弥生賞は、3着までに皐月賞への優先出走権が与えられるトライアルレース。
これまでにも三冠馬3頭をはじめ、幾多の名馬がこのレースをステップに一流馬へと上り詰めた。

2020年からは、そのうちの一頭であるディープインパクトの名をレース名に冠して行われている。

出走頭数は10頭だったが、人気は2頭に集中し、中でもダノンザキッドが単勝オッズ1.3倍の圧倒的な1番人気に推された。

ダノンザキッドのデビューは、昨年6月の新馬戦。阪神外回りの長い直線を持ったままで駆け抜けて完勝を収めると、続く東スポ杯2歳ステークスとホープフルステークスも制し、昨年三冠馬となったコントレイルが2歳時に歩んだのと同じステップでGⅠ馬となった。今回は他に重賞勝ち馬もおらず、前哨戦とはいえ負けられない一戦となった。

一方、オッズ4.9倍の2番人気に推されたのはドイツ産馬のシュネルマイスター。
こちらは、昨年9月の新馬戦→1勝クラスのひいらぎ賞と2戦2勝の戦績。今回も含め、ここまでおよそ3ヶ月の間隔を開けられ、大事に使われてきた。また、ルメール騎手が継続騎乗してくることもあり、ダノンザキッドにどこまで迫れるかが注目されていた。

単勝オッズ10倍を切ったのはこの2頭で、以下、ワンデイモア、タイトルホルダー、タイムトゥヘヴンの順で人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、わずかに好スタートを切ったタイトルホルダーがそのまま先手を奪う。大外枠のシュネルマイスターが2番手につけ、今回は控えたタイムトゥヘヴンが3番手。その後ろにテンバガーが続き、やや行きたがるようなところを見せたダノンザキッドが5番手となって、1コーナーから2コーナーを回った。

向正面に入る前にペースは落ち着いており、タイトルホルダーのリードは2馬身。その後ろの2番手は依然シュネルマイスターだったが、そこから9番手のタイセイドリーマーまでの8頭はおよそ1馬身ほどの等間隔で進み、頭数のわりにはやや縦長の展開に。ホウオウドリームだけが、やや離れた最後方を追走していた。

前半1000mの通過は1分2秒6のスローで、結果的には、この前後が最も遅いラップとなった。

そのままレースは進み、残り800mを切ったところで少しペースが上がり、さらに残り600mを切ったところで、シュネルマイスターがタイトルホルダーの半馬身後ろに迫る。そこからタイムトゥヘヴンを挟んで、ダノンザキッドがポジションを一つ上げて先頭とは2馬身差となり、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、コーナリングでタイトルホルダーが再びリードを広げて、2番手との差はおよそ2馬身。
追ってくるのは、シュネルマイスター、タイムトゥヘヴン、ダノンザキッド、テンバガーの4頭で、ここまでが圏内といったところか。しかし、残り200mを切っても目立つ末脚で前を交わしそうな馬はおらず、ダノンザキッドも伸びを欠いている。

さらに、坂を駆け上がっても、道中、楽をしていたタイトルホルダーの勢いは止まらない。
ゴール寸前でようやくエンジンがかかったダノンザキッドが追い込むも、時すでに遅し。

結局、2着に1馬身4分の1差をつけてタイトルホルダーが楽々と逃げ切り勝ち。
2着には、ダノンザキッドの追撃をクビ差しのいだシュネルマイスターが入り、結果的には「行った行った」のレースとなった。

良馬場の勝ちタイムは2分2秒0。これが、ドゥラメンテ産駒の重賞初勝利となったが、父の現役時には想像もできないような逃げ切り勝ちだった。

各馬短評

1着 タイトルホルダー

ホープフルステークス以来およそ2ヶ月半ぶりの競馬で、馬体重は前走比マイナス4kgとスッキリした仕上がり。

父のドゥラメンテは、現役時に桁違いの瞬発力を発揮して皐月賞を制したが、基本的に中山2000mで求められるのは、この馬のように前々で運べる機動力。スタートも毎回よく、安定して先行できる点は大きな強みとなるため、本番でもしっかり先行できるかが好走のカギとなる。

また、レースでは今回が初コンビだったにもかかわらず、スタートを生かしてそのまま逃げ切った横山武史騎手の好騎乗も光った。

2着 シュネルマイスター

土曜日のチューリップ賞に続き、キングマン産駒の外国産馬がクラシックの前哨戦で連対を果たした。

そのキングマンは、現役時代には8戦7勝の成績。マイルGⅠを4連勝後にノドの感染症が判明して引退したが、同じ年にサセックスステークスとジャックルマロワ賞を制したのは本馬が初で、2014年度のカルティエ賞年度代表馬および最優秀3歳牡馬を受賞した。

レース後にルメール騎手が、硬い馬場の方が良いとコメントしたようだが、ヨーロッパ血統(母はドイツオークス馬)というところに着目すると、かえって本番は馬場が渋った方がチャンスがあるように思う。果たしてどうなるだろうか。

3着 ダノンザキッド

今回も、上がり3ハロン最速(タイ)の末脚を使ったものの届かず、初黒星を喫してしまった。

デビュー戦のインパクトがあまりにも強すぎたため、新馬戦より相手が強化されたとはいえ、ここ2走は勝利していたものの、個人的にはやや期待を下回る内容だった。

勿論その前走に関しても、手前替えが上手くいかないまま勝った点などは、高い実力の証明ではあるが、基本的には長い直線でキレ味を発揮したいタイプのように思う。

皐月賞でも過剰人気になるようであれば、疑ってかかる必要もあるのではないだろうか。

レース総評

朝日杯フューチュリティステークスを勝利したグレナディアガーズが皐月賞に出走しないことがほぼ確実なため、今回ダノンザキッドが敗れたことにより、牡馬クラシック戦線は、いよいよ混沌としてきた。

現時点では、共同通信杯を勝利したエフフォーリアが筆頭のように思えるが、若葉ステークス組や、近年では最重要のトライアルレースとなっている、スプリングステークス組にも注目が集まる。

また、上述したように、土日の3歳重賞でキングマン産駒の外国産馬が連対を果たしたが、桜花賞や皐月賞に外国産馬が出走してくるケースはほとんどなかった。本番に出走してくれば、共に中~上位人気になると思われ、結果はさておき注目したいポイントでもある。

最後に、昨年の札幌2歳ステークスから続いていた、ノーザンファーム生産馬による2・3歳限定重賞での連勝が、今回ついにストップした。とはいえ、ここまで19連勝という記録はとてつもない偉業で、来週以降も、再び勝ち星を積み重ねていくことだろう。

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