[重賞回顧]東の名門と西のトップジョッキーが送り出す新星~2022年・共同通信杯~

2012年からの5年間で、4頭の皐月賞馬を輩出した共同通信杯。その流れは、一度途切れたように思われたが、2021年、エフフォーリアが6年ぶりに共同通信杯と皐月賞を連勝。さらに、ダービー2着を挟んで、天皇賞・秋と有馬記念も制し、見事、年度代表馬に輝いた。

一方、そのエフフォーリアに唯一黒星をつけたのが、共同通信杯3着のシャフリヤール。こちらは、毎日杯を当時のJRAレコードタイで勝利すると、ダービーでエフフォーリアにわずか10センチ先着し優勝。大一番で雪辱を果たした。

2022年の出走頭数は11頭。前年に続き少数精鋭といえるメンバー構成で、人気は4頭に集中。その中で、ジオグリフが僅差の1番人気に推された。

今回と同じコースで行なわれた新馬戦を快勝すると、続く札幌2歳Sを4馬身差で圧勝した。前走の朝日杯フューチュリティSは5着に敗れたものの、距離不足が敗因とされ、重賞2勝目をかけ、再びデビューの地に戻ってきた。

2番人気はアサヒ。デビュー戦でジオグリフの2着に敗れた後、3戦目で勝ち上がると、GⅡの東京スポーツ杯2歳Sも2着に好走。このとき勝ったイクイノックスは、世代トップクラスの実力を持っているとみられ、重賞初制覇を目指し出走してきた。

3番人気は、キャリア1戦1勝のダノンベルーガ。前走の新馬戦は、極限ともいえる上がり3ハロン33秒1の末脚を繰り出して完勝。能力の高さは疑いようがなく、いきなりの重賞挑戦でも大きな注目を集めていた。

そして、4番人気に続いたのが同じ勝負服、同じ8枠に入ったダノンスコーピオン。デビューから2連勝で挑んだ朝日杯フューチュリティSは、見せ場たっぷりの3着。GIの実績はメンバー中No.1で、この馬も重賞初制覇が懸かっていた。

レース概況

ゲートが開くと、アサヒはタイミングが合わず、後方からの競馬を余儀なくされる。

一方、先手を切ったのはビーアストニッシド。逃げ馬に前をカットされ、やや折り合いを欠いたレッドモンレーヴが2番手に。アバンチュリエも引っかかりながらこれに並びかけ、ジュンブロッサムとジオグリフが4番手。そして、ダノンスコーピオンとダノンベルーガが仲良く中団を追走し、アサヒは最後方からレースを進めた。

600m通過は36秒1。800m通過が48秒6と緩い流れ。後方3頭はバラバラの追走となり、先頭から最後方までは12馬身ほどの隊列となった。

ビーアストニッシドは、後続との差を常に2馬身キープしながらの逃げ。その後4コーナーで一気にペースを上げ、レースは直線勝負へと移った。

直線に入ってもビーアストニッシドの勢いは衰えず、坂の途中でリードは3馬身。2番手は4頭が横一線となり、ダノンベルーガとジオグリフがそこから抜け出す。しかし、坂を上がってからはダノンベルーガの勢いが勝り、残り100mで先頭に立つと、最後は後続に1馬身半差をつけ1着でゴールイン。

ゴール前で2番手に上がったジオグリフが続き、さらに1馬身半差の3着にビーアストニッシドが入った。

稍重馬場の勝ちタイムは1分47秒9。キャリア1戦1勝のダノンベルーガが、重賞の舞台もあっさりクリア。次のステージへと勝ち進んだ。

各馬短評

1着 ダノンベルーガ

中団追走から、またも上がり33秒台の末脚を繰り出し快勝。大幅に相手強化となったここも通過し、一気にクラシック候補へと躍り出た。

データが残っている1986年以降、共同通信杯に出走した前走新馬組は37頭。そのうち、2014年までに出走した26頭は、1頭も馬券圏内に入れなかった。しかし、2015年にリアルスティールが勝利してからは一転。[2-2-2-5/11]と、現在ではむしろ好走パターンになっている。

ダノンベルーガは、まだ厳しい流れや多頭数を経験していないため、次走も確勝とはいえないが、2021年のエフフォーリアもそれは同じ。続く皐月賞も完勝した。

不安要素をはねのけるほどの実力を持つ一流馬かどうか。いろいろな意味で、次走が楽しみになった。

2着 ジオグリフ

距離延長が吉と出て、再び好走を果たした。

2歳戦前半は、芝でも活躍が目立ったドレフォン産駒。しかし、年明け以降、芝のレースは24戦して1勝2着2回3着2回と苦戦しており、やはり主戦場はダートのよう。

ただ、ジオグリフの完成度は高く、皐月賞に直行すれば勝つとは言えないまでも、好走があって驚かない。また、非根幹距離でこそ強さを発揮する可能性があり、ラジオNIKKEI賞などに出てきた際は狙ってみたい存在。

3着 ビーアストニッシド

前走のシンザン記念は、押さえる競馬を試みて4着。ただ、結果論になってしまうが、今回の競馬を見る限りは、やはり逃げてこその馬だろう。

ジオグリフと同様、芝の非根幹距離では警戒すべき存在。スプリングSやラジオNIKKEI賞に出走してきた際は、狙ってみたい。

レース総評

前半800m通過が48秒6。12秒5を挟み、後半800mが46秒8と後傾ラップ。東京らしい末脚比べとなり、メンバー中、上がり最速の33秒7を繰り出したダノンベルーガが快勝。次のステップへと駒を進めた。

一方、出遅れたアサヒや、スタート後すぐに前をカットされ、そこから引っ掛かったレッドモンレーヴは、次走見直せる存在。アサヒに関しては2戦目も出遅れているため、次戦以降も出遅れないという保証はないが、前走の内容を見る限り軽視はできない。

また、非根幹距離よりも根幹距離のほうが成績の良いワールドエース産駒のジュンブロッサム。こちらは、1600mか2000mのレースに出走してきた際に、見直せるのではないだろうか。

勝ったダノンベルーガに話を戻すと、関東の名門、堀厩舎が送り出すハーツクライ産駒。同厩舎は、2020年末から松山騎手への依頼が増加しており、ノーザンファームの生産馬という共通項を加えると、ヒシイグアスやサリオスも同じ。

トップトレーナーとトップジョッキーの新たな黄金タッグからGI馬が誕生するか。そして、サリオスが果たせなかったクラシック制覇は実現するのか。クラシックの足音は、段々と、しかし着実に近づいてきている。

写真:shin 1

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