[連載・クワイトファインプロジェクト]特別篇 パールシークレットとクワイトファインの「共闘」

私は本来、コラムのタイトルを興味本位なものにしたくないと思っている。しかし、今回はあえてキャッチーなタイトルにしてみた。一人でも多くの読者の皆様に関心を持っていただきたいためである。

1月18日、種牡馬バールシークレットが検疫を終えて新冠のアロースタッドに移動した。すでにXやYouTubeチャンネルでも紹介されている通り、大狩部牧場下村社長も初めてパールシークレットと対面したわけである。喜びは一入(ひとしお)であろう。

そして、さかのぼること1月11日、私も日々何かとバタバタしているなか無理くり日程を作って北海道に行き、社長の下村さんと話をしてきた。それは偏に、クワイトファインを応援していただいている皆様、そして下村さんの日々の活動を応援されている大狩部牧場ファンの皆様にとって、「クワイトファインプロジェクトの主宰の原田某はパールシークレット輸入をどう思っているのか」という点に、関心が高いことが具体的な数字でひしひしと伝わってきたからである。

具体的な数字とは、令和6年12月5日の下村さんの発表をうけ、翌12月6日に私が緊急生配信でコメントした動画。生配信なので字幕もなく、三脚も忘れたので手持ちだったため画角も見にくい、映像としてのクオリティは最低レベルの動画が、1カ月たった今でも多くの方に見ていただき、すでに5,000回以上、私のチャンネルの最高視聴数を更新しそうな勢いである。またこの動画単体の総視聴時間もすでに500超えであり、ほとんどの視聴者様がワンクリックでなくフルで見ていただいていることになる。映像的には、一人の無名な男がただ17分話しているだけの動画であるにも関わらず。

そして、この動画を通じ、ウマフリでもお馴染みの治郎丸さんからもメッセージをいただいたり等、わずかではあるが競馬サークル内からも反響があった。私が無名・無力な零細馬主であるがゆえに11年間、無視され、罵倒・嘲笑され続けながらも訴え続けてきたことが、下村優樹という現代の鬼才(あえてそう言います)の力でようやく説得力をもって競馬サークルに伝わったのだと思う。

そう、下村さんはとんでもない人である。まさに異才、鬼才と呼ぶべき人である。

1月20日、私と下村さんの対談動画を公開する。いや、対談というより私はほぼインタビュアーでありメインは下村さんである。正直かなり長めの動画にはなっているが、前半で下村さんの人となり(大狩部牧場の経営に携わるまでの経緯など)を語っていただいている。はっきり申せば、彼は生産者としてサラブレッド生産の先々を見据え、かつ馬に対する一途な情熱をもった極めて優秀な人物であり、その知見、行動力は私など足元にも及ばない。そんな彼が立ち上がったことで、クワイトファイン1頭だけで細々とバイアリーターク系の血を守るよりは、未来に大きな希望が見えてきたことは間違いない。少なくとも、パールシークレットは欧州G2勝ち馬であり、クワイトファインのように競走成績を揶揄されることはないからである。

ただ、パールシークレットの存在を今後もっと競馬サークルに浸透させ、ファンの方からの応援も背景にこの動きを力強く進めていくためには、課題があることも事実である。

まず、日本での知名度が正直それほど高くない。私はもちろんかなり前から知っていて「産駒が輸入されないかな」と思っていたが、一般的にはよほど血統に詳しい競馬ファンでなければご存知なかったであろう。

また、年齢的にクワイトファインの1歳上の2009年生まれ16歳、日本で種付けされた産駒が走るのは早くて2028年である。クワイトファインは数少ないながらも林田祥来オーナーの元で育成されているバトルクウ2023、母系が超良血馬ガレットデロワ2023など話題性のある馬たちがスタンバイしているが、パールシークレットは産駒デビューまでの3年間で繁殖牝馬をどう確保するか。年齢を考えると産駒のデビューを待っている余裕はないのも事実である。言うまでもなく日本のオーナー・調教師にはサンデーサイレンス系(後継のディープインパクト系、ハーツクライ系)が今なお圧倒的人気であり、購買力のある有力オーナーやクラブ法人経営者にパールシークレット産駒を持ちたい(自分の繁殖に種付けしたい)と思っていただくにはどのように仕掛けていったらいいのか。

そして、動画の中でも下村さんから、クワイトファインプロジェクトとの「相乗効果」という言い方でエールを送っていただいている。零細馬主にすぎない私が「共闘」というのも烏滸がましいのは百も承知であるが、クワイトファインはとにかく産駒たちの頑張りに期待をしつつ、パールシークレットが生産界に一定の立ち位置を確立するために私にできることは惜しみなく協力していきたい。

最後に、「そうは言ってもクワイトファインは産駒が走っていないじゃないか(初年度産駒テイオーノユメ号は登録抹消し乗馬トレーニング中)」という批判もあると思う。それに関しては、もう1頭の初年度産駒クワイエットエニフ号について、正直時間はかかってしまったが、近々いいご報告ができると思う。今しばらくお待ちいただきたい。

写真:大狩部牧場

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