』と思ったの(笑)」

セッカチセージは二代母に「ワコーチカコ」がいる、野島牧場を代表する牝系から生まれました。

ワコーチカコは、わずかな産駒から皐月賞馬ナリタタイシンなどを輩出し早世したリヴリアを父に持ち、牡馬隆盛の時代に94年エプソムカップ、函館記念、95年には現在の京都金杯、京都記念で数々のG1馬を倒す、90年代前中期を彩った名牝です。
若き日のオリビエ・ペリエ騎手がJRA初重賞制覇を成し遂げたのもワコーチカコでした。

セッカチセージの父は、サンデーサイレンスを父に持つアッミラーレ。その産駒の中で、JRA初勝利を挙げたのが、セッカチセージでした。アッミラーレは2021年現在も、地方競馬を中心に産駒を送り出しています。

セッカチセージはNHKマイルカップ出走後、本業とも言えるダート路線に戻り出走を続けていました。しかしある時、喘鳴症(ノド鳴り)が判明し、セッカチセージの運命は大きく変わります。

「なかなか勝てなくなっておかしいなと思ったらノド鳴りがわかってね。それで先生が『障害ならスピードもいらないし、一度使ってみますか』という事になって練習したの。でも調教中の事故で突然亡くなってしまって……。引退したセッカチに乗るのを楽しみに乗馬の練習も始めていたのだけど、結局またがる事はできなかったんだよね……」

松田オーナーが果たせなかった思いは、次の愛馬たちへと託されていきました。

「できるだけ最後まで面倒をみたい」

「うちで一番偉いのは『お馬様』ですから」と笑う松田オーナーは、愛馬たちの次の馬生を考え乗馬クラブへの道を模索し、現在は北広島市の乗馬クラブに引退した愛馬達を6頭預託されています。

「やっぱり動物が好きだからね。正直なところさすがに自分では管理しきれなくなってきているのも現実としてはあるけど、できるだけ最後まで面倒をみたいと思っているよ」

乗馬を続けていくために奥様と乗馬クラブへ通う日々。現在はお休みされていますが、そんな中でもこれまで関りを持った馬達一頭一頭がいつも気になっていると話されます。

セッカチセージ3歳時夏の放牧 「いつもカメラに視線をくれました」と松田オーナー

北海道ならではの、オーナーライフとは?

中央競馬には、各競馬場に「馬主協会(うまぬしきょうかい)」があります。馬主協会は、馬主同士の親睦を図る事や、賞金の一部を地域のさまざまな福祉施設へ寄付する活動などを通して中央競馬の発展に寄与するという団体です。

松田オーナーの所属する「札幌馬主協会」には、北海道という土地柄、多くの牧場馬主が所属しています。馬産地にも行きやすく、また都市部とは違った穏やかなムードがあり、コロナ禍の制限付きの中、交流を楽しまれているそうです。

「馬主になった事で、同じ趣味を持つたくさんの仲間ができたよ。競馬をやらなければ出会えなかった人達と知り合えるのはいい事だね」

セッカチセージの生産牧場の野島さんも、元は眼科医と患者さんの間柄だったとか。
「馬」を通して人間関係が広がっていくのも北海道ならではの特徴かもしれません。

ユーモアあふれる松田オーナー

セッカチセージ以外にもニコラスセージ、セイントセージ、イザ、ゼニガタなど、松田オーナーの馬名はユーモアにあふれています。馬の購入を決めるのも名前を決めるのもファーストインプレッションを重視されるそうです。

2022年デビュー予定の牝馬は、今年のサマーセールで購入馬をさがしていたところ、目が合って決めたのだとか。

「アジアエクスプレスの馬がほしくて探していたらある馬とバチっと目が合ってね。それで『私でいいですか?』と聞かれた気がしたから『お願いします』と言って競り落としたの(笑)その子の名前はずばり『ワタシデイイデスカ』に決定!」

ワタシデイイデスカは、順調にいけば2022年に本間忍厩舎よりデビュー予定。
松田オーナーと愛馬達の活躍から、目が離せません!

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