[インタビュー]岩手の馬スポット、馬っこパーク・いわてが考える、引退馬支援

岩手県の中心地、盛岡。

競馬ファンにとっては、盛岡競馬場がある場所として有名なスポットであるが、それだけではなく「チャグチャグ馬コ」という、馬に色とりどりの鈴や衣装を身に着け街中を行進する伝統行事も執り行われている、いわば「馬どころ」でもある。

そんな盛岡市から車を20分から30分走らせ、隣の滝沢市に向かうと、ひとつの牧場が見えてくる。

そこが、馬っこパーク・いわて。

過去には岩手競馬の不朽の名馬、トウケイニセイが過ごし、現在でも桐花賞を制したコミュニティや、引退後再度の現役復帰を果たしたナグラーダなどが過ごす地だ。

他でもない岩手の馬スポットのひとつである牧場であるこの場所は、NPO法人(乗馬とアニマルセラピーを考える会)としても活動しており、数多くの活動を行ってきた。

今回は、理事長である山手寛嗣氏にその想いやパークの現状を語っていただいた。

今回のテーマは「引退馬支援」。昨今話題になり、盛んにもなっているテーマについてだ。

「生きている限り、彼らは放牧場で走りたいと思うだろうし、手入れもしてあげなければいけないと思う」

「ただ預かって、そこに置いておくだけ……というのは、元競走馬としてどうなのかなというのが、個人的な想いですね」

自身の考える引退馬支援の在り方について、山手理事長はそう語る。

その信念は、馬っこパークでの引退場支援の軸にも影響を与えている。

馬を引き取るという事、それはとても素晴らしい事であると同時に、大きな責任も伴う。そして引退馬をお世話するというのには、費用面の問題が浮かんでくる。

パッと思いつくだけでも飼料費、厩舎への預託代、手入れ代、診察代……。このほかにも様々な不測の事態があれば、その都度、新たに費用はかさむ。

勿論、支援は1年や2年という単位で考えるのはあまりにも短い。10年、20年以上のスパンで考え、予算を組まなければならない。

競走馬だった間にはレースの賞金などで自らの手で賞金を稼ぐということもあるが、引退してしまえばそのようなことは無くなり、所有者からの支出のみで暮らすことになる。

そして所有者の財政事情が、馬の命を左右してくることになる。

引き取ったけど、やっぱり無理だから諦める……手入れもしない、厩舎に入れっぱなし、餌も配合等を考えないで与える……

そんな対応をされてしまえば、馬の健康はすぐに損なわれてしまうだろう。最悪の場合、命を落とすことに繋がる。

山手理事長は馬を「家族」と呼んでいた。

「勿論このあたりの考えは人によるとは思うのだけれど……」と前置きしたうえで、次のように続けた。

「生きている限り、彼らは放牧場で走りたいと思うだろうし、手入れもしてあげなければいけないと思う。僕らが馬の考えを全部わかってあげられるわけじゃないけど、彼らが生きている限り、僕は人と関わらせてあげたいと思っています」

その馬が人と関わることができるように、乗馬のリトレーニングを、セラピーホースとしての道を現場の人間が切り開く。

走ることが仕事だった彼らを、今度は人と関わるために自分たちが寄り添い、セラピーホースとして育て上げる。

そうすることで、セラピーホースとして生きる彼らが、誰かにとっての大事な馬になる。そして居場所ができて、彼ら自身も養老馬や功労馬として適度な運動も行うことができるようになる。

「引き取った後にパークで乗馬ができるようになって、そこにお客さんもやってくる。そうするとね、嬉しいことにその馬にもまた新たなファンができるんですよ」

馬を好きになるという想いは、現役でも引退馬でも変わらない。人と関わることで、できる新しい絆もある。

だが、馬によっては問題も起きるようだ。

「勿論、その馬が更に先を目指せるような馬……例えば将来は国体を目指せるような素質がある馬であれば、さらに上の乗馬施設なんかに移籍させることもあります。けどその時に、その馬がいなければもうパークには来ない、とおっしゃられる方もいます。そういう時には申し訳ないし残念ではありますが、その馬の行く先を一番に考え、移籍させるようにしています。ですが…このあたりの両立もまた、引退馬支援の難しい所です」

引退馬支援を考えている人へ知ってほしいことは何か──。

インタビュアーが次に訪ねたのは、近年多くの支援団体も増え、また注目されるようにもなったこの考えについてだ。

NPO法人として活動している理事長自身の言葉は「その馬の幸せを第一に考えてほしい」だった。

「幸せ」を考える引退馬支援
支援を考える人たちに考え、知ってほしい事

「つい最近、日本にもアニマルウェルフェアの考え方が入ってきました。支援を考えている人にも様々な考え方の人がいると思います。ただ出来れば、引退馬を使ってお金を儲けたい、と言うようなビジネス的考えではなく、功労馬やセラピーホースとしての余生を全うさせてあげるといった、彼らの幸せを第一に考える支援が広まってほしいと思います」

アニマルウェルフェアとは、感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方のことである。

現在も多くの競走馬が生産されている日本競馬界。安易に功労馬を預かる、というのは難しい状況なのも当然である。費用や馬房の空き状況、全国の牧場施設の状況を考えれば、厳しい状態が続くのも仕方ないだろう。

だが、だからこそ引き取ったからには、その馬の幸せを考え、最期まで寄り添ってほしいという。

山手理事長は最後にこう付け加えた。

「例えば、30万円出してその馬を引き取るというところと、無料でしか引き取れない、という牧場があったとします。けどいざ引き取ってみると、30万円出したところは管理がずさんで馬達が過ごす環境としてはひどく劣悪だった……というケースもあります。一方無料の所は人でこそ少ないけれど、その馬に対する管理の熱量は熱く、しっかりと毎日ケアされて生きていくことができる場合もあります。そう考えると、支援は、金額の大小の問題ではないのかもしれません。その馬を支援する方々それぞれで、自分ができる範囲内のベストを尽くしてほしい。お金儲けではなく、それぞれの幸せを祈れるような、そんな支援が望ましいと思っています」

今回ご紹介した馬っこパーク・いわてを支援するクラウドファンディングが、10月11日より開催されている。

目標額は100万円。頂いた費用は厩舎修繕の費用、飼料の購入や新しく非常勤スタッフを雇うなどのパークの運営に充てられる。

先にご紹介した通り、馬っこパーク・いわては今、コロナ禍の影響で経営難に陥っている。

岩手県の中でも積極的に様々な活動を行っている馬っこパーク・いわて。

多くの人にとって救いであり、また憩いの場所になっているパークの支援を、馬が好き、また競馬が好きなあなたも、一度検討してみてはいかがだろうか?

クラウドファンディングの募集は11月30日まで。

3000円から20000円の範囲内で支援でき、リターンは以下の通り。

  • 3000円 リンゴジュース+オリジナルグッズセット
  • 5000円 体験乗馬チケット+オリジナルグッズセット+リンゴジュース
  • 10000円 体験乗馬チケット+オリジナルグッズセット+馬達のたてがみ
  • 20000円 体験乗馬チケット+オリジナルグッズセット+リンゴジュース+馬達のたてがみ

詳細は下記URLを参照。

https://camp-fire.jp/projects/view/455710

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