[引退馬支援]馬ふん堆肥を広めるために、りんごの木を共同所有。

こんにちは。
一般社団法人『馬と歴史と未来の会』理事長の上田優子です。

今回は、タイトルにもある通り、馬ふん堆肥で育てたりんごの木を使った引退馬支援についてお伝えしていこうと思います。

『馬と歴史と未来の会』の取り組みのひとつに、『FUMIER PROJECT』があります。
『FUMIER PROJECT』とは「馬と人を幸せにできる仕組みは何だろうか?」と考え続けてたどり着いた、企画商品のブランド名です。
先日この場でご紹介したマッシュルームスープも、同ブランドのものです。

『FUMIER PROJECT』では、様々な取り組みを試みています。
マッシュルームスープのほか、りんごジュース・りんごのゼリー飲料を開発していますし、現在は新たにマッシュルームの万能ペーストを開発中です。

このプロジェクトで最初の取り組みが『馬ふん堆肥で育てるりんごの木オーナー』でした。

この「りんごの木オーナー」制度とは、馬ふん堆肥を導入して育てるりんごの木を、支援者が共同で所有するという取り組みです。狙いは、ふたつ。

  1. 馬ふん堆肥の導入実績を作り、馬ふん堆肥の認知度を向上させる
  2. 収穫されたりんごを、引退馬におやつとしてプレゼントする

どちらも、引退馬の支援につながる大事な狙いです。

──とは言っても、何か確実なアテがあって始まった取り組みではありませんでした。ですから、スタートは、馬ふん堆肥を撒いてくれる農家さん探しから。元々はりんご木のオーナーになる予定はありませんでした。

新しいことを始めるのにとても奥手な農業分野において、作物の質が変わってしまうかもしれない「土壌改良」はハードルが高いものです。
交渉に幾度となく足を運びましたが、なかなか首を縦には振ってもらえない日々が続きました。
最終的には「生育がどうなっても責任を取る」ということで、木の権利を買い取り、オーナーとして馬ふんを撒かせてもらうことになったのです。

そこから、りんご栽培の作業を1つ1つ学んでいきました。1本の木に1万個の花が咲き、最後約80~100個の成果にするまで摘花・摘果を続けていくこと、りんごの病気のこと、80~100個の成果のすべてが売れるレベルになるわけではないこと……知れば知るほど、奥が深い世界です。
さらには残念なことに、台風で、9割のりんごが落果するという体験もしました。

馬ふん堆肥の効用が認められると、使用する農家が増えます。すると、生産できる作物が増えるでしょうから、今後、さらなる商品開発につながります。特色ある産物として、㏚することも可能でしょう。

そして、馬ふん堆肥には、何より「生きている馬」が必要になります。

私たちは、馬ふん堆肥栽培の普及活動をしながら、地元農家とつながり、地元生産品の素晴らしさ・魅力を全国に継続して発信していける商品づくりを目指しています。そしてその商品の売り上げから、引退馬のリトレーニング費用を賄えるシステムを構築したいと考えました。

また、引退馬支援の団体が『農業分野』『食品分野』とつながることで、それまで交わることのなかった客層に向けた㏚が可能になり、互いにとって新たな顧客開拓につながるでしょう。

異業種とつながること、地域とつながること。

このモデルは今後、全国各地でさまざまに形を変えて発展していく可能性があるものです。

長期的な目線で引退馬支援を考えるとき、その活動が『自立した活動』であることも必要となります。その打開策の一つとして、異業種・地域を巻き込んだ、今後のモデルになれるような活動にしていきたいです。

「りんごの木オーナー」は一般募集もかけました。
試験段階のため赤字覚悟の価格設定でしたが、その甲斐あってか、募集開始から4日で満口になるご好評をいただきました。

手応えを感じる一方で、課題も見えてきました。
馬ふん堆肥を購入費用、半年にわたる作業の費用、返礼品であるりんごの配送料、牧場へ送るりんごのプレゼント配送料……実際にやってみると、スタート前には見えていなかった多くの費用が発生するものでしたので、来年はもう少し改善が必要だと感じています。

初年度の募集は35口。
りんご種類は『さんさ』で、2口申し込みの方には、特別に『さんさ』に加えて『ふじ』をご用意させていただきました。

馬ふん堆肥も、どんな評価をいただくか心配していましたが、おかげさまで農家の方からは好評で「いつもと変わらずおいしいりんごができた。回を重ねるごとに土壌がふかふかになるなら、木も健康になるし、今後が楽しみ。馬ふん堆肥栽培が馬の支援になるのなら良いことづくしだね」と、嬉しいコメントをいただいています。

さらには「馬好きの方々から、大好きな馬に贈りたいと生食のりんごを何件もご注文いただきました」といったご報告もいただき、思わぬ喜びを感じたことも。

今後も引き続き、拡大に向けた取り組みをしていきたいと思います。

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