[高松宮記念]メイケイエール、ナムラクレア、アグリ。好メンバーが集結した大混戦の行方は? - 重賞プレビュー

春のG1シリーズ開幕を告げるスプリント決戦
今年は昨年以上の大混戦に!?

いよいよ春のG1シリーズが始まります。
今週からG1レースが開催されていくので楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。まず開催されるのは、高松宮記念は春のスプリント王決定戦。昨年は直線で各馬が横に広がっての大混戦でしたが、内から抜けてきたナランフレグが差し切り勝ち。騎乗した丸田騎手は自身と師匠である宗像師に初のG1制覇をもたらしました。

感動の勝利から1年、昨年以上に実力馬が揃った今年の高松宮記念はどんなレースになるのでしょうか?

前哨戦を振り返る

今年の高松宮記念は昨年以上に実力馬が揃いました。昨年の1~3着馬が今年も出走してきたことに加えて、ピクシーナイトの復帰、明け4歳勢の地力強化、1400Mを中心に使ってきた馬が参戦しています。ここでは各前哨戦の回顧でどんなレースだったかを振り返ります。

シルクロードS  1月29日 中京芝1200M ハンデ戦

勝ちタイム 1分07秒3 (良) 
勝ち馬:ナムラクレア 2着:ファストフォース 3着:マッドクール
前半600M 33秒8  後半800M 33秒5

前半600Mが33秒8に対し、後半600Mが33秒5。前後半のペースの差が少ない持続力勝負でゴールまでペースが落ちませんでした。Bコースに替わったことで内が有利になり、ゴールまで最短距離を通れる内、前が有利の展開になりました。マッドクールがいいペースで逃げていて、ファストフォースがうまく交わして押し切ろうとするところを内からひと伸びして差し切ったナムラクレアの持続力と底力が光ったレースと言えます。

このレースからは勝ったナムラクレア、2着のファストフォース、4着のトウシンマカオ、7着のウインマーベル、12着のキルロードが参戦。勝ったナムラクレアは56.5キロを背負って差し切ったのですから力を見せました。2着のファストフォースはセントウルSの2着に続いての好走。4着のトウシンマカオは58.5キロ、7着のウインマーベルは59キロの斤量が厳しかったでしょうか。G1で巻き返せるかにも注目です。

オーシャンS 3月4日 中山芝1200M

勝ちタイム 1分07秒4 (良)
勝ち馬:ヴェントヴォーチェ 2着:ディヴィナシオン 3着:エイシンスポッター
前半600M 33秒4  後半600M 34秒0

前半600Mが33秒4に対し、後半600Mが34秒0。前半が下り坂の中山芝1200Mなので、前半600M33秒4は中山芝1200Mの重賞としてはそこまで速くないペースと言えます。展開的に中団の馬がやや離れていたので、どちらかというと、中団から後方の馬が脚をためて長くいい脚を使った馬が上位に来たレースでした。内を回った馬よりも外をスムーズに回った差し、追い込み馬が有利の展開になりましたが、外々を回って早め先頭から押し切ったヴェントヴォーチェの持続力が光りました。

このレースからは勝ったヴェントヴォーチェ、2着のディヴィナシオン、9着のナランフレグが参戦。勝ったヴェントヴォーチェは馬群に揉まれるのが苦手な馬で、このレースではルメール騎手が外をスムーズに回して勝ち切りました。今回は乗り替わり、7番枠で揉まれない競馬ができるかどうか、という点にも注目でしょう。昨年の高松宮記念の勝ち馬であるナランフレグは9着。59キロの斤量が響いたと思いますが、G1でどのくらい巻き返せるか、というところです。

阪急杯 2月26日 阪神芝1400M

勝ちタイム 1分19秒5 (良)
勝ち馬:アグリ 2着:ダディーズビビッド 3着:ホウオウアマゾン
前半600M 33秒9  上り4ハロン 45秒6 3ハロン 34秒3

前半600Mが33秒9と1400Mにしてはやや速めのペースで進んで、その後もペースが落ちないハイスピードの持続力勝負。3ハロン目から残り200Mまで1ハロン11秒2か3の速いペースで進みつつもラスト200Mも11秒9と脚がそこまで止まっていない流れのなかで、道中2番手で進んでいたアグリが迫るダディーズビビッドを凌いで押し切りました。3着馬を2馬身半離した1,2着馬の持続力が一枚上だったと見て良いでしょう。

このレースからは勝ったアグリと、2着のダディーズビビッド、7着のグレナディアガーズが参戦。ちなみに、ラスト200Mを除いた1200M通過タイムは1分07秒6。タイム的には2重賞と遜色ないのでスピード負けはしないと見ます。1番人気7着のグレナディアガーズは道中5番手を進みつつも直線で伸びず。速い流れで進んだので脚がたまらなかったようです。高松宮記念でも速い流れで進むと厳しいかもしれません。

ここまで3重賞を見てきましたが、各重賞レベルの高さに明確な差がないのは確かです。
高松宮記念に向けて良い走りをしてきた馬、そうでなかった馬もいます。同じコースだったシルクロードS組が中心になると思いますが、そこに別レース組がどのくらい割って入れるか、というところが焦点になるでしょうか。

高松宮記念 注目馬紹介

ナムラクレア - 前哨戦を快勝してG1制覇へ

まずはメンバーの揃ったシルクロードSを勝ったナムラクレアです。
高松宮記念と同じコースですから価値ある勝利でしたし、牝馬ながら56.5キロの斤量を背負って上り3ハロン32秒9の脚を使って差し切ったのですから強さを見せつけました。

高松宮記念では斤量が軽くなりますし、叩き2戦目の上積みという点でも大きいでしょう。
15番枠をうまく捌くことができれば勝ち負けを期待できるのではないでしょうか。

メイケイエール - ぶっつけを選択した実力派。悲願のG1制覇なるか?

重賞6勝、昨年の高松宮記念5着のメイケイエールは前哨戦を使わず、ぶっつけでG1に挑みます。

気性的な問題がある同馬。実績・実力ともにトップクラスなのは確かですが、とにかく気難しいのが難点で力を出し切れないのがネックでした。昨年の秋は前哨戦であるセントウルSで完勝し、スプリンターズSでも1番人気に推されましたが、中2週が影響したのか力を出し切れまずに敗れています。

そこで今回は前哨戦を使わずにいきなりG1を使うというレース選択をしました。
昨年のシルクロードSでは3番枠から進んで完勝でしたが、今回はそれに近い5番枠。気性的な問題をクリアしてスムーズに走ることができれば、勝ち負け可能でしょう。

アグリ - 4連勝の勢いそのままG1制覇を狙う。

1勝クラスから4連勝で前走の阪急杯を制したアグリにも注目でしょう。

圧巻だったのが前走の阪急杯です。最後ダディーズビビッドに詰め寄られましたが速い流れのまま押し切りました。1200Mへの対応が課題になりますが、阪急杯での走りを見る限りは先行して押し切る形ですので影響が少ないと見ますし、距離短縮になるので最後まで脚が持つ可能性の方が高いでしょう。

重馬場で2着の経験もありますし、左回りも東京芝1600Mですが2戦して1勝2着1回ですので不安が少ないと言えます。あとは高松宮記念というG1の舞台でどうか、という点ですが、管理するのはロードカナロアやカレンチャンといった名スプリンターを育てた安田隆調教師ですから大丈夫でしょう。

初のG1出走でも互角以上に戦えるのではないでしょうか。

ダディーズビビッド - 右回りでも結果を出した充実ぶり。得意の左回りでさらに上向きか。

前哨戦の3レースの中で一番の驚きだったのがダディーズビビッドです。

同馬はこれまで結果を出してきたのは左回りの1200M、1400Mのレースばかりでしたが、右回りの阪急杯でも勝ち馬からクビ差の2着と好走しました。勝ち馬がゴールまでの最短距離を通って完全な勝ちパターンだったのですが、速い流れでも道中4番手の位置を取って勝ち馬に迫ったのですから地力をつけたと言っていいでしょう。

中京コースでの実績もありますし、今回は4番枠と絶好の枠が取れました。
Bコース替わりで内の馬場が通りやすくなれば好勝負可能なのではないでしょうか。

トウシンマカオ - 本番を意識した前走の経験を糧に、上位を目指す。

京阪杯を制し、シルクロードSでは4着だったトウシンマカオの巻き返しにも注目です。

シルクロードSでは58.5キロとやや厳しい斤量設定だったので、鞍上の鮫島駿騎手はG1を見据えた競馬をしたようです。内が有利の展開だったので大外枠も相まって4着という結果でしたが、休み明け、馬体重プラス12キロを考えれば、負けて強しの競馬でした。

今回は斤量差がなくなりますし、渋った馬場もこなせるので力を出し切れるでしょう。今回は14番枠とやや外目に枠に入ってしまいましたが、前走のシルクロードSでの先を見据えた教育がここでいきてくるのは間違いありません。外からの豪快な差し脚に期待しましょう。

ロータスランド - 渋った馬場なら昨年同様の走りを期待。

馬場状態も無視できない今年の高松宮記念。
重馬場巧者を考えておくのは必須と言えます。

昨年の高松宮記念が重馬場だったので、そこで結果を出したロータスランドには期待が集まるでしょう。
昨年はナランフレグが一か八かで内から抜けてこなければ勝っていたであろうロータスランド。やや重~不良の馬場状態では5戦して3勝、2着2回と完璧な重巧者です。重賞の京都牝馬Sも良馬場とはいえ水分を含んだ馬場だったので、良馬場とでは走りに大きな差が出るのが同馬。雨で他馬が力を出せない一方で重馬場になればなるほど力を出せると言えるでしょう。今年は岩田康騎手が騎乗ですが、前走の京都牝馬Sでは大外枠から道中は最後方のインを進み、直線では内ラチ沿いから抜けてくるという素晴らしい立ち回りを見せました。

これまで先行することが多かった同馬ですが、京都牝馬Sでは32秒8という切れを見せています。どうなるか分かりにくい展開の中で自在に立ち回れる器用さは大きな武器です。G1という大舞台で岩田康騎手の大胆な立ち回りで大駆けの可能性も十分あるのではないでしょうか。

どの馬が勝ってもおかしくない、今年の高松宮記念。
G1シーズンの始まりに相応しい大激戦が期待されます。
各馬の能力比較、前哨戦での走り、天候や馬場状態など判断材料が非常に多く、難解なレースではありますが「これぞG1レースだ!」と思える一戦になるでしょう。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす、安全お兄さん、RINOT、バン太、めんま

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