[重賞回顧]いざ三冠へ、またひとつ勝ち方を増やして~2026年・神戸新聞杯~

関東の中山競馬場では台風25号の影響を受け、開催順延となった祝日月曜日。
対して関西の阪神競馬場では、朝まで残っていた雲の隙間から次第に青空が顔を覗かせていた。

ちょうど1Rに出走するポカポカヨウキがパドックに姿を現した頃から陽射しも届き始め、その名の通り「ポカポカ陽気」の晴天へと変わっていった。

この日の阪神競馬場の入場人員は36,039名。フリーパスデーだったことに加え、メインレースの神戸新聞杯で二冠馬ロブチェンが復帰する。その姿を一目見ようと競馬場へ足を運んだファンも多かったことだろう。

さて、そのロブチェンは叩き良化型と評されることもある。

皐月賞の前哨戦として出走した共同通信杯では敗れたものの、本番の皐月賞ではレコードタイムで逃げ切り勝ち。続く日本ダービーでは一転、ピンク帽子の8枠から後方に構え、直線で差し切る自在なレースぶりを披露して二冠を達成した。

2歳GIのホープフルステークスと合わせて「星3つ」のゼッケンを背負い、次に目指すのは三冠制覇。
その前哨戦となるこの舞台で、どのような走りを見せるのかに注目が集まった。

神戸新聞杯は、セントライト記念と同様に3着までの馬へ菊花賞の優先出走権が与えられる。

その切符を手にするため、阪神競馬場への遠征を決めたのがグリーンエナジーだ。日本ダービーでは直前に熱発がありながら大舞台へ出走し、16着。オーナーにとって初となるダービー出走を無事完走で終えた。
京成杯を制した際に見せた末脚を、今度は阪神競馬場で繰り出すことができるだろうか。

西の有力馬には、京都新聞杯を勝ったコンジェスタス、毎日杯を制したアルトラムスがいる。

ダービーでのロブチェンとの差は0秒4。その差をひと夏越して埋めることができるか。コンジェスタスは西村淳也騎手が継続して手綱を取り、アルトラムスは皐月賞、日本ダービーでコンビを組んだ横山武史騎手から、毎日杯をともに制した岩田望来騎手との再コンビで二冠馬を迎え撃つ。

さらに、夏競馬で勝ち星を重ねてきた馬たちにとっては、春の実績馬との初対戦でもある。

ロブチェンが二冠馬の力を見せるのか。春の実績馬たちがその差を埋めるのか。
あるいは、これまで未対戦だった新星が名乗りを上げるのか。

菊花賞へと続く3枚の切符を懸けて、11頭の人馬がゲートへと進んでいく。

あるものは悠然と、あるものは猛々しさを見せながら。

レース概況

スタートは各馬ばらつき、ロブチェン、アルトラムス、エムズビギンは一完歩目がやや遅れ気味。カムアップローゼスが内ラチ沿いへ寄れたことでアルトラムスは無理に行かせず後方へ。
またエムズビギンも、スタート直後から武豊騎手が抑えて後方へ下げた。

最内のロブチェンは出たなりで外の馬たちの出方をうかがう。その外ではエイシンインアウト、ゴーラッキー、カムアップローゼスが前を狙い、さらにカフジエメンタールも先行争いへ。
大外枠のショウナンハヤナミも前のグループに加わろうと追走する。

その後ろにロブチェン、すぐ外にはコンジェスタス。1列後ろにアルトラムスとグリーンエナジーがいて、そこから2馬身ほど離れてシートゥサミット。エムズビギンが最後方を進み、11頭は最初の坂を越えていく。

1コーナーへ最初に入ったのはゴーラッキーとルメール騎手。続いてエイシンインアウト、外にはカフジエメンタールがいて、鞍上の坂井瑠星騎手が内にいるロブチェンの位置を確かめるようなしぐさも見られた。

そのロブチェンのすぐ外にはコンジェスタスが並びかけ、二冠馬は序盤、内からの追走を余儀なくされる。

最初のコーナーを11頭中ちょうど中団となる6番手で回ったロブチェン。そして800mを通過したあたりで、レースに大きな動きが生まれた。

後方にいたシートゥサミットと酒井学騎手が、一気に先頭まで位置を押し上げたのだ。

ここからペースメーカーはシートゥサミットへ交代。
前半1000mは61秒9と、ゆったりとした流れで通過する。

その動きの中で、ロブチェンはあえて抑えて位置を下げ、コンジェスタスとショウナンハヤナミを先へ行かせた。さらに後方からアルトラムスが並んでくると、こちらにも内を譲り、1000m地点では後方3番手の外。序盤とは異なるポジションで後半戦を迎えることになった。

各馬が位置を入れ替えたことで隊列が縦に伸び、ロブチェンの周囲にもスペースが生まれる。後方にグリーンエナジーとエムズビギンを見る形で、仕掛けどころを待ちながら外回りコースへ向かっていく。

残り1000m。先頭をキープするシートゥサミットにペースメイクを任せ、ゴーラッキーが2番手。その2馬身ほど後ろにエイシンインアウト、カムアップローゼス、ショウナンハヤナミらが続く。

そして今度はカフジエメンタール、コンジェスタスを内側に見る形で、ロブチェンの重心がぐっと下がった。最後方のエムズビギンもその動きを追いかける。

一方、内にいるグリーンエナジーとアルトラムスは前の馬たちとの兼ね合いもあり、すぐには動き出せない。コーナーでは進路が開く瞬間を待つことになった。

残り600m。エムズビギンがロブチェンの真後ろまで迫ったところで、後方にいた各馬の選択が分かれていく。

グリーンエナジーと戸崎圭太騎手は外へ。そしてアルトラムスと岩田望来騎手はそのまま内からの勝負を選んだ。前ではコンジェスタスと西村淳也騎手も追い出しを開始。それぞれが勝負する進路を探しながら、最後のコーナーを回っていく。

直線へ入ると、馬群は内外いっぱいに広がった。

手応えが一杯となったカフジエメンタールが後退し、内ではシートゥサミットが粘る。
その後ろからゴーラッキーが追い、さらにコンジェスタスも空いたところを狙う。

内回りと外回りの合流点、ラチの切れ目が見えたところで、アルトラムスは最内を選択。
ロブチェンとエムズビギンは引き続き外から前を追い、グリーンエナジーはここで進路を内へ切り替えた。

前にいたゴーラッキーやエイシンインアウトが追いかけても、シートゥサミットはなかなか止まらない。

しかし、その争いのさらに外から、ロブチェンがやってきた。
馬体を低く沈めるようなフォームで、前との差を詰めていく。

外からはエムズビギンが迫る中、内のエイシンインアウト、ゴーラッキー、コンジェスタスらを一頭ずつ交わしていく。それでも前では、シートゥサミットが懸命に粘っていた。

競り合う相手がいれば、もうひと伸びするのがロブチェンだ。

ゴール前で一頭、また一頭と捉え、ついに先頭へ。
しかし、その視界の最内に、インを捌いて抜け出してきたアルトラムスの姿は見えていただろうか。

最後のわずか数完歩。
最内を突いたアルトラムスと、大外から追い込んだロブチェンが、ほとんど並んでゴールへ飛び込んだ。

そしてストップモーションの映像に映し出されたのは、目一杯に身体を伸ばしたロブチェンが、ハナ差だけアルトラムスより前へ出た瞬間だった。

アルトラムスは内外へ広がった馬群から阪神コースのラチの切れ目を見つけ、コンジェスタスの動きも利用しながら最内を捌いて2着。
そして、後方から一気に先頭まで押し上げ、自らレースの流れを作ったシートゥサミットが、ゴーラッキー、エムズビギンの追撃を凌いで3着。11頭立ての11番人気で、大仕事をやってのけた。

この上位3頭が菊花賞への優先出走権を獲得。

セントライト記念組ではサヴォアフェールが出走回避を表明しているため、優先出走権を持って菊花賞へ向かう馬は現時点で5頭。残された出走枠は、収得賞金順によってメンバーが決まっていく。

各馬短評

1着 ロブチェン 松山弘平騎手

皐月賞では自らハイペースで逃げ、レコードタイムで勝利した。

一方、日本ダービーでは外枠から終始外目の後方を追走し、最後は末脚を伸ばして先頭まで届いた。

まったく異なる形で春の二冠を制したロブチェン。そして秋初戦では、そのどちらとも違う競馬に挑むことになった。

最内枠から、流れはスローペース。しかも周囲にはライバルがいる。

序盤からコンジェスタスがすぐ外まで位置を押し上げ、簡単には外へ出られない。後ろにはアルトラムスやエムズビギンらが仕掛けどころを待っている。内にいたまま勝負どころを迎えれば、抜け出すのは容易ではない隊列だった。

しかし、シートゥサミットが向こう正面から一気に位置を押し上げたことで、レースが動く。

ここでロブチェンと松山弘平騎手は、前へついていくのではなく一度ポジションを下げた。コンジェスタスらを先に行かせ、その後ろから外へ進路を移すことに成功する。

その際、後ろにいたグリーンエナジーが折り合いを重視してロブチェンを追いかけず、戸崎圭太騎手が我慢を選択したことも、外へ持ち出すうえでは幸いした。

前へ行くことだけがポジション争いではない。勝負できる場所を手に入れるために、一度後ろへ下がる選択もある。自在性を見せてきたロブチェンらしい対応だった。

コーナーでは、余力のなくなったカフジエメンタールやカムアップローゼスらを外から交わしていく。
その途中には手前が逆になり、外へ膨れる場面もあった。

それでも勢いは止まらない。

さらに外にはエムズビギン。内にはショウナンハヤナミ、エイシンインアウト、ゴーラッキー。
そして前では、向こう正面から自らレースを動かしたシートゥサミットがまだ粘っている。

一頭、また一頭。
前にいる馬を目標に、ロブチェンはゴールまで追い続けた。

その一方、最内から抜け出したアルトラムスは、先行馬たちを挟んだロブチェンの死角から迫っていた。

それでも最後にハナだけ前へ出た。

ロブチェンにとって幸いだったのは、前の馬たちが簡単には止まらなかったことかもしれない。逃げ粘るシートゥサミットがいて、外にはエムズビギンもいる。最後まで競う相手がいたことで、ロブチェンはゴール前まで一頭ずつ競り落とすように脚を伸ばし続けた。

皐月賞では、自ら前に立って後続を退けた。

日本ダービーでは、外から末脚を伸ばして全馬を捕らえた。

そして神戸新聞杯では、スローペースの最内枠から一度位置を下げ、進路を作り直し、最後は馬群の外から一頭ずつ競り落として勝った。

着差は、わずかハナ。
しかしそのハナ差によって、ロブチェンはいよいよ三冠へ王手をかけた。

もっとも、3000mの菊花賞で今回と同じ状況が待っているとは限らない。

今回のように最後まで競う相手が前にいてくれるのか。あるいは先行勢が早々に苦しくなり、今度は皐月賞のように自ら勝負を決めに行かなければならないのか。

距離が延びれば、ライバルの動きに応戦するだけではなく、3000m先のゴールから逆算して自分から動くタイミングを決める場面も出てくるだろう。

道中はできる限り脚を温存し、勝負どころでは自ら長く脚を使い、最後にはダービーで見せた末脚を残す。

言うなれば、皐月賞と日本ダービーの合わせ技。

春二冠で見せた異なる強さに、神戸新聞杯で改めて示した自在性を加え、ロブチェンは最後の一冠、京都芝3000mへ向かう。

2着 アルトラムス 岩田望来騎手

社台RHの勝負服をまとい、唯一皐月賞、日本ダービーの両方へ出走してクラシック戦線を戦ってきたアルトラムス。

春のGIで手綱を取った横山武史騎手から、毎日杯をともに制した岩田望来騎手へと手が戻り、秋初戦を迎えた。

隣枠の馬との兼ね合いもあってスタートから好位置を確保することはできなかったが、そこから思い切って内にこだわったことが、最後の末脚へとつながった。

向正面では、ロブチェンが外へ持ち出すために空けた内へ潜り込む。
そして勝負どころを迎えても、その選択は変わらなかった。

逃げるシートゥサミット、追いかけるゴーラッキー。その間をコンジェスタスが突破しようとする動きを見ると、岩田望来騎手が求めたのはさらに内。
内回りと外回りの合流点で開いた最内へ進路を取り、そこからアルトラムスの末脚を引き出した。

結果的にこれは、ロブチェンのストロングポイントにも持ち込ませない競馬となった。

外を回ったロブチェンから見れば、アルトラムスは最後まで先行馬たちを挟んだ馬群の中。前の馬を一頭ずつ追いかけ、競り合うことでさらに伸びる二冠馬に対し、その死角となる最内からゴールを目指した。

大胆でありながら、道中から積み重ねてきたロスのない進路取りの延長線上でもあった。
それでハナ差の2着なら、人馬を責める理由はないだろう。

惜しむらくは、外を回ったロブチェンにも最後まで前を追いかける目標があったことか。
アルトラムス自身が二冠馬との直接的な競り合いを避けても、ロブチェンは前にいる馬を目標に減速することなくゴールまで脚を伸ばしてきた。

それでも道中は折り合いをつけ、無理なく位置を確保しながら仕掛けどころを待ち、要所ではロスの少ない進路を選び続けた。それに応えられる折り合いと機動力は、さすが春のクラシックを戦ってきた馬である。

血統表だけを見れば、3000mへの距離延長を不安視する見方もあるかもしれない。
しかし、今回見せた折り合いと操縦性は、菊花賞という長丁場へ向かううえでひとつの武器になる。

何より、二冠馬との差はわずかハナ。

岩田望来騎手が主戦を務めるゾロアストロは新潟記念を制して中距離路線へ向かう予定で、アルトラムスとのコンビが菊花賞でも継続するのであれば、このハナ差は次へ向けた大きな材料になる。

今度こそロブチェンに並ばれる前に、勝負を決める。

毎日杯をともに制した人馬が再びコンビを組み、春には届かなかった二冠馬をあと一歩まで追い詰めた。その続きを、京都芝3000mでも見てみたい。

3着 シートゥサミット 酒井学騎手

シートゥサミットがまとう勝負服は、芦毛の二冠馬ゴールドシップと同じもの。オーナーの小林英一ホールディングスにとって、ゴールドシップ以来となる菊花賞への切符をもたらしたのがシートゥサミットだ。

11頭中11番人気。その評価には、今回のメンバーで唯一となる格上挑戦だったことも関係していただろう。

二冠馬ロブチェンを筆頭に、重賞実績のある馬や、夏競馬で1勝クラス、2勝クラスと勝ち上がってきた馬たちが顔を揃える中、シートゥサミットの前走は6月の1勝クラスで2着。実績だけを並べれば、分が悪く見えるのも無理はなかった。

しかし、この馬には自分たちの戦い方があった。

芝2400mへ距離を延ばした近3走では、後方でじっと脚を溜め続けるのではなく、レース後半から自ら前へ進出し、そのまま粘り込みを図る競馬を続けていた。
その形で京都芝2400mの未勝利戦を勝ち上がり、続く阪神芝2400mの1勝クラスでは2着。今回と同じ阪神競馬場で、長い距離を自ら動いて戦う経験をすでに積んでいたのだ。

だからこそ、神戸新聞杯で酒井学騎手が後方から一気に先頭まで押し上げたことも、単なる奇襲ではなかったのだろう。

格上の実績馬たちを相手にしても、それまでこの人馬が続けてきた戦い方を変えなかった。

そして直線では、後続が次々と迫っても簡単には止まらない。最後は二冠馬ロブチェンにもゴール前まで追わせ、ゴーラッキーやエムズビギンの追撃を凌いで3着。格上挑戦ながら後続を抑え込んだスタミナと、それを信じて自らレースを動かしたこの人馬の競馬が、菊花賞への切符につながった。

すでに関西圏の芝2400mで経験を重ねてきただけに、さらに距離が延びる菊花賞では、このコンビがどこからレースを動かすのかも見どころになる。

スタンド前か、向こう正面か。それとも、かつて同じ勝負服をまとったゴールドシップを思わせるような競馬を見せるのか。

相手が強くなっても、自分たちの戦い方は変えなかった。

我が道を貫いて手にした菊花賞への切符。そのスタイルを本番でも存分に発揮してほしいコンビだ。

6着 コンジェスタス 西村淳也騎手

このコンビのレース運びからは、「前哨戦でいかにロブチェンに楽をさせないか」を考えていたようにも映った。

まずは最初のスタンド前。最内枠からスタートしたロブチェンに対し、コンジェスタスはそのすぐ外まで位置を押し上げた。二冠馬が簡単に外へ持ち出せる形にはせず、序盤はその進路を一度封じるような位置を取った。

そして、この位置関係が巡り巡って別の馬にも影響する。

ロブチェンがその後ポジションを下げると、その後ろから来たアルトラムスが空いた内へ入った。結果として、最後に最内からロブチェンへハナ差まで迫ることになるアルトラムスの進路取りにもつながっていった。

一方のコンジェスタスは、向こう正面では前でレースを作るゴーラッキーやシートゥサミットを見ながら、自分が先に抜け出すタイミングを狙える位置を確保していた。

しかし、ここから思うようにはいかなかった。

前にはエイシンインアウトとカムアップローゼスがいて、ゴーラッキーの直後まで押し上げることができない。その間に内の後方にはアルトラムスが入り、ロブチェンが外へ進路を切り替えて仕掛けどころを探る一方、コンジェスタスは内から前が開くのを待つ形になった。

ロブチェンが外から進出したタイミングで最内にスペースが生まれると、コーナリングを利用してシートゥサミットの直後まで位置を押し上げる。

それでも、そこから明確な進路がなかなか開かない。

直線では前を行く馬たちの間を狙いながら追い出したものの、京都新聞杯で大外から見せたような長く脚を使う形には持ち込めず、コンジェスタスのスパートを十分に引き出せないまま6着となった。

今回の結果だけで、この馬の秋を判断するのはまだ早いだろう。

本来は長く脚を使えることがコンジェスタスの強み。菊花賞へ向かうのであれば、京都の下り坂も利用しながらロングスパートへ持ち込み、ロブチェンより前から先行勢を捕まえに行く形もひとつの勝負手になる。

そのためには、先行馬をいつ捕まえるのか。そして後ろにいるロブチェンが動くより先に、どこから自分のスパートを始めるのか。

今回はまだ秋初戦でもある。デビューからレースを重ねるごとに減っていた馬体も、ひと夏を越して戻ってきた。

この一戦を叩いたことで状態がどこまで上向くのか。
その仕上がりを踏まえ、西村淳也騎手が今度はどの位置から勝負を仕掛けるのかを見てみたい。

春に重賞を制した京都へ戻り、そこで改めて二冠馬ロブチェンとの勝負だ。

8着 グリーンエナジー 戸崎圭太騎手

本馬場入場の時点から少し力むようなところを見せながら、ゲートへ向かっていったグリーンエナジー。

日本ダービーでは直前の熱発を経て出走し、結果は16着。それでも直線を迎えるまではロブチェンの後方でレースを進め、最後こそ追い上げることは叶わなかったものの、春の大舞台を最後まで走り切った。

しかし、京成杯を鮮やかな末脚で制したこの馬が目指す高みは、もう一段先にある。

重賞実績のある中山競馬場で行われるセントライト記念ではなく、二冠馬ロブチェンも出走する神戸新聞杯を秋初戦に選択。これまで関東圏でのみ出走してきたグリーンエナジーにとっては、初めての関西遠征も経験する一戦となった。

レースでは道中で力む場面があり、向こう正面でも頭が上がる様子を見せていた。本来であれば後方でじっくりと構え、末脚を温存したいところだが、戸崎圭太騎手はまず折り合いを優先。ロブチェンの動きに素直についていったエムズビギンとは対照的に、こちらは無理に追いかけることなく我慢させた。

その分、直線では距離のロスを抑えられる内へ進路を切り替える。前を捌きながら最後まで脚を伸ばし、記録した上がり33秒7は出走馬中3位。勝ったロブチェン、2着アルトラムスからも0秒4差と、大きく離されてはいない。

皐月賞では勝ち馬から0秒5差、日本ダービーでは1秒5差。そして秋初戦の今回は0秒4差。
着順こそ8着だったが、春の二冠よりも勝ち馬との距離を縮めて秋をスタートできたことは、次へ向けた材料になるだろう。

一方、それだけの末脚を残していながら、気性面から後方で我慢するレース運びになったことには課題も残る。

菊花賞へ向かうのであれば、舞台はさらに距離が延びる3000m。今回以上に道中の折り合いが重要になる。できれば前に馬を置いて落ち着いて追走し、勝負どころまで余力を温存できる形に持ち込みたい。

本番へ出走すれば、皐月賞、日本ダービーに続く三冠競走皆勤となる。

まずは春の激戦を経て、元気に秋初戦へ戻ってきた。そして課題を残しながらも、春より勝ち馬との着差を詰めた。次はその課題をひとつずつ解消しながら、三冠最後の舞台へ向けてどこまで状態を引き上げられるか。ここからの仕上げにも注目したい。

レース総評

11頭立ての少頭数ながら、神戸新聞杯は各馬の思惑が幾度も交錯する見応えのある一戦となった。

後方から一気に先頭へ立ち、自分たちが続けてきた競馬を格上の相手にも貫いたシートゥサミット。
ロブチェンの外を取り、二冠馬に簡単な競馬をさせまいとするような位置から勝負したコンジェスタス。
道中の折り合いに苦労しながらも我慢を重ね、最後は内から末脚を伸ばしたグリーンエナジー。
そして、ロスの少ない進路を選び続け、最後までロブチェンの死角となる最内からハナ差まで迫ったアルトラムス。

それぞれが違う形で自分たちの競馬を試みた結果、最後に待っていたのは、やはり二冠馬だった。
ロブチェンにとっても、決して簡単な秋初戦ではなかった。
最内枠からスローペースの馬群に入り、序盤には外への進路も限定されたが、それでも一度位置を下げることで自ら進路を作り直し、最後は外から一頭ずつ交わして先頭へ。

最内から迫ったアルトラムスとの差は、わずかハナだった。
この着差をどう見るかは、菊花賞へ向けてひとつのポイントになるだろう。

アルトラムスはロスを抑え、最後まで二冠馬との直接的な競り合いを避けながら末脚を使い切った。
それでも、外を回ったロブチェンが最後にわずかだけ前へ出た。

ならば本番で求められるのは、神戸新聞杯とまったく同じ競馬の再現ではないのかもしれない。
シートゥサミットは、どこから自分のロングスパートを始めるのか。
コンジェスタスは、京都新聞杯を制した舞台で、長く使える脚をどこから解放するのか。
アルトラムスは、道中でどこまで脚を温存し、ロブチェンに並ばれる前に勝負を決められるのか。

そしてセントライト記念組にも、長く脚を使えるアスクエジンバラや、操縦性を武器に立ち回れるジャスティンシカゴ、後方から鋭い末脚を繰り出すゴーイントゥスカイらがいる。

ロブチェンを待っていては、最後に競り落とされるかもしれない。
かといって早く動けば、京都芝3000mでは最後まで脚が持つ保証もない。

二冠馬をどこで意識し、どこから自分の勝負を始めるのか。
神戸新聞杯とセントライト記念を終えたことで、最後の一冠へ向けた各馬の課題と武器が少しずつ見えてきた。

もちろん、迎え撃つロブチェンにも3000mという未知の距離が待っている。

前にいる馬を競り落とすだけでは、まだゴールが遠いかもしれない。
皐月賞のように自ら勝負を動かしながら、ダービーのように最後の末脚まで残す必要があるかもしれない。

皐月賞と日本ダービーの合わせ技。
そこへ神戸新聞杯で見せた自在性まで加えることができれば、三冠への道は開けてくる。

春に築かれた二冠馬とライバルたちの差は、ひと夏を越えてどこまで縮まったのか。

そして京都芝3000mでは、誰が最初に勝負を動かすのか。
三冠を目指すロブチェンと、それぞれの勝ち筋を携えて挑むライバルたち。
最後の一冠は、もうすぐそこまで来ている。

写真:mosan

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