![[重賞回顧]樫の女王は終わらない! カムニャック、府中で再び輝く~2026年・アイルランドT~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/202610131.jpeg)
ようやく秋らしい行楽日和が訪れた東京競馬場には、5万人を超える競馬ファンが詰めかけた。
同じ頃、プロ野球ではクライマックスシリーズが開催されるなど、各地のスポーツイベントも大盛況。
スポーツの日を含めた三連休、思い思いの休日を楽しむ人々にとって、絶好のお出かけ日和となった。
そんな賑わいに包まれた府中で行われたのは、秋の女王決定戦へとつながる一戦、アイルランドT(GⅡ)である。
府中牝馬Sは同じレース条件で夏に開催時期を移行し、秋のレースがアイルランドTに改称されてから2回目の開催となる。昨年覇者のラヴァンダはこのレースが初の重賞タイトルで、今年も連覇を狙って参戦。前走中京記念からの重賞連勝を狙っている。
東京芝1800mを舞台とするこのレースで、まず注目したいのは先行争いだ。昨年、そして今年の府中牝馬Sを連覇したセキトバイーストに対し、逃げて今夏の関屋記念2着に好走したクランフォードがどう出るか。互いに持ち味を発揮したい両馬が、レースの主導権を握ることになるのだろうか。
一方、実績面ではカムニャックとクイーンズウォーク。春のヴィクトリアマイルでそれぞれ2着、3着と好走した両馬。勝ったエンブロイダリーには及ばなかったものの、いずれも本来はマイルより長い距離に適性を持つタイプだ。今回は1800mへの距離延長で、さらなる良さを発揮することが期待された。
そして、C.ルメール騎手を背に臨むジョスランも見逃せない。1月の小倉牝馬Sで重賞初制覇を飾り、ヴィクトリアマイルでは8着。全兄には年度代表馬エフフォーリアがおり、前日にはその産駒アゴルディーノがサウジアラビアロイヤルCを制したばかり。血統の勢いにも後押しされ、再び重賞の舞台で存在感を示せるか。
勢いのある新興勢力から実績十分の古馬まで、個性豊かな牝馬16頭が顔を揃えたアイルランドT。優勝馬にはエリザベス女王杯への優先出走権が与えられる。
快晴の府中から、決戦の淀に向かう牝馬たちの秋が、いま始まる。
レース概況
スタートでムイとウイントワイライトが後手を踏んだ一方、勢いよく飛び出したのはクランフォード。
外からワタシマツワも積極的に前を狙い、その2頭の間からセキトバイーストが進出してきた。
最初の400mでスピードに乗ったセキトバイーストが先頭に立ち、2番手にクランフォード、続いてルージュソリテール、ワタシマツワが追走。5番手付近にチェルビアット、その2馬身ほど後ろの6番手外目にジョスランがつけ、カムニャックとクイーンズウォークが並んで続く。
クイーンズウォークはコーナー手前で早くもポジションを上げ、ジョスランの内側へと進出した。
そこから2〜3馬身離れてニシノティアモ、ミラビリスマジック、ラヴァンダが続き、さらに後方にはカネラフィーナとミアネーロ。ムイ、ハワイアンティアモ、最後方のウイントワイライトまで、縦長の隊列で3コーナーへ向かっていく。
セキトバイーストの前半1000m通過は57秒9。晴天の良馬場を考慮しても速いペースで後続を引き離し、そのまま先頭で直線を迎えた。
逃げるセキトバイーストを目がけ、まずはルメール騎手のジョスランが外から追い出しを開始。その背後から川田将雅騎手のカムニャックが追撃し、さらに後方では連覇を狙うラヴァンダも末脚を伸ばしてきた。
直線残り300m付近でセキトバイーストの脚色が鈍ると、代わって先頭に立ったのはジョスラン。
後続を突き放して押し切りを図るが、その背後からカムニャックが大きなストライドで迫る。
残り50m付近でジョスランに並びかけたカムニャックは、ゴールまでに半馬身抜け出して優勝。
昨年のローズS以来、1年1ヶ月ぶりとなる勝利で重賞4勝目を挙げ、エリザベス女王杯への優先出走権を手にした。

2着ジョスランは追い込んだラヴァンダに2馬身差をつけ、先行勢を射程に入れた位置から抜け出す競馬を披露。連覇を狙ったラヴァンダが3着、後方から脚を伸ばしたカネラフィーナとミアネーロが4着、5着に続いた。
一方、速い流れを作ったセキトバイーストは15着、序盤に先手を争ったクランフォードは最下位の16着。前を行った馬たちには厳しい展開となった。
各馬短評
1着 カムニャック 川田将雅騎手
これまで東京競馬場での戦績は2勝、2着1回、着外1回。唯一掲示板を外したアルテミスSは、スローペースからの末脚比べとなった一戦だった。
昨年のローズSを1分43秒5で走破したように、スピード決着にはめっぽう強い。今年春の阪神牝馬S、ヴィクトリアマイルでもエンブロイダリーに敗れはしたものの、自身も勝ち馬と同じ1分31秒台で走破している。今回はセキトバイーストが作った速い流れを味方につけ、得意とする持続力勝負で鮮やかに差し切った。

一方、昨年の秋華賞では激しくイレ込み、16着に大敗。能力の高さと同時に、気性面の難しさも持ち合わせているだけに、5万人を超えるファンが集まった府中で平常心を保てるか、気掛かりな部分もあった。しかし、返し馬で見せた堂々とした姿、そして今回の走りを振り返れば、その心配は杞憂に終わったと言えるだろう。
次走はおそらく、昨年苦杯をなめた淀の舞台。スタンド前発走となるだけに、再び大観衆を前にしても落ち着いてレースを迎えられるかが課題となる。
オークス馬による古馬重賞制覇は、21年の京都記念を制したラヴズオンリーユー以来。樫の女王が再びGⅠの栄冠を手にする日へ、確かな一歩を踏み出した。
2着 ジョスラン C.ルメール騎手
全兄エフフォーリアは21年の年度代表馬、半姉ペリファーニアも桜花賞に挑んだ良血馬だ。
脚元を含めた体質面の不安もあり、兄姉のようにキャロットクラブで募集されることはなかったが、その後も大切に育てられ、レースを絞って一戦入魂。
3歳秋には紫苑S2着で秋華賞への優先出走権を獲得すると、本番でも4着に好走した。
そこから今年1月まで休養して挑んだ小倉牝馬S重賞初制覇。このレースと秋華賞への切符を掴んだ紫苑Sの2走でコンビを組んだルメール騎手を再び鞍上に迎え、強豪揃う中で4番人気に支持されての出走になった。
前でやり合う先行馬を見る6番手付近からの競馬となり、序盤に先行集団を無理に追いかけなかったところは、さすがルメール騎手。馬自身もヴィクトリアマイルでは8着ながら最後の直線で盛り返しており、速い流れを経験していたことが今回につながったのかもしれない。「カムニャックより前、でも先行馬群の後ろ」という絶妙なポジションから、一気の抜け出しを狙った。
最後は半馬身差し切られたものの、先に動いて目標にされた分もあっただろう。カムニャックより斤量が1キロ軽かったとはいえ、自身より前にいた馬たちが軒並み失速した展開を考えれば、誇っていい2着だった。
前走のヴィクトリアマイルを除いて1800-2000m戦を走ってきたこともあり、エリザベス女王杯杯に挑戦する場合は、未知なる距離への対応がポイントになりそうだ。レースを絞って使われてきた馬だけに、次走は今年の集大成となるかもしれない。今回の好走を受けてルメール騎手とのコンビ継続にも期待がかかる。
同斤量となる本番で、カムニャックとの半馬身差をどこまで詰められるか、楽しみにしたい。
3着 ラヴァンダ 横山和生騎手
これまでの21戦中18戦で手綱を取ってきた主戦・岩田望来騎手が騎乗停止となり、今回は横山和生騎手との新コンビで参戦。昨年制した舞台に、前日も重賞を勝った鞍上を迎え、連覇への期待がかかった。
これまで逃げ、先行、差しと幅広い位置取りを経験してきたラヴァンダだが、今回は末脚を温存する競馬を選択。カムニャックの後ろ、いつでも脚を使える外目のポジションから直線へ向かってきた。
最後は上がり33秒6の末脚で3着に食い込んだものの、一列前にいたカムニャックは33秒4、さらに前のジョスランも33秒7でまとめている。速い流れになったとはいえ、前の2頭を差し切るには、もう一列前で運ぶ必要があったかもしれない。

それでも後方から追い込んできた馬たちには先着を許さず、前年覇者らしい末脚を披露。
連覇こそ逃したが、地力の高さは十分に示した。
3歳時の秋華賞は4着、4歳時のマイルCSは16着。京都競馬場では未勝利戦の勝利や3勝クラスの2着がある一方、GⅠではまだ結果を残せていない。
ただし、過去2度の京都でのGⅠ挑戦はいずれも先行する競馬だった。
後方に控えても末脚を発揮できる今なら、また違う走りが見られるかもしれない。次走はエリザベス女王杯か、それともマイルCSか。秋の大舞台で、どのような競馬を見せるのか注目したい。
15着 セキトバイースト 浜中俊騎手
昨年、そして今年と「夏の府中牝馬S」を連覇しているコース巧者のセキトバイースト。
昨年のこのレースではスローペースからの末脚比べとなり、10着に泣いた。今回は前に行きたいクランフォードやワタシマツワがいる状況。しかし浜中俊騎手の決断は、その2頭の間から先頭を奪い、ハイペースで逃げて粘り込む競馬だった。
実際、最初の200〜400mは全体で最も速いラップを刻んでおり、先頭に立つまでに相応の脚を使ったことがうかがえる。それでもペースを緩めることなく、前半1000mを57秒9で通過。ほかの先行馬たちが苦しくなる中、残り300m付近まで後続を引き離して先頭を守り続けた。
最後こそ馬群に飲まれて15着に敗れたが、開幕週の良馬場で後続との末脚比べに持ち込むよりも、自らの持ち味で勝負する道を選んだ。重賞を勝った時と同じように、先んじて仕掛け、追いかけてくる実力馬たちを迎え撃ったのである。
結果として、速い流れに対応しながら最後まで脚を使えたカムニャック、ジョスラン、ラヴァンダが上位を占めた。しかし、それはセキトバイーストが自ら作り出した展開でもあった。
もしクランフォードやワタシマツワに先手を譲っていたら、また違う結果になっていたかもしれない。だが、得意の府中1800mで自身の勝ち筋を追求した今回の逃げを、着順だけで否定することはできない。
府中牝馬S連覇を果たしたものの意地を見せた、堂々たる逃走劇だった。
レース総評
前週の毎日王冠はホウオウビスケッツが逃げ粘り、セイウンハーデスとのベテラン同士の一騎打ちになった。一方、今回のアイルランドTは、ハイペースを刻んで逃げたセキトバイーストを捉えるべくスパート合戦となり、純粋な切れ味はもちろん、直線で脚を伸ばし続ける持続力も問われる一戦だった。その中で4歳世代の重賞勝ち馬2頭がワンツーフィニッシュ。それぞれの長所を発揮したレースだったと言えるだろう。
セキトバイーストがレースを引っ張ったことで、カムニャックにとっては気持ちよく前を追いかけられる展開となった。最後は先行馬群の直後から綺麗に抜け出したジョスランを捉え切ってのゴール。1年以上勝利から遠ざかっていたトンネルを抜け、樫の女王が復活を果たした。
しかし、この勝利を語るうえで忘れてはならないのが、共に競ったライバルたちの存在だ。先に抜け出して勝負を挑んだジョスラン、後方から迫った前年覇者ラヴァンダ、そして自ら厳しいペースを刻んだセキトバイースト。それぞれが持ち味を発揮したからこそ、カムニャックの勝利も一層価値のあるものになったのではないだろうか。
この秋、同世代の二冠牝馬エンブロイダリーはマイルCSへの出走を予定しており、別路線を目指す。
カムニャックは同じ4歳世代を代表する牝馬として、エリザベス女王杯で再びのGⅠ戴冠を目指すことになる。
一方、今年のオークス馬ジュウリョクピエロも秋華賞を回避し、エリザベス女王杯に向けて調整中。さらに、2024年のオークス馬チェルヴィニアも参戦を予定している。昨年はマイルCSへ向かったため、出走すれば今回がエリザベス女王杯初挑戦。チェルヴィニアが出走登録してくれば、3世代の樫の女王が淀の舞台に顔を揃えるかもしれない。昨年、エリザベス女王杯に出走した馬の多くが別路線へ進むか、すでに引退していることもあり、今年の女王決定戦はいつもと違う顔ぶれとなりそうだ。
快晴の府中で再び輝いたカムニャック。次なる舞台では、どんな女王たちとの競演が待っているだろうか。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)
![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]馬運車と福ちゃんと僕(シーズン2-38)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/20260121-300x198.jpg)
![[リーディング]C.ルメール騎手の独走に福永祐一厩舎の偉業、そして天国に届ける重賞勝利…まさに「競馬日和」の3日間開催!](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/202610134-1-300x200.jpeg)