牝馬クラシック第一戦・桜花賞と全く同じ舞台で行われる2歳女王決定戦、阪神ジュベナイルフィリーズ。
過去にはウオッカにブエナビスタ、ラッキーライラックなど、後の女王を輩出した名門レース。そして12月の開催ということもあって所謂師走の気配を肌で感じることのできるレースでもある。
そんな2歳女王決定戦の中から、今回は大激戦の末G1タイトルをもぎ取った1頭の小柄な少女についてご紹介していく。
2013年の2歳牝馬戦線は夏の重賞を総なめするなど、各混合重賞を制覇するレベルの高いものとなっていた。
新潟2歳ステークスを今でも語り継がれる豪脚で差しきったハープスター。不良馬場という厳しい条件の中上り最速で札幌2歳ステークスを勝利したレッドリヴェール。小倉2歳ステークス、デイリー杯2歳ステークスと連勝を果たしたホウライアキコ。さらにスプリント路線からは函館2歳ステークスを制したクリスマスが出走。
激戦を勝ちぬいた粒ぞろいのメンバーが揃った。
その中でも今回のレースの主役となるレッドリヴェールは、札幌2歳ステークス以来の実戦となっていた。
不良馬場の札幌2歳ステークスを制したレッドリヴェールは、ひとつの大きな特徴があった。
それは、非常に小柄な馬体ということ。
デビュー時の馬体は、420キロ。
阪神ジュベナイルフィリーズ出走時のライバル・ハープスターが476キロということを踏まえても、小柄な1頭と言える。
しかし華奢に見えるこの馬だが、パワーは世代屈指。
札幌競馬場の代替開催として約3か月連続開催を行い、さらに雨の不良馬場で行われた札幌2歳ステークスを牝馬ワンツーで決めた点からも、秘めたるパワーを感じ取れるだろう。
新馬戦を制した阪神競馬場でのG1をどう攻略するか、そしてハープスターをどう封じ込めるかが注目点となった。
冬空の阪神競馬場。
桜花賞と同じ向こう正面に設置されたゲート前で、各馬が輪乗りを進める。
圧倒的1番人気に支持されたのは10番のハープスター。
あの新潟2歳ステークスは令和になってもなお「伝説的豪脚」として語り継がれていることからも、この当時のハープスターへの期待は計り知れないものだったといえよう。
2番人気は重賞連勝の18番ホウライアキコ、3番人気は白菊賞で巻き返した1番レーヴデトワールとなり、8番のレッドリヴェールは5番人気でのゲートインとなった。
ゲートが開きレーススタート。揃ったスタートの中飛び出したのはニホンピロアンバー。
それを目掛けてメイショウアサツユやダイヤモンドハイ、ホウライアキコが追っていく。
ペースを上げながら先行争いを繰り広げる中レッドリヴェールは中団8番手に収まり、ハープスターは指定席ともいえる後方14番手からレースを進めた。激しい先行争いも相まってやや前半は早い流れで進んだレースは4コーナー。各馬の間隔がバラバラと広がりながら直線へ。
先頭粘るニホンピロアンバーを巡ってダイヤモンドハイ、そしてホウライアキコとフォーエバーモアが追ってくる。一転して混戦となった先行争いはホウライアキコとフォーエバーモアが競り合い、フォーエバーモアが先頭に立った。しかしそう簡単には勝たせまいと後続各馬が迫る。
あえて間を縫って追い込むハープスターが先頭に迫り、さらに外目からはレッドリヴェールが追い込んでくる。逃げるフォーエバーモア、追うハープスターとレッドリヴェール。
追い込む2頭がフォーエバーモアに並んだところがゴール。
3頭が全く並んでのゴールインとなった。
大激戦のゴール前。ターフビジョンに流れるストップモーションでも態勢は分からないほどであった。
果たして勝ったのはどの馬か。関係者、ファンが見守る中1着の着順掲示板に点灯した番号は、8番。
レッドリヴェールが僅差で勝利を手にしていた。
ハープスターを抑え、力強い走りで手にしたG1タイトル。
それはこの年にJRAに移籍した戸崎圭太騎手に移籍後初G1を贈るものだった。
2歳戦とは思えない大迫力の攻防が展開されたこの年の阪神ジュベナイルフィリーズ。
この後ハープスターとレッドリヴェールはそれぞれ違う道で強豪と戦った。その原点は確実にこのレースであったであろう。