[重賞回顧]”元祖ベリベリ”決めた大外一気の末脚!!~2026年・天皇賞(秋)~

あっという間に11月を迎え、秋から冬への移ろいを感じる肌寒さとなった。
東京競馬場では、秋古馬三冠の初戦、天皇賞(秋)を迎える。
菊花賞で三歳クラシックの幕が下り、今度は世代を越えた古馬たちの秋の主役争いが始まる。

春は大阪杯、天皇賞(春)を連勝し、宝塚記念でも2着と春古馬三冠に迫ったクロワデュノール。今回はC.デムーロ騎手と新コンビを組む。新馬戦、東京スポーツ杯2歳S、日本ダービーと府中で3勝。初の東京2000m戦でどんな走りを見せるだろうか。春の充実ぶりを、秋古馬初戦から示したい。

昨年覇者マスカレードボールは夏のイギリス遠征以来の復帰戦。C.ルメール騎手とともに、昨年のような唸る末脚を繰り出せるか。枠順も昨年と同じ4枠7番、遠征を経て、実戦勘と末脚の切れ味をどこまで取り戻しているかが見どころだ。

GⅠで4戦連続3着と、勝ち切れずとも大崩れしないダノンデサイルは大外17番枠。
安田翔伍調教師の「どうにかするしかないっしょ」という枠順確定時の言葉どおり、戸崎圭太騎手が大外からどう立ち回るか。「ベリベリ」な騎乗で久々のGⅠ制覇を狙う。

ホープフルS、有馬記念、エリザベス女王杯と3年連続でGⅠを制してきたレガレイラは、岩田望来騎手との新コンビで初めて秋の盾に挑戦。
前2走は苦手な道悪に泣いたが、良馬場で巻き返し、現役最後の秋に4年連続のGⅠ制覇となるか。

ベテラン勢にも物語がある。毎日王冠を制した7歳馬セイウンハーデスは、今回がラストラン。白血病から復帰した西山茂行オーナー、屈腱炎を乗り越えた愛馬、骨折から復帰した幸英明騎手がそろい、最後の大舞台に挑む。西山オーナーは当日朝から府中を訪れており、最後の一戦を見届ける。何より無事に走り切ってほしい。

6歳のシェイクユアハートも今年は金鯱賞、札幌記念とGⅡを2勝。
古川吉洋騎手、宮徹調教師とともに、初めての府中で自慢の末脚を生かし、GⅠ初制覇まで届くか。

唯一の3歳馬リアライズシリウスから、7歳のセイウンハーデス、ジュンブロッサムまで、5世代17頭が集結した。

大欅の向こうに待つ秋の盾を目指し、いざ、府中2000mの決戦へ。

レース概況

ゲートが開くと、各馬は最初のカーブを目指して一斉にポジションを取りに行く。内枠を利したレディネスが横山典弘騎手の積極策でハナに立ち、外からリアライズシリウスが並びかける。ホウオウビスケッツ、コスモキュランダがその後ろに続き、ジョバンニ、エルトンバローズ、クロワデュノールも中団前目を確保。セイウンハーデスはその外、レガレイラは一列後ろの内で脚をため、サクラファレルも中団の外につけた。

後方にはジュンブロッサム、ネブラディスク、シェイクユアハート。さらにシャンパンカラーとダノンデサイルが控え、最後方にはタガノデュード。末脚自慢の馬たちは、直線での勝負に照準を合わせる。

これまで逃げた経験のなかったレディネスが刻んだ前半1000mは58秒8。リアライズシリウスがぴたりと追走し、ホウオウビスケッツ、コスモキュランダ、さらにジョバンニも前を射程に収める。隊列が大きく崩れないまま3、4コーナーを回り、各馬は内外に広がって直線へ向かった。

先頭で粘るレディネスを目がけ、後続が一斉に追い出す。岩田望来騎手のレガレイラは、最内を進む岩田康誠騎手のホウオウビスケッツの後ろから内の進路を選択。一方、C.デムーロ騎手のクロワデュノールは先行馬群の外へ持ち出そうとするが、その間に内が開き、レガレイラが先に加速した。

残り400mを過ぎてレディネスが苦しくなると、内からレガレイラ、外からセイウンハーデス、そのさらに外からネブラディスクが伸びてくる。クロワデュノールも馬群の間を割ろうとするが、抜け出すまでに時間を要した。

しかし、馬群の外ではダノンデサイルが一頭ずつ確実に交わしていた。戸崎圭太騎手の手綱に応えて雄大なストライドを繰り出し、一完歩ごとに前との差を詰めていく。残り200m付近で先に抜け出したネブラディスクを捉えると、一発、二発と鞭が入るたびに差を広げ、最後は2馬身半差の完勝。勝ち時計1分56秒7、上がり3ハロン32秒9。GⅠで4戦連続3着だった鬱憤を晴らす、鮮烈な追い込みだった。

2着は馬群を捌いたネブラディスク、3着レガレイラ。最後方から追い込んだタガノデュードが4着に入り、クロワデュノールが5着、シェイクユアハートが6着。4着から6着まではハナ、アタマ差の接戦だった。

各馬短評

1着 ダノンデサイル 戸崎圭太騎手

右側だけのチークピーシーズとシャドーロールを顔に纏い、大外17番枠からのスタートとなったダノンデサイル。

昨年秋からGⅠで4戦連続3着と善戦を続けていた雄大な栗毛馬が、府中の西日に輝く走りを披露した。

天皇賞(秋)を大外枠から制したのは、父方の祖父シンボリクリスエス以来23年ぶり。奇しくも祖父は18番、孫は17番からの勝利となり、「17番」からの優勝はグレード制導入後初の快挙である。

大外枠から無理に位置を取りに行かず、序盤は馬のリズムを優先して後方に控えた。雨の宝塚記念でも猛然と前を追いかけた末脚を、ダービー、ドバイシーマクラシックを制した左回りの舞台で存分に解き放つ。

4コーナー出口で一瞬外へ膨らみかけたのもご愛嬌。内でやり合う馬たちを横目に、馬場の真ん中から目いっぱいストライドを伸ばし、2馬身半差の完勝を決めた。

枠順発表時に安田翔伍調教師が放った「どうにかするしかないっしょ!」。
レース後の言葉は「どうにかしてくれました」だった。末脚を人馬とも信じた結果の結実である。

次走は順調ならジャパンCだろうか。昨年3着のリベンジへ、最高のスタートを切った。

2着 ネブラディスク 川田将雅騎手

半姉はGⅠ4勝の名牝リスグラシュー。父がドゥラメンテに替わったネブラディスクは、新馬戦勝利後、共同通信杯、毎日杯、京都新聞杯と三度の世代重賞に挑むも一歩及ばず、クラシックには出走できなかった。

その後は自己条件から出直し、前走の博多Sを勝ってオープン入り。
初めて挑む古馬重賞が、いきなり天皇賞(秋)となった。

前走が現3勝クラスの馬が秋の盾で馬券圏内に入るのは39年ぶり、連対はグレード制導入後初の快挙。
福永祐一調教師がネブラディスクの可能性に懸けて送り出した挑戦は、見事に実を結んだ。

レースでは後方から進め、直線ではレガレイラの後ろから外へ進路を求めた川田騎手。
セイウンハーデスの外から抜け出すと、一時は先頭に立ち、勝ち馬に交わされてからも懸命に脚を伸ばした。

昨年の共同通信杯で敗れたマスカレードボールとの約1年9か月ぶりの再戦。
今回は馬群を抜け出せなかったかつての勝ち馬に先着し、大きな成長を示した。
半姉リスグラシューも5歳からの快進撃が印象的な1頭だっただけに、これからが楽しみだ。

3着 レガレイラ 岩田望来騎手

2歳でホープフルS、3歳で有馬記念、4歳でエリザベス女王杯と、毎年GⅠタイトルを積み重ねてきたレガレイラ。タフな競馬にも対応できる一方で、緩い馬場では自慢の末脚を発揮しきれず、2年続けて宝塚記念で敗れた。前走オールカマーも重馬場だっただけに、良馬場で迎えた今回は巻き返しが期待された。

戸崎圭太騎手はダノンデサイル、C.ルメール騎手はマスカレードボールに騎乗し、新たに手綱を託されたのは岩田望来騎手。内枠を生かして中団のインで脚をため、直線では先行馬が外へ寄った隙を見逃さず、最内からの抜け出しを敢行した。

外を豪快に伸びたダノンデサイルには及ばなかったものの、馬群の内から鋭く脚を伸ばして3着。
初コンビでその末脚を引き出し、5歳秋も一線級の実力が健在であることを証明した。

今年が現役最後の秋となるレガレイラ。再び有馬記念か、ダービーの雪辱を期すジャパンCか。
次走の発表が待ち遠しい。

4着 タガノデュード M.デムーロ騎手

今年すでに6戦を走ってきたタフガイ。長く手綱を取った古川吉洋騎手は同じ宮徹厩舎のシェイクユアハートに騎乗するため、今回はM.デムーロ騎手との初コンビで挑んだ。

2月の小倉大賞典で重賞初制覇を果たすと、大阪杯4着、天皇賞(春)6着、重馬場の宝塚記念5着。
前走チャレンジCこそ11着だったが、春古馬三冠を完走して着実に戦績を重ねてきた。

今回は17頭立ての最後方に構え、直線の末脚勝負に徹した。ダノンデサイルに次ぐ上がり33秒3を繰り出し、14番人気の低評価を覆す4着。弟C.デムーロ騎手が跨るクロワデュノールにもハナ差で先着した。

追い込みに徹する競馬はM.デムーロ騎手とも噛み合った印象で、重賞1勝で終わる馬ではないだろう。
今後も大舞台で、その末脚を見せてほしい。

5着 クロワデュノール C.デムーロ騎手

大外から差し切ったダノンデサイルや、最後方から追い込みに徹したタガノデュードとは対照的に、最内1番枠ゆえの難しさに直面したのがクロワデュノールだった。

新馬戦と東京スポーツ杯2歳Sで1800m戦を制し、今春は大阪杯、天皇賞(春)を連勝。
宝塚記念でも2着と、春古馬三冠にあと一歩まで迫った実績馬が、デビュー以来11戦手綱を取った北村友一騎手からC.デムーロ騎手へ乗り替わって挑んだ一戦だった。

道中は6番手のインを確保したものの、直線では先行馬群が壁となり、思うように動けない。
内で機を待ったレガレイラが一足先に抜け、馬群を捌いたネブラディスク、大外から伸びたダノンデサイルにも後れを取った。

勝ち馬から0秒7差、4着タガノデュードとはハナ差の5着。C.デムーロ騎手は休み明けによる反応の鈍さにも言及しており、進路が開けば、そこから突き抜ける姿を陣営も想定していたのかもしれない。
春の強さを知るだけに、次こそ本来の走りを見せてほしい。

レース総評

今年の天皇賞(秋)は、レディネスが刻んだ前半1000m58秒8の流れから、各騎手の進路選択が明暗を分ける一戦となった。内を突いたレガレイラ、馬群を割ったネブラディスク、最後方から追い込んだタガノデュード。そして、大外からすべてをのみ込んだダノンデサイル。

23年前、大外18番から秋の盾を制したのは、ダノンデサイルの祖父シンボリクリスエス。
その孫もまた大外17番から、同じ栄冠を手にした。

この日の府中には、2012年の覇者エイシンフラッシュも来場。M.デムーロ騎手、内田博幸騎手と再会し、天覧競馬での最敬礼が再現された。
漆黒の帝王シンボリクリスエス、閃光の切れ味を誇ったエイシンフラッシュら黒鹿毛の名馬たちとは異なり、今年の勝者ダノンデサイルは筋骨隆々、明るい栗毛の馬体を西日に輝かせ、雄大なストライドで馬群の大外から頂点目掛けて駆け抜けた。

時代を超えた名馬たちの記憶に、新たな勝者が加わった秋の府中。
来週はGⅠこそないが、ジャパンC、そして有馬記念へと続いていく秋古馬三冠路線へ、熱戦が続くことに期待しよう。

写真:突撃砲、ぼん(@Jordan_Jorvon)

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