[地方レース回顧]豪脚一閃!前年覇者ウシュバテソーロが世界レベルの走りを披露~2023年・東京大賞典~

2023年を締めくくる大一番、東京大賞典。

砂の入れ替えによってライトで白く輝くようになったダートコースを駆け抜ける2000m戦に、今年も実力馬が集いました。南関所属馬は今年の三冠馬ミックファイア、南関の中長距離路線の強豪マンガンの2頭。そして中央からは昨年覇者ウシュバテソーロをはじめ、今年のJBCクラシック勝ち馬キングズソード、2022年JDD勝ち馬ノットゥルノ、ダート替わりでオープン入りした良血テンカハル、芝もダートも走る3歳の二刀流ドゥラエレーデ、今年重賞2勝のグロリアムンディ、そして交流重賞3連勝の新星ウィルソンテソーロの7頭が参戦しました。
歴戦の経験値が勝るのか、それとも勢いが勝るのか。大一番のゲートが開き、各馬が駆け出しました。

レース概況

ミックファイアがゲート内で頭を振ったタイミングでゲートが開いてしまい、やや出遅れてしまいます。

スタートを上手く出た馬たちから、武豊騎手がノットゥルノを促してインコースを確保。ドゥラエレーデは掛かりそうなところをムルザバエフ騎手が抑えながら先行し、そのさらに外から原優介騎手とウィルソンテソーロが逃げの手に出ます。

先行3頭の後ろはマーカンド騎手に押されてグロリアムンディ、1馬身~2馬身ほど開いて内にキングズソード、外にミックファイア。さらに後方にテンカハル、ウシュバテソーロが後方2番手につき、マンガンが殿からの追走で隊列が決まります。

1コーナーまでに勢いがついたウィルソンテソーロが、後方8頭を引き連れて向こう正面へ。

折り合いのついたウィルソンテソーロは向こう正面からペースを落としてスロー逃げに持ち込み、ドゥラエレーデが2番手、ノットゥルノがインの3番手という隊列に。さらにグロリアムンディが4番手、その外5番手でミックファイアが前を追いかけます。

インコース後方にキングズソード、外にはウシュバテソーロがミックファイアの出方を伺う位置で末脚を溜める展開。テンカハルとマンガンは後半からのロングスパートを仕掛けて馬群の後方に取りつきます。

3コーナーの入りでもスローペースに乗じてウィルソンテソーロが先頭をキープ。ドゥラエレーデがコーナリングで差を詰めようとする一方で、ノットゥルノが内埒に寄って一瞬置かれてしまいます。
残り600mでキングズソード、ミックファイアも手が動きはじめ、その更に外にはウシュバテソーロの姿もありました。

コーナーをきれいに回ったウィルソンテソーロは余裕をもって直線へ。
ドゥラエレーデもムルザバエフ騎手の鞭に応えて一完歩ずつ先頭との差を詰めようとしますが、残り200mあたりで、蹄音が外から聞こえてきます。

馬8頭分は内を空けた状態で末脚を繰り出したのは、ウシュバテソーロ。

残り400m付近から追い出されると、残り100m地点で2番手のドゥラエレーデに追いつき、ゴール直前で逃げていた同じ勝負服のウィルソンテソーロをとらえました。

積極果敢に攻めたウィルソンテソーロが大健闘の2着、ドゥラエレーデもウィルソンテソーロを追い詰めましたがクビ差届かず3着。直線でじりじり伸びたノットゥルノがキングズソードとの競り合いを制して4着となり、終始外々を回ったミックファイアは直線で余力がなく8着に敗れました。

各馬短評

1着 ウシュバテソーロ

JBC競走前に砂の入れ替えをした影響で先行馬有利の馬場コンディションでしたが、この馬の末脚には何の問題も無かったようです。
追い切りで動かず、パドックでも頭を下げて歩き、レースも最後方から前の動きは我関せず。一見するとやる気の内容に見えるかもしれませんが、ウシュバテソーロの武器は「無駄なことをしない」頭の良さではないでしょうか。ギリギリまで脚を溜めるからこそ繰り出される一気の追込みは見応え十分です。

年明けは再び世界へ、順調なら今後はサウジアラビアからドバイワールドカップ連覇を目指し、再び頂を目指す戦いへ挑みます。

2着 ウィルソンテソーロ

キタサンブラック産駒の4歳馬で、先日引退したイクイノックスや阪神JF勝馬サークルオブライフと同じ新馬戦でデビューしています(6着)。
未勝利戦でダートへ戦場を移すと半年の間に4連勝してオープン入りを果たし、今回はウシュバテソーロに乗った川田騎手と共にかきつばた記念・マーキュリーカップ・白山大賞典を3連勝。

それまでは先行して抜け出す脚が速い馬でしたが、前走チャンピオンズカップでは鞍上の原優介騎手が後方一気の追込でレモンポップの0.2秒差まで迫る2着に好走させると、今回は相手と展開を読んで逃げの手に出て、残り半馬身差まで粘る好走を見せました。

原優介騎手はウィルソンテソーロ以前にも「テソーロ」の了徳寺健二ホールディングス所有馬に騎乗経験があり、その結果からウィルソンテソーロでのチャンスをつかんだのでしょう。
ダート馬ならまだ若手の5歳馬と共に、若武者がどこまで奮闘するか、来年もこの人馬に注目です。

3着 ドゥラエレーデ

ドゥラメンテ産駒の3歳馬ですが、今年のローテーションは未知への挑戦でした。

ダートの未勝利戦を勝ち上がりながら中山芝のG1ホープフルステークスを勝ったことでG1馬になり、UAEダービーでもデルマソトガケの2着、帰国して芝の日本ダービーでは躓いて坂井騎手を落としてしまい競走中止となると宝塚記念に続戦。

秋初戦はセントライト記念で逃げ粘れずに敗れると、菊花賞では無くダートのチャンピオンズカップに挑んで逃げるレモンポップを終始追いかけて3着となりました。今回の東京大賞典でも、逃げるウィルソンテソーロの後ろを追いかけて3着に好走しています。

どのレースでも相手でもそれなりに走ってしまうため、真の適性は掴みかねますが、将来が楽しみな存在であることは間違いありません。

4着 ノットゥルノ

大井コースに限ればJDD優勝に加え、昨年の東京大賞典・今年のJBCクラシックと2着2回。連を外さない得意コースでのレースになりました。鞍上には有馬記念を勝って復活した武豊騎手。

インをロスなく回って迎えた直線で手前を変え、一瞬止まりそうにも見えましたが、外にウシュバテソーロとキングズソードの姿を見ると、武豊騎手の鞭に応えてもうひと脚使っての4着と粘りました。連対は外してしまいましたが力は見せたと言えるでしょう。

左回りが苦手なので、右回りで力の要る勝負、最後は馬体を併せての勝負になると見限れない存在です。来年の帝王賞などで、展開がハマれば再び連対もあるかもしれません。

レース総評

ウシュバテソーロが連覇を達成しました。

砂の入れ替えとウィルソンテソーロが作ったスローペースにより決着タイムは2秒以上遅いものでしたが、残り400mからの目の覚める末脚は川崎記念・ドバイワールドカップ・日本テレビ盃と連勝を重ねた走りのままでした。BCクラシックの敗戦もなんのその、実力は国内屈指です。
別路線で対戦が無かったレモンポップが2024年は海外遠征を予定しているので、ついに両雄の対決が見られるかもしれませんね。

また、チャンピオンズカップに続いてウィルソンテソーロ、ドゥラエレーデが好走を見せました。特にウィルソンテソーロは出遅れた前走の追込みから一変して逃げの競馬で半馬身差2着と自在性を見せつける結果になりました。明けて5歳、2024年はどのような走りを見せてくれるでしょうか。

ミックファイアは体調面を考慮して東京大賞典で中央馬たちと初対戦でしたが、ゲートの出遅れ、終始スローペースの外々を回る苦しい展開でした。休養中に砂が変わって、南関東三冠レースと同じコースながら勝手の違う馬場に戸惑ったのかもしれません。今回は展開の不運も重なりましたので、この経験を糧に、次走以降は中央の馬たちと再び差のないレースを見せてくれるでしょう。

オメガパフューム、チュウワウィザード、テーオーケインズらの強豪たちが引退しても、ダート競馬は次々に強い馬たちが現れた年でした。
まだ未知の可能性があるドゥラエレーデや、条件戦を連勝中のヤマニンウルス、コリアカップを完勝してG1タイトルを狙うクラウンプライド等、今後も活躍しそうな馬たちがまだまだたくさんいますので、2024年もダート競馬から目が離せません!

写真:shin 1

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