![[重賞回顧]3度目の正直!快速女王がかけた魔法~2026年・スプリンターズS~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/09/202609287.jpeg)
秋の中山開催の最終戦、スプリンターズSから、いよいよ秋のGI戦線が始まる。
昨年8歳にして悲願のGI初制覇を果たしたウインカーネリアンが連覇を狙って参戦。2024年の勝ち馬ルガル、23年の勝ち馬ママコチャと、過去3年の覇者が顔を揃えた。
さらに、昨年のNHKマイルCを制したパンジャタワー、今年の桜花賞馬スターアニスを加え、GI馬は5頭。重賞5勝の快速牝馬ピューロマジック、前走ではそのピューロマジックを破った、目下3連勝中の上がり馬フリッカージャブなど、短距離路線の実力馬も集った。
各馬に待ち受けるのは、雨の影響を受けて内側が傷んだ中山競馬場の芝コース。とはいえ、外を回せば簡単に届くわけでもない。タフな馬場コンディションを味方につけ、秋の短距離王に輝くのはどの人馬か。
16頭のうち、スターアニスとブラックチャリスは3歳馬。そして最年長は9歳のウインカーネリアン。3歳から9歳まで、実に多彩な世代が揃った短距離王決定戦へ向けて、各馬が向こう正面のゲートへと駆け出した。
レース概況
大きく出遅れる馬はなく、外のウインカーネリアン、中央のルガル、内のジューンブレアが好スタート。
向こう正面で各馬がポジションを探るなか、ここは快速牝馬ピューロマジックが持ち前のダッシュ力ですぐさま先頭へ。岩田望来騎手もそのスピードを遮ることなく、迷わず逃げの手に出る。
その動きを確認しながらフリッカージャブが2番手につけ、真っ向勝負を挑んだ。
3列目ではワールズエンドが位置を上げ、その後ろにジューンブレア、ペアポルックス。ウインカーネリアンはこの集団の外につけ、サウンドモリアーナも前を射程圏に入れる。中団外にはパンジャタワー、その後ろではアイサンサン、ママコチャ、スターアニス、ルガル、ブラックチャリスが追走。後方ではレイピア、エーティーマクフィが末脚を温存し、今日はスタートをしっかり出たレッドモンレーヴが、定位置の最後方で脚を溜めた。
600m通過は33秒5。ピューロマジックが刻むペースに離されまいと、西村淳也騎手がフリッカージャブを促して追走する。その外からは三浦皇成騎手とウインカーネリアンも進出を開始。さらにパンジャタワー、ママコチャらも前を追って3、4コーナーを回った。

ピューロマジックは2、3馬身ほどのリードを保ったまま直線へ。追走してきたフリッカージャブが苦しくなる一方、その内から津村明秀騎手とワールズエンドが入れ替わって進出。外ではウインカーネリアンが力強く坂に挑むが、内からサウンドモリアーナも脚を伸ばし、逃げるピューロマジックとの差を詰めていく。
それでも、先頭は最後まで変わらなかった。ピューロマジックがワールズエンドの追撃をクビ差凌ぎ切り、GI初制覇。さらにハナ差でサウンドモリアーナが3着に入り、スターアニスは後方から外を伸びて4着。
最後方から追い込んだレッドモンレーヴが5着に飛び込んだ。

その後ろではウインカーネリアンが6着、エーティーマクフィが7着。
ピューロマジックを追いかけ続けたフリッカージャブは、直線で苦しくなり12着に敗れた。
32秒台の末脚を持つレッドモンレーヴでさえ上がり35秒0を要したタフな馬場。
後続の追撃を最後まで封じ込めたピューロマジックが、秋の短距離王決定戦を鮮やかに逃げ切った。
各馬短評
1着 ピューロマジック 岩田望来騎手
現役屈指のスピード能力を持つピューロマジック。これまで国内外で11人の騎手が手綱を取り、快速逃げを武器に挙げた7勝は、すべて異なる騎手とのコンビで記録してきた。今回は前走セントウルSから継続騎乗となった岩田望来騎手とのコンビで8勝目。
8人目の勝利騎手とともに、ついにGIタイトルへ手が届いた。

すでにスプリント重賞5勝の実績がありながら、なかなか届かなかったスプリンターズSのタイトル。24年は前半600mを32秒1という超ハイペースで飛ばし、25年には控える競馬も覚えたが、いずれも8着に敗れた。
今年も実績馬ながら9番人気。函館スプリントSを逃げ切り、アイビスサマーダッシュを連覇、さらにセントウルS2着とサマースプリントシリーズを3戦走ったうえでの参戦だったことに加え、過去2年結果の出ていない中山、そして雨によって傷んだ馬場。今回も逃げ切るのは容易ではないと見る向きもあっただろう。
それでも、これまでの試行錯誤を経てたどり着いた3度目の挑戦。序盤で一気に先頭へ立つスタイルはそのままに、前半600mを33秒6で駆け、後半600mは35秒6で耐え抜いた。外枠から先頭を奪い、荒れた馬場を走り、過去2年は勝利に届かなかった中山の坂を越えて、最後は後続の追撃を凌ぎ切った。
今年のアイビスサマーダッシュでは、カルストンライトオが保持していた記録を更新する53秒5のJRAレコードを樹立。そしてアイビスサマーダッシュ勝ち馬によるスプリンターズS制覇は、そのカルストンライトオ以来22年ぶりとなった。
夏に先達の記録を超えた快速牝馬が、秋にはその先達と同じGIタイトルを手にした。
2着 ワールズエンド 津村明秀騎手
12戦5勝、2着5回、着外はわずか2回という抜群の安定感を誇り、春にはGI安田記念でも2着。
今年からコンビを組んだ津村明秀騎手とも、すっかり手が合っているように見える。
今回はフリッカージャブの真後ろとなる3番手を積極的に狙う競馬。春の2走よりもスピードが求められるスプリント戦でも臆せず追走し、直線ではフリッカージャブが内1頭分空けたスペースへ。
迷わずそこへ飛び込んだ津村騎手の判断も見事だった。

安田記念、スプリンターズSと、GIでいずれも惜しいクビ差の2着。
それでも今回見せたスピード能力は大きな収穫だろう。
マイルへ戻ったとき、この経験がどのように生きるのか。マイルCSでも楽しみな存在だ。
4着 スターアニス Cルメール騎手
桜花賞を制したスターアニスにとって、春最後の一戦となったオークスは2400m。そこから距離が半分となる1200mのスプリンターズSを秋初戦に選んだことは、新馬戦、未勝利戦で経験済みの距離とはいえ、ファンを驚かせたことだろう。
デビュー以来コンビを組んできた松山弘平騎手が今回はパンジャタワーに騎乗し、スターアニスの鞍上にはC.ルメール騎手。昨夏の小倉開催以来となる1200m戦に、名手がどう対応させるかも見どころだった。
ジョッキーカメラからレースを振り返ると、前を走る人馬が序盤から激しくポジションを取りにいく様子がよく分かる。そのなかでスターアニスも短距離戦のスピードに対応して中団を追走。前半には時速70km近い速度に達しながら、ルメール騎手はコーナーで一度息を入れ、直線では前が開いた外へと持ち出した。

そこからスターアニスは、序盤から脚を使ってきた先行馬をひとつずつかわしていく。直線で記録された速度は時速55km前後。それでも4着まで押し上げたことを考えれば、単純な最高速度以上に、前半の速い流れへ対応しながら最後まで脚を残せたことを評価したい。
オークスでは距離の壁に阻まれたが、今回は1200mのGIで古馬の実績馬を相手に上位争いへ加わった。桜花賞を制したマイルはもちろん、原点ともいえるスプリント戦でも改めて高い適性を示した秋初戦。1200mから1600mを舞台に、スターアニスがどのような走りを見せていくのか。これからの短距離、マイル路線がますます楽しみになる4着だった。
6着 ウインカーネリアン 三浦皇成騎手
昨年、8歳にして悲願のGI初制覇を果たしたウインカーネリアン。
これまで挙げた9勝すべてで手綱を取ってきたのが三浦皇成騎手であり、すべての勝利をともにしてきた人馬だからこそ、クラシックにも挑んだ老雄がたどり着いた初のGIタイトルは、多くのファンの胸を打った。
あれから1年。9歳となった今年は、挑戦者ではなく前年覇者としてスプリンターズSへ帰ってきた。
追い切りから年齢を感じさせないほど元気いっぱいの姿を見せると、レースでも好スタートから先行集団へ。三浦騎手は馬場の傷んだ内側には入れず、7枠14番から出たなりに外を回りながら3、4コーナーで前との差を詰めていく。決して距離損の小さな競馬ではなかったが、直線の坂を越えるところまで2着を争える位置で踏ん張った。

最後は内を通った馬たちにかわされて6着。それでも、外を回した馬たちが伸びあぐねた当日の馬場を考えれば、4コーナーで外から上がってきた姿は着順以上に評価できるものだったのではないだろうか。上がりも勝ったピューロマジックと同じ35秒6にまとめている。
前走キーンランドCでは別定59キロを背負い、今回はGIで先行して外を回りながら最後まで大きく崩れなかった。9歳になっても、その走りから衰えを感じさせる場面は少ない。
昨年は悲願を叶えた挑戦者。今年はそのタイトルを守る王者として、三浦騎手と正面から戦った。連覇こそならなかったが、この人馬が今年もスプリンターズSで見せた走りには、前年覇者としての意地が詰まっていた。
老いてますますなお盛ん。その言葉が、今のウインカーネリアンにはよく似合う。
12着 フリッカージャブ 西村淳也騎手
夏の上がり馬フリッカージャブ。ここまで7勝のうち6勝をともにした松山弘平騎手がパンジャタワーに騎乗するため、今回は西村淳也騎手との新コンビでGIタイトルに挑んだ。ちなみに残る1勝を挙げた三浦皇成騎手も、今回はウインカーネリアンとのコンビを継続している。
これまで自身が逃げ、あるいは逃げ馬の直後を追って抜け出す先行競馬を続けてきた。前走セントウルSでも、スタートを決めてからピューロマジックを先に行かせて2番手へ。逃げる相手を阪神の坂で捉えて重賞連勝を飾った。同じ勝負スタイルで4連勝を狙っての挑戦だった。
今回もピューロマジックの直後をきれいに回って追いかけた。しかし、前走では着差を詰めた直線で、今度は逆に突き放されてしまう。重馬場自体は北九州記念でこなしているだけに、今回は雨そのものより、芝がめくれるほど傷んだ馬場を苦にした敗戦と見たい。ピューロマジックとともにインコースを選んだものの、後半600mには36秒2を要して12着に敗れた。
まだ4歳。来年以降もチャンスがある馬だけに、今回の敗戦からは来春の高松宮記念へ向けた課題も見えてきた。前走でピューロマジックを破った実力があるからこそ、ここで勝負が終わったわけではない。
チャンピオンベルトまで、このままでは終われない。
レース総評
例年になく雨が続き、馬場が荒れた中山競馬場。過去の経験も糧に、それでも「逃げこそ我が道」を突き進んだピューロマジックが、悲願のGI初制覇を達成した。
また、2番手から真っ向勝負を挑んだフリッカージャブ、3番手以下の馬群最内から一瞬の隙を突いたワールズエンド、さらに外を回ると消耗する馬場ながら、それでも意地を見せたウインカーネリアン。秋のGI初戦から、各馬の見どころが満載のレースだった。
そしてピューロマジックの勝利で、安田翔伍調教師はJRA通算200勝目をGIで達成。アジアエクスプレス産駒にとっても、これがJRA・GI初制覇となった。
人馬だけでなく陣営をも祝福する雨が降るなか、令和の快速女王は優勝レイを纏い、自身の「パワー」を信じてくれたファンのもとへ向かった。
中山開催はこれでひと区切り。来週から舞台は東京、京都へと移り、秋競馬はさらに熱を帯びていく。
樫の女王の復帰に天皇盾を巡る戦い、そして三冠を懸けた挑戦。秋のGI戦線は、まだ始まったばかりだ。

写真:@QZygbdf8L1kEB9U、だいゆい、ぼん(@Jordan_Jorvon)
![[今週の競馬]秋の東京、京都開催がスタート!日曜日には伝統の重賞が東西で開催!](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/09/2026092501-300x191.png)
