![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]現代に舞い降りたエアグルーヴ(シーズン2-35)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/09/202609221.jpg)
長友厩舎に無事に辿り着いたものの、福ちゃんは決して順調とは言えません。長距離輸送で減った馬体が回復するのを待ってから、軽い調教をスタートしました。長友厩舎から小向トレセンまで、信号を渡って馬場に出るのですが、初めての場所ということもあり興奮気味で、止まったり、バックしたり、右回転したりと大変だったそうです。想定の範囲内ですが、砂を被ると嫌がることも分かりましたし、他馬に後ろから抜かれると怯むようです。
数日後、「疝痛(腹痛)になってしまいました」と報告が入りました。新しい環境に慣れたかと思いきや、何だかんだストレスを感じていたのではないでしょうか。すぐにお腹の動きは正常に戻ったのですが、しばらく様子を見るために運動はお休み。数日空けて再び乗り始めたものの、疝痛を治すために絶食をしたことで馬体重はさらに減り、元気がなかったようです。
そうこうしているうちに、今度は台風が本州に上陸します。小向トレセンは馬場が悪くなりやすく、脚元に何かあってはいけないので、数日間は調教を控えるようにしました。その時点でのドコフクカゼの馬体重を聞くと、「460kgです。絶食期間があって減っていましたが、順調に回復してきています!」とすぐに教えてくれました。しっかり把握していて、さすが長友調教師だと感じました。
なかなか馬体が回復しないばかりか、乗り込みも頓挫してしまい、目標にしていた6月19日の能力試験はパスすることに。無理をして能力試験に持って行っても、かえって入れ込んだり、本来の力を発揮できないかもしれません。何より、ドコフクカゼが競馬場で走ることに嫌なイメージを持ってしまうのは避けたいところです。皆さんのサポートのおかげで、せっかくここまで来られたのですから、慌てる必要は全くありません。
追い打ちをかけるように、左前肢の深管に痛みが出たそうです。志村さんから左前が硬いと報告を受け、獣医師に診てもらったところ、深管に痛みがあったので消炎剤を施して、2日間ほど休ませることにしました。
福ちゃんは左前肢を極端に開くようにして歩く(走る)ようです。そのため、今後も左前肢に負担がかかって、痛みが出る可能性が高いとのこと。たしかにウォーキング動画を見たときに、ずいぶん左前肢の球節から下部分を外に向けて歩くなと感じたことはありました。ただそれは一過性のものであり、走ると問題ないのだと納得していましたが、走るときも左に開くようです。弱点が分かっていれば、気をつけることができますし、少しの違和感に気づいてくれて、大きな怪我や事故になる前に未然に防いでくれた志村さんもさすがです。
良い報告もたくさんあります。キャンターに入れば問題なく普通に走れること、左回りも右回りも問題なく、ゲート練習も意外にも優秀で、大人しく駐立でき、ゲートからスムーズに出られたそうです。こうして良いことも悪いことも、長友先生はこまめに報告してくれます。それだけ馬を毎日しっかりと自分の目で見ているということです。調教師にとって、馬を自分の目で見る以上に大切な仕事があるでしょうか。
福ちゃんに乗ってくれている志村さんからも、ドコフクカゼに跨った感想がLINEで届きます。夜中に届くものは、(たぶん志村さんは酔っぱらっているので)かなり盛られている可能性が高いのですが、「福ちゃん、乗った感じの第一印象は京都の芝2400mに適性がありそうです。平坦の芝1800~2400という感じがします。トニービンやノーザンテーストが主張しています。あくまでも乗り味の感想です」と教えてくれました。
「将来的には芝を使いたいです。古き良き時計のかかる芝に最も適性がありそうです。福ちゃん、ダイナカールです!たぶんこっち寄りの馬体を受け継いでいます」と言いつつ、エアグルーヴの写真を送ってきました。これは間違いなく飲んでるなと思いつつも(笑)、そうやって志村さんが福ちゃんのことを褒めてくれるのが嬉しくて、「時を超えて、エアグルーヴが川崎に舞い降りたのですね!」と僕が乗っかると、「そうです!現代に舞い降りたエアグルーヴ福ちゃん。僕はフローラSを目標に進めていきたいです!フローラSが不良馬場になったら、オークスの権利を獲れるかもしれません。これが今、僕が福ちゃんから感じる、最大限に描く未来です。夢は大きく持ってもいいです。そして、僕はそれができないとも全く思いません。今までクラシックに進んだ馬の背中もたくさん経験してきているので」と夢を語ってくれました(実際に志村さんは京都大賞典やカタールのアミールTを勝ったディープモンスターの育成をしていたこともあります)。こうして自分の騎乗馬を熱く想ってくれることが志村さんの素晴らしいところです。彼は心の底から純粋なのです。
「川崎はどうしてもテンのダッシュ力が重要なので、適性外かもしれませんが、入着すれば未来が見えてきます。まずは川崎で勝ち上がるための調教をしていきますね」と志村さんは急に冷静になって締めくくりました。あれっ、酔っぱらっていなかったのか?と僕は思い直し、今ここで語られた夢物語がまんざらでもなく聞こえてきました。福ちゃんことドコフクカゼが、府中の芝2000mで行われるフローラSで権利を獲り、オークスに出走している未来を思い描いてしまったのです。
(次回へ続く→)

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