![[重賞回顧]越後の空に輝く1等星! リアライズシリウスが関東馬では世代最初の重賞ウィナーに~2025年・新潟2歳ステークス~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/08/IMG_1041-scaled.jpeg)
毎年、夏競馬の後半に開催される2歳重賞のひとつである新潟2歳ステークス。過去の勝ち馬にはハープスターやセリフォス、アスコリピチェーノなど、のちにG1タイトルを手にする名馬も多く、登竜門のレースである。
今年は上位3頭の評価が拮抗しており、そのなかで1番人気に推されたのがリアライズシリウスであった。
父に新種牡馬ポエティックフレアを持つ同馬は、東京芝1600mの新馬戦で逃げを打ちながら上り最速で勝利するという鮮烈なデビューを飾っていた。加えて、このレースは東京マイルで1着となった馬との相性が【1-3-1-3】で、複勝率が6割を超えるほど抜群に良い。そんなリアライズシリウスの単勝オッズは2.3倍の1番人気。2,3番人気の2頭が4倍台だったことを考えると、やや抜け出していたと言っていい評価を受けていた。
少し離れて4.3倍の2番人気となっていたのがサノノグレーター。こちらもリアライズシリウスと同じく東京のマイル戦でデビューした馬だが、逃げ切り勝ちを収めたライバルとは違い、こちらは差し切り勝ちを決めている。しかもそれは当時前残り気味だった東京の馬場をものともせず、道中11番手から上り33秒9の末脚で前をまとめて交わし去るという見事な走りだった。
同馬の手綱を取るのは、先月JRA通算100勝を達成した横山琉人騎手。デビュー5年目の若手が、ついに初の重賞タイトルを手にするのではという期待を寄せていた人も少なくなかった。
これに僅差の4.4倍で続いたのが3番人気のフェスティバルヒル。同馬は兄に2025年の皐月賞を制したミュージアムマイルを持つ良血馬で、デビュー前から非常に注目を集めていた1頭である。その期待通りデビュー戦は好位から上り最速で勝利。下した2,3着馬は次走で勝ち上がっているだけに、レースレベルの高さも裏付けている。秋に初勝利を挙げた兄より仕上がりは早そうで、2戦目でいきなりの重賞制覇を成し遂げても不思議はないと思われていた。
以下、デビュー戦でダミアン・レーン騎手を背に4馬身差の快勝劇を飾ったサンアントワーヌ、新潟のマイル戦でデビュー勝ちを飾ったヒルデグリムまでがひと桁オッズで続いていた。
レース概況
ゲートが開くと、1番人気のリアライズシリウスがやや立ち遅れたスタート。しかし鞍上の津村騎手はすぐに相棒を前へ誘導し、逃げたフォトンゲイザーの直後につけた。
立て直してきた本命馬の横にリネンタイリンとタイセイフレッサがつけ、その後ろにタイセイボーグとヒルデグリムが続く。
その間にサンアントワーヌがおり、それを見るようにしてメーゼとサノノグレーター、フェスティバルヒルが後方集団を形成。人気馬の中ではリアライズシリウスのみが先行し、それ以外は後方からレースを進める形となった。
逃げたフォトンゲイザーが刻んだペースは600m35秒7、800m47秒8と時計が出る新潟の芝では緩めのペースで進む。外回りの長い直線に入ったところでリアライズシリウスがじわじわと進出し、内回りとの合流地点で先頭のフォトンゲイザーに並んできた。
それを見て後続も仕掛け始めるが、スローペースで好位から進めたリアライズシリウスはライバルに並ばせる隙を与えない。そのまま1馬身、2馬身と突き放し、最終的には2着のタイセイボーグを4馬身千切ってゴール。スタートの出遅れも何のその、実力を見せつけて重賞初タイトルを手にした。

各馬短評
1着 リアライズシリウス
これで2戦2勝。夏の新潟からクラシックに向けての大物候補が誕生した。
スローペースとはいえ、好位追走から上り33秒4の脚を使えるあたりは大きく評価したいところ。現役時代、セントジェームズパレスステークスなどを制した父、ポエティックフレア譲りの速力を受け継いでいると見て良さそうだ。
ただ、レース後に津村騎手は「スタートが速くなく、ゲートを嫌がった。課題はいっぱいあります」と話している。とはいえ「調教を積んで、これから良くなっていけば」とその後に語っており、今後の成長次第ではまだまだ化ける余地を残していそうだ。
2着 タイセイボーグ
6番人気で2着に好走。前日にJRA通算100勝を決めた田口貫太騎手に導かれ、低評価を覆す走りを見せてくれた。
前走のダリア賞でも2着には入線していたが、同レースからの転戦で新潟2歳ステークスの馬券圏内に入ったのは2010年のマイネルラクリマ以来となる。データブレイクした2歳馬はそのままクラシックの有力候補となることも多いが、果たして同馬はどうか。
3着 フェスティバルヒル
道中は前が塞がる不利もあり後方から。最後は上り32秒5という末脚で後方から追い込んだが、届かずに3着と敗れた。
直線でも前が空かずに何回か進路を変更しており、不完全燃焼と言える競馬だった。ただ、この上り3ハロンは過去10年では最速、左回りの新潟開催となってからでもハープスターに並ぶ1位タイの記録となっており、非凡な能力は感じさせた。兄のミュージアムマイルもひと皮剥けたのは3歳春以降だっただけに、ここから良くなる余地は十分に残していると言っていいだろう。
総評
レース全体のラップは47秒8-45秒6と後傾。スローペースながらラスト800mからの時計の出方がかなり速いだけに、瞬発力勝負となったのは間違いない。
勝利したリアライズシリウスの勝ち時計1分33秒4は、2014年のミュゼスルタンに並ぶ過去最速タイだった。同年の新潟2歳ステークスでは、1,2,4着馬が翌年の3歳G1で掲示板以上に入る活躍を見せている。果たして今回の出走馬たちは、翌春のクラシック路線でどんな走りを見せてくれるだろうか。
新種牡馬のポエティックフレアは初年度からいきなり重賞ウィナーが誕生。受胎率の低さで2025年はプライベート種牡馬となっているが、数少ない子供たちのなかで活躍馬が出たのなら今後に期待は高まる。産駒には父譲りのスピード能力を披露する馬が多く、高速馬場にも強い。秋の中山や東京でもマーク必須の存在となりそうだ。
そして、後続を千切る勝ち方を見せたリアライズシリウスがあそこまでのパフォーマンスができたのは、出遅れからすぐにリカバリーした津村騎手の手腕あってこそ。迷わず出して行ったことでリアライズシリウスにとって展開も有利になり、勝利に繋がった。今回のレースでは一番うまく乗っていたと言っていいのではないだろうか。来年のクラシックに向けて、現時点では一歩抜け出したリアライズシリウス。果たして津村騎手とのコンビでこの先どこまで輝けるか、今後の成長に目が離せなくなりそうだ。

写真:かずーみ