2022年に発表された、全日本的なダート競走の体系整備。その目玉ともいえる施策が、3歳ダート三冠(クラシック)競走の創設である。

これまで、南関東所属馬限定でおこなわれていた羽田盃と東京ダービーは、2024年から地方他地区およびJRA所属馬も出走可能となり、格付けもJpnⅠに昇格。また、三冠レースの第3弾ジャパンダートダービーは、10月上旬に開催時期が繰り下げられ、名称もジャパンダートクラシックに変更。これに伴い、レパードSと盛岡でおこなわれる不来方賞の1着馬には、同レースの優先出走権が与えられることとなった。

そのため、3歳限定戦という大枠は変わらないものの、2009年に創設されたレパードSも、2024年以降は、これまでとやや異なる趣旨で開催されることになる。とはいえ、創設初年度の覇者トランセンドは、後にGⅠ(JpnⅠ)を4勝。また、2012年の覇者ホッコータルマエは、日本競馬史上初めて10個のGⅠ(JpnⅠ)タイトルを獲得。後のダートチャンピオンが羽ばたくきっかけとなった舞台であることは間違いなく、今後もレベルの高い戦いが繰り広げられるだろう。

そんな出世レースに、2023年もフルゲートの15頭が出走。そのうちの4頭が、単勝3倍から5倍台後半に固まる卍巴の様相となり、米国産馬のミスティックロアが1番人気に推された。

父は米3歳チャンピオンのアロゲート。母フォークロアも米国のGⅠ2勝馬で、甥には日本競馬史上3頭目の牡馬無敗三冠を達成したコントレイルがいるという、超良血の本馬。現在2連勝中で、前走は2着に3馬身差をつける完勝だった。また、デビューからの3戦すべてで上がり最速をマークしている点は魅力。前走が1勝クラスだったとはいえ、オープンで実績を残したメンバーが少ない今回も、好勝負は十分可能とみられていた。

これに続いたのがエクロジャイト。メンバー中、唯一ダートのオープンで勝利した実績があり、その前走、鳳雛Sは上がり最速をマーク。見事、逃げ切り勝ちを収めた。また、2走前のヒヤシンスSでも3着と好走しており、そのとき勝ったペリエールは、後にユニコーンSを完勝。実績面では明らかに上位の存在で、重賞初制覇が期待されていた。

3番人気に推されたのが2戦2勝のオメガギネス。この馬もまた、2戦ともに上がり最速をマークしている。5ヶ月半ぶりの実戦とはいえ、レベルの高い3歳限定の1勝クラスを早期に勝ち上がった点は強調材料。また、兵庫チャンピオンシップを楽勝したミトノオーに続き、ロゴタイプ産駒として世代2頭目のダート重賞ウイナー誕生なるか、注目を集めていた。

そして、僅かの差で4番人気となったのがクールミラボー。芝の重賞きさらぎ賞で3着の実績はあるものの、ダートに限れば4戦2勝2着2回と連を外していない。父ドレフォンに母父キングカメハメハの組み合わせは、皐月賞馬ジオグリフを筆頭に活躍馬が続出しており、本馬もその仲間入りを果たすことができるか期待されていた。

レース概況

ゲートが開くと、ほぼ揃ったスタートから飛び出したのはルクスフロンティア。2馬身差でライオットガールが続き、そこから3馬身差の3番手をオメガギネスとエクロジャイトが併走。これら2頭にハッスルダンクが続いた。

一方、中団は9頭が7馬身ほどの圏内に固まり、人気のミスティックロアは1コーナーを上手く回ることができず、後ろから5頭目を追走。クールミラボーも後ろから2頭目の位置取りとなり、そこからおよそ7馬身離れた最後方をリバートゥルーが追走していた。

1000m通過は、1分0秒5のハイペース。向正面に到達した時点で、ルクスフロンティアのリードは5馬身に広がっており、やや大逃げのような格好。対して、リバートゥルーも離れた最後方を追走しており、全体はかなり縦長の隊列となったものの、それ以外の13頭はおよそ10馬身差で固まっていた。

3コーナーに入ると2番手集団が差を詰め、残り600の標識を過ぎたところで、ルクスフロンティアのリードは1馬身。さらに、続く4コーナーでライオットガールが先頭に並びかけ、3番手はエクロジャイト、オメガギネス、マオノアラシの3頭が横一線となったところで、レースは直線勝負を迎えた。

直線に入るとルクスフロンティアがスパートし、再びリードは1馬身。懸命にライオットガールがこれを追い、3番手争いからオメガギネスが抜け出してくると、残り100mで4番手以下は大きく離され、上位争いは3頭に絞られた。

その後、3頭の真ん中にいたライオットガールがグイッと伸び、体半分前に出たところへ外からオメガギネスが差し脚を伸ばすも、これを凌いだライオットガールが1着でゴールイン。クビ差2着にオメガギネスが入り、1/2馬身差3着にルクスフロンティアが続いた。

良馬場の勝ちタイムは1分50秒8。メンバー中最多のキャリア8戦。そして、唯一3勝クラスを走った経験のあるライオットガールが、開業2年目の中村直也調教師とともに重賞初制覇。牝馬でレパードSを制したのは2010年ミラクルレジェンド以来、レース史上2頭目の快挙だった。

各馬短評

1着 ライオットガール

キャリア8戦はメンバー中最多で、3勝クラスに出走経験があるのも本馬だけ。また、ダートで3勝をあげたのも本馬とエクロジャイトだけで、実績、経験ともに優る存在だったが、牝馬は過去1勝という点が敬遠されたか、人気の盲点になっていた。

しかし、その評価に反発するように、センス抜群の走りを披露。難なく2番手につけると、4コーナーで早くも先頭に並びかける積極的な競馬で、最後は牡馬2頭に競り勝ってみせた。

いわゆる「月1」のペースで5ヶ月連続レースに出走しており、この後は放牧に出される予定とのこと。レディスプレリュードやその先のJBCレディスクラシックなど、大舞台でも出走が叶えば、再びの快走を期待したい。

2着 オメガギネス

騎乗した戸崎圭太騎手によると「突っ張りすぎて、スッと反応できなかった」とのことだが、5ヶ月半ぶりの実戦だったことを考えれば十分な内容。反動さえなければ、次走はもう一段上のパフォーマンスが期待できそうで、将来性を感じさせる素晴らしい走りだった。

父ロゴタイプに母父ハービンジャーと、まるでダートをイメージできない血統構成。ただ、ロゴタイプ産駒のJRAにおける成績は芝10勝、ダート9勝。勝率と複勝率はほぼ変わらない。

この世代には、5月の兵庫チャンピオンシップを楽勝し、ジャパンダートダービーでも3着したミトノオーがいるように、今後も同産駒からダートの大物が出てくる可能性は十分にある。

一方、2代母アスタラビクトリアは、GⅠ馬のヴィクトワールピサやアサクサデンエン、天皇賞(秋)2着のスウィフトカレントを兄に持つ良血。中でも、アサクサデンエンは父がシングスピールで、オメガギネスの3代父もシングスピール。そのため、これら2頭は少し似た血統構成といえる。

3着 ルクスフロンティア

父エピファネイアに母父ステイゴールドと、こちらもまたダート戦をイメージしにくい血統構成。実際、ダートの重賞に出走したエピファネイア産駒はユニコーンS2着のサンライズジークだけだが、本馬も同じように気分良く逃げたことが好走に繋がった。

ただ、気分良くいけたとはいえ、ハイペースの逃げで僅差3着に粘り込んだ内容は秀逸。この馬が最も強い競馬をしたといっても過言ではなく、単騎逃げが見込めそうなメンバーであれば、今後も警戒が必要。

レース総評

前半800m通過が48秒3。12秒2を挟み、同後半が50秒3と前傾ラップ。勝ちタイムは1分50秒8で、良馬場に限ればレース史上3位とまずまずのタイム。また、1000m通過は1分0秒5と速い流れだったが、3~4コーナーを回る部分とはいえ、ルクスフロンティアが上手く息を入れることに成功したことで、7ハロン目は13秒2とややペースは落ちた。

結果、小回りの新潟ダートらしく、4コーナーで5番手以内に位置していた5頭がそのまま掲示板を独占。とはいえ、3、4着の間には5馬身もの差がついており、上位3頭の現時点における実力、完成度の高さは、やや抜けていたとみるべきではないだろうか。

中でも、勝ったライオットガールは、前走3勝クラスのマレーシアCに出走。51kgの軽ハンデに恵まれたとはいえ、古・牡馬に混じって4着と好走していた。

一方、他のメンバーを見渡すと、ダートのオープン級で勝利実績があったのはエクロジャイトだけ。大半は、1勝クラスを勝ち上がったばかりか、前走2勝クラスで敗れたメンバーだったが、過去5年のレパードSで前走1勝クラス組は[0-1-0-21/22]と大苦戦。出世レースだけあって、前走ダートグレード競走を含む重賞、もしくはオープン組の方が成績は圧倒的に良く、前走2勝クラス組がこれに続く。

対して、前走3勝クラス組は出走数が非常に少なく、第1回まで遡っても僅か4頭で[0-0-1-3/4]。というのも、現在、3歳馬が2勝クラスに出走できるのはダービーの翌週から(かつては3歳限定2勝クラス(旧・900万下)のレースがあった)だが、この2ヶ月間に2勝クラスを勝ち上がれば、レパードSで除外されることはまずない。

それでも、ライオットガールは6月に2勝クラスを勝ち上がると、マレーシアCにも出走。さらに1ヶ月後、このレパードSに出走してきた。

また、6~8月のダート3勝クラスに3歳牝馬が出走すること自体珍しく、過去10年でたったの9頭。そのうち、1600m以上のレースに出走したのはライオットガールだけである。

いずれにせよ、今回ライオットガールの実績上位は明らかだったが、過去1勝のみの牝馬という点が敬遠されたか、人気の盲点になっていた。それでも、3勝クラスで揉まれてきた実績は伊達ではなく、前走1勝クラス組が経験したことのないような淀みない流れでも難なく2番手を追走する大人びた走りで、牡馬相手に勝利してみせた。

しかも、この暑さや遠征にへこたれず、当日の馬体重は前走比プラス2kg。牝馬とは思えないほどタフで、今後、全国各地でおこなわれる牝馬限定のダートグレード競走を転戦する際、このタフさは大きな強みとなるだろう。

血統を見ると、父は近年絶好調のシニスターミニスター。2019年のJBCレディスクラシックを制したヤマニンアンプリメを皮切りに4頭のGⅠ馬を輩出しており、先日のセレクションセールでも、カリーニョミノルの2022が、同セール歴代2位の税込1億340万円で落札されている。

そんなシニスターミニスターの今春の話題といえば、なんといっても、無敗で南関東牡馬クラシック三冠を達成したミックファイアを送り出したことだろう。自身は20歳と高齢だが、産駒の勢いは増すばかり。大物を次々に送り出すという点では、ヘニーヒューズやパイロといったダートのリーディングを争うライバルから頭一つ抜け出した感がある。

ライオットガールに話を戻すと、牝馬のレパードS制覇はミラクルレジェンド以来13年ぶり2頭目の快挙。ミラクルレジェンドといえば、ご存知のとおり第1回、第2回のJBCレディスクラシックを連覇した名牝である。

実績上位ながらライオットガールが人気の盲点となったのは、前述したように「牝馬であること」も影響したように思うが、ことレパードSにおいて、牡・牝馬間で勝率、複勝率の差はほとんどなく、複勝回収率では圧倒的に牝馬が上。また、出走は叶わなかったものの、2022年のレースで除外された牝馬ヴァレーデラルナは、そのわずか3ヶ月後にJBCレディスクラシックを勝利。もう一頭の除外された牝馬アーテルアストレアも、7月にリステッドの名鉄杯を制した。

他、2017年2着のサルサディオーネは後に交流重賞を5勝する名牝となり、13年のレースで9着に敗れたアムールポエジーは、繁殖として全日本2歳優駿やUAEダービーを制したデルマソトガケを送り出した。

ダートというと、どうしても牡馬を思い浮かべ、実際、牡牝混合のJRAダートGⅠを勝利したのはサンビスタだけだが、レパードSで好勝負した、もしくは出走が叶わなかった牝馬の動向には、今後も注目していきたい。

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