[重賞回顧]2年5ヶ月ぶりの復活勝利〜2021年・京都金杯〜

京都競馬場が改修工事のため、2021年の京都金杯は、史上初めて中京競馬場で施行されることとなった。
左回りで、直線に坂があることなど、京都競馬場とは正反対といえるコース設定で、果たしてこれまでの傾向と異なる結果になるのか、注目が集まった。

ハンデ戦ながら、トップハンデのサトノアーサーが57.5kgと設定されたのに対し、最軽量の馬でも斤量は55kgと、ハンデ差は2.5kgに留まったのも今年の特徴と言えるだろう。

最終的に単勝オッズが10倍を切ったのは3頭で、中でも2頭に人気が集中した。
1番人気に推されたのはシュリで、明け5歳ながら、ここまでのキャリアはわずか8戦。最低着順も5着と非常に堅実で、前走は、昇級初戦をものともせずにリステッド競走のリゲルステークスを快勝して、連勝を達成した。今回は、一気の重賞初制覇を成し遂げ、春に大舞台を目指すきっかけの一戦となるか。

一方、2番人気に続いたのはピースワンパラディ。こちらも、明け5歳ながらキャリア12戦は少ない方で、昨夏のエプソムカップと新潟記念は共に7着と敗れたものの、それ以外は全て3着以内に好走している。また、中京1600mは4戦2勝2着2回と得意としていて、こちらも重賞初制覇を狙って参戦。

2頭から少し離れた3番人気となったのは、明け6歳馬のレッドガランで、前走はシュリが勝利したリゲルステークスで3着となっていた。この馬もまた、キャリア14戦とここまで大切に使われてきた馬。
リステッド競走の勝利こそあるものの、上位人気2頭と同様に、重賞初制覇を目指し出走してきた。

レース概況

ゲートが開くと、目立った出遅れはなかったものの、人気のシュリを含む、4・5枠に入った4頭のダッシュが少し付かず、後方となった。

明確な逃げ馬が不在で、ボンセルヴィーソが逃げることが予想されていたが──そのボンセルヴィーソを交わして先頭に立つ積極性を見せたのは、意外にもエントシャイデンだった。1馬身半差の2番手にボンセルヴィーソとタイセイビジョンが続き、ここまでが先団。そこから4馬身ほど離れて、外にピースワンパラディ、内にケイデンスコールが追走し、シュリが早くもその直後までポジションを上げていたが、少し引っかかっている様子だった。

最初の600m通過は35秒2、800m通過が46秒9と、この日の馬場を考慮すると平均ペースで流れ、先頭から最後方までは、およそ15~6馬身ほどの縦長の隊列となった。

3・4コーナーの中間点で、後方に構えていた馬達が差を少し詰めて固まり始め、その差は10馬身ほどに縮まった。この辺りでもまだ、先団3頭の手応えには余裕がありそうに見えた。
4コーナーで、その直後に付けていた人気馬2頭の手応えがあまり良く見えず、武騎手と福永騎手が懸命に手綱を動かす。そして、レースは最後の直線勝負に入った。

直線、内目で逃げ粘るエントシャイデンに並びかけようとしたボンセルヴィーソが、馬場の中央から内に進路を取った。直後にいたケイデンスコールは、それら2頭の間に入ろうとしたものの入れず、前が詰まってしまう。

それでも、まだ余力が十分にあったためすぐに立て直されると、2頭の外からじわじわと伸び、残り100mで先頭に立った。追ってきたのは、ピースワンパラディ、タイセイビジョン、シュリの3頭で、中でもようやくエンジンのかかったピースワンパラディの伸び脚がいい。

しかし、ケイデンスコールの脚色は最後まで衰えず、4分の3馬身差をつけて1着でゴールイン。
2着にピースワンパラディが入り、3着にはエントシャイデンが逃げ粘った。

良馬場の勝ちタイムは1分33秒1。1番人気のシュリは、スタートの後手が響いたのか、最後の一伸びを欠いて5着に終わった。

各馬短評

1着 ケイデンスコール

12番人気の伏兵だったが、それに反発するような着差以上の完勝で、2年5ヶ月ぶりの復活勝利を挙げた。

GⅠで2着と実績は上位だったものの、連対もそれ以来1年7ヶ月ぶりだった。
好走の傾向がなんとも掴みにくい馬だが、今回も含む連対5回は、全て左回りの芝1600m。
逆に、3ヶ月以上の休み明け初戦は動けない、ということも覚えておきたい。

2着 ピースワンパラディ

今回も、安定した取り口から2着と好走した。
当コースが得意なのは前述したとおりだが、東京1600mも2戦2勝のため、左回りの1600mに限れば、7戦4勝2着3回という抜群の成績を誇る。エンジンがかかるのにやや手間取るタイプで、これ以上距離が短くなると厳しいように思うが、左回りのマイル以上、特に東京新聞杯に出走してくれば、引き続き要注目。

3着 エントシャイデン

展開に恵まれたのは間違いないが、そうなるために逃げの手を打った川須騎手の好騎乗が光った。
この勝負服に、ディープインパクト産駒で矢作厩舎といえば、コントレイルを思い浮かべるが、母系にUnbridledを持っている点も共通している。
6歳馬で今回が34戦目と、タフに使われている。
ピースワンパラディのように連対率100%ではないものの、この馬もまた左回りのマイル戦での好走が多く、あと1、2回穴を開けそうな雰囲気がある。

レース総評

前回の開催から、ほぼ中1週開けての開催となったが、前開催は最終週のみBコースで施行されていた。
今週は、再びAコースに変わったためか、枠順の有利不利というよりは、逃げ・先行馬有利の馬場となった印象にある。8頭立てで行われた第6レースこそ、差し・追込み馬が3着内に2頭来たものの、それ以外のレースでは、3着内に来た馬の2頭以上が、逃げ・先行馬という結果だった。

京都金杯に関しても、道中ハイペースではなかったため、中団より後方に控えた馬にチャンスはなく、1頭も掲示板に載ることができなかった。そのため、今回上位に好走した馬を次走で過剰評価しすぎないように注意したいが、上位3頭はいずれも左回りのマイル戦に好走歴があるため、その条件に出走してくれば、引き続き注目できるのではないだろうか。

また、古馬3勝クラス以上の中京芝1600mで、種牡馬の傾向として覚えておきたいのが2頭。1頭目はロードカナロアで、直近で施行された同コースの古馬オープン以上の3レース、すなわち今回の京都金杯、2020年のポートアイランドステークス、2019年の中京記念は、同産駒の3連勝となった。3勝クラスも含めれば、2020年のトリトンステークスを制したペプチドバンブーも同産駒だった(もう1レースの納屋橋ステークスの勝ち馬はシュリで、こちらはハーツクライ産)。

もう1頭はディープインパクトで、今回の3着馬および、2020年のトリトンステークスの3着馬、2018年の中京記念の1、3着、そして2016年の中京記念の1着馬は同産駒だった。そもそも、この条件のレース数が少ない割に、この2頭の産駒の出走頭数が多いため、取捨選択が難しく恐縮ではあるが、中京芝1600mの古馬3勝クラス以上は、今後もロードカナロア産駒とディープインパクト産駒に注目したい。

写真:オボ山

あなたにおすすめの記事