![[重賞回顧]レコードホルダー復活!!人馬目指すは秋の盾~2026年・毎日王冠~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/202610071-scaled.jpeg)
10月の中央競馬は東京、京都の2場開催。その開幕を飾る重賞、毎日王冠には秋の天皇賞を目指す17頭が集結した。優勝馬には天皇賞(秋)への優先出走権が与えられ、これまで幾多の名勝負が繰り広げられてきた伝統のGIIも、今年で77回目を迎える。
注目は、3歳春のクラシック路線から菊花賞ではなく中距離路線へ舵を切ったリアライズシリウス、ライヒスアドラー、アドマイヤクワッズの3頭。世代戦で上位の実力を示してきた若駒たちが、歴戦の古馬を相手にどこまで戦えるのか。その秋初戦が、この毎日王冠となった。
一方、古馬勢にも実力馬が揃った。
東京芝1800mのエプソムCをレコードタイムで走破したセイウンハーデス。
7歳となった今年も大阪杯5着、安田記念4着とGIで安定して上位に好走している。病から復活を果たした西山茂行オーナーへ、王冠を届けることはできるだろうか。
昨年のクラシックで好走し、その後も毎日王冠3着、中京記念3着と上位争いを続けるサトノシャイニング。高速決着から力の要る馬場までこなす4歳馬は、昨年に続く2度目の参戦となる。今回がまだ8戦目というフレッシュさも魅力だ。
さらに、今年はダート戦にも挑戦したホウオウビスケッツ。毎日王冠では一昨年、昨年と2年連続2着。GIIIは函館記念を制している一方、GIIでは毎日王冠と金鯱賞で計3度の2着があり、今度こそのタイトルを狙う。この馬をよく知る岩田康誠騎手が、どのようなペースを刻むのかにも注目したい。
秋の大一番へ向けた第一歩。良馬場の東京芝コースへ、17頭が駆け出した。
レース概況
スタート直後に接触のあったクルゼイロドスル、ロングランは後方からの競馬に。内枠から好発進を決めたリアライズシリウス、外から逃げの手に出たホウオウビスケッツが前を目指し、逃げるホウオウビスケッツをリアライズシリウスが2番手で追いかける形で先行2頭が決まった。3番手にはランスオブカオスとダノンエアズロック。その後ろには最内からポジションをキープしたセイウンハーデス、シャンパンカラーが続く。
逃げるホウオウビスケッツは12秒台のラップを淡々と刻む。馬群の中ではサトノシャイニングやドラゴンブーストの手綱が抑えられる一方、その合間を縫ってレディネスが先行ポジションへと向かっていく。
馬群の後方にはエルトンバローズとライヒスアドラー。少し離れてロングラン、レイニング、最後方にレガーロデルシエロとクルゼイロドスルが続き、向こう正面を駆ける。
前半1000mを59秒8で通過したホウオウビスケッツは、ここから少しずつ加速を開始。後半800mのスパート勝負に出る。大欅を越えて、先頭はホウオウビスケッツ、追いかけるリアライズシリウス。その後ろにはダノンエアズロックやセイウンハーデスの姿も見え、さらにレディネスも位置を上げてコーナーへ入っていく。
前半で脚を溜めたホウオウビスケッツは、直線でも余力を残してラストスパートへ。2番手のリアライズシリウスとの差を広げ、一度はセーフティーリードにも見えた。しかし、その内から1頭。内ラチ沿いを進んだセイウンハーデスが、残り200mから一気に差を詰める。
逃げ切りを狙うホウオウビスケッツがゴールへ飛び込む寸前、ハナ差だけ前へ出たセイウンハーデスが間に合い、毎日王冠を勝ち取った。

そして3着には直線で馬群の外へ切り替えたレディネスが入線。4着のレイニングは上がり32秒9の末脚を繰り出したが、逃げたホウオウビスケッツ自身が上がり33秒9でまとめたレースを、後方から差し切るのは容易ではなかった。
3歳馬はライヒスアドラーが5着で最先着。リアライズシリウスは7着、アドマイヤクワッズは17着に終わり、上位3頭を占めた古馬たちが力を見せる結果となった。
各馬短評
1着 セイウンハーデス 幸英明騎手
最内枠を活かし、リアライズシリウス、ホウオウビスケッツを見る位置で勝機を待ったセイウンハーデス。最後は粘るホウオウビスケッツを上がり33秒5の末脚で捉え、初のGIIタイトルを手にした。
2023年の七夕賞を制した後、屈腱炎により1年半近い休養を余儀なくされた。そこから復帰すると、25年エプソムCでは前半1000m57秒3という速い流れを中団から差し切ってレコード勝ち。そして同じ東京芝1800mの毎日王冠では一転して落ち着いた流れに対応し、重賞3勝目を挙げた。

その歩みを長く支えてきたのが幸英明騎手だ。一部のレースを除き、デビュー当初から多くのレースで手綱を取り続けてきた。若い頃には折り合いの難しさも見せた馬が、今回はホウオウビスケッツのペースに合わせてじっくりと勝機を待ち、最後の一瞬で差し切った。
7歳を迎えた今だからこそ見せられた「古豪の意地」。次走の天皇賞(秋)では、昨年叶わなかった幸騎手とのコンビで、GIの舞台へ挑む姿を楽しみにしたい。
2着 ホウオウビスケッツ 岩田康誠騎手
毎日王冠はこれで3年連続の2着。しかし、4番人気で迎えた一昨年、2番人気に推された昨年とは異なり、この1年は2桁着順が続き、6歳を迎えた今回は9番人気まで評価を落としていた。
それでも、自らの形に持ち込んだときのしぶとさを、この馬に長く跨る岩田康誠騎手は熟知している。
重馬場でも良馬場でも、スローでもハイペースでも、自らのリズムで逃げ、先行策を打ってきた馬。今回はリアライズシリウスが2番手に控れたことで主導権を握り、直線まで余力を残して運ぶことができた。
そして、やはりワンターンの東京芝1800mは、この馬の良さを存分に活かせる舞台なのだろう。直線を迎えても岩田康騎手の手綱には余裕があり、追い出してからも上がり33秒9でまとめた。最後は同じ東京芝1800mの重賞勝ち馬セイウンハーデスにハナ差かわされたものの、若い馬たちを封じ込め、この舞台を得意とする2頭の力比べへ持ち込んだ走りは見事だった。
例年通りのローテーションなら、次走はこちらも天皇賞(秋)だろう。自らペースを作るのか、それとも他馬の出方を見るのか。レース展開の鍵を握るこの馬にとって、大一番へ向けた良い助走になったことだろう。
3着 レディネス 横山典弘騎手
新馬戦を勝った直後に弥生賞ディープインパクト記念へ挑み、そこで敗れてなおプリンシパルSを勝ち切り、わずか4戦目で日本ダービー出走を果たしたレディネス。今年の札幌記念では古馬重賞初挑戦ながら3着に好走し、毎日王冠でもその素質を改めて示した。
そしてそんなレディネスの能力を引き出した横山典弘騎手の騎乗は見事。
最初の200mでは中団付近にいたが、次の200mでセイウンハーデスの外まで自然に位置を上げる。コーナーではセイウンハーデスとダノンエアズロックを先に行かせ、出口では外のランスオブカオスの手応えを確認。直線へ入って数完歩でダノンエアズロックのさらに外へ持ち出し、前を狙える進路を確保してからラストスパートに入った。
最後は内から上がり最速で追い込んだレイニングをクビ差抑えて3着。先行馬に有利な展開を味方につけながら、そのなかでもレディネスが力を発揮しやすい位置と進路を選び続けた横山典騎手の巧さが光る一戦だった。

陣営は早くからこの馬を大きな舞台へ送り出し、横山典騎手も巴賞以外のレースで手綱を取ってきた。まだ重賞タイトルこそないものの、札幌記念、毎日王冠と強敵の揃うGIIで2戦連続3着。良馬場で持ち味を発揮した今回の走りを見れば、再びGIへ挑む道も見えてくる。
まずは一つ重賞タイトルを狙うのか、それともさらなる強敵へ挑むのか。
嬉しい悩みを抱えて、秋を迎えることになった。
5着 ライヒスアドラー 佐々木大輔騎手
ライヒスアドラーは前年の東京スポーツ杯2歳Sで、上がり32秒9の強烈な末脚を披露。高速レコード決着となった皐月賞でも、前を行くロブチェン、リアライズシリウスを追って3着に好走した。ダービーでは8着に敗れたものの、続く自己条件ではカニキュルとの末脚比べを制し、古馬との初対戦を勝利してこの舞台に挑んだ。
今回はスタートで後手を踏み、いつもより後方からの競馬となった。結果的に前にいた馬たちが上位を占める展開となり、直線でもすぐには外へ持ち出せない苦しいレース運び。それでも馬群の中から脚を伸ばし、最内を立ち回ったレイニングとの4着争いまで持ち込んだ。3/4馬身差の5着なら、悲観する内容ではないだろう。
パトロールビデオを見返すと、ゲート内では落ち着かない素振りも見せていた。
今回の内容を考えれば、次走へ向けた課題の一つはスタートになりそうだ。
直線で速い末脚を繰り出せることは、すでに世代戦で証明している。古馬を相手に思うような位置を取れなかった今回も5着まで追い上げたのなら、位置取り一つでさらに上を目指せるはずだ。
7着 リアライズシリウス 津村明秀騎手
1番人気に支持されたリアライズシリウス。新潟2歳S、共同通信杯を制して左回りへの適性を示し、皐月賞2着、ダービーでも自ら逃げて7着と、津村明秀騎手とのコンビで大舞台を経験してきた。
距離適性を考慮して中距離路線へ進み、春に重賞を制した東京を秋初戦に選んだ。
今回はホウオウビスケッツを2番手から追走したが、直線では前との差を詰めるどころか、逆に離されてしまった。ホウオウビスケッツが自ら上がり33秒9でまとめ、後続にも33秒台の末脚を使う馬が続出しただけに、リアライズシリウスにとっては厳しい瞬発力勝負になった。

自身も新潟2歳Sでは上がり33秒4を記録しているものの、基本的には34秒台の脚を長く使って結果を残してきた馬。休み明け初戦から離されながらも上がり34.1秒でまとめたことをまずは評価したい。
展開と休み明けが重なった7着、ここを一度使ったことで状態がどう上向くのか、次走の仕上がりを改めて見てみたい。
レース総評
今年の毎日王冠は、3歳馬の勢いに対し、幾多のレースを経験してきたベテラン古馬、そして現役最年長騎手となった横山典弘騎手の「円熟味」が勝るレースとなった。
休み明けだったリアライズシリウス、ゲートで後手を踏み、苦しい道中から最後は馬群を抜け出してきたライヒスアドラーも、着順ほど悲観する必要はないだろう。
今回見えた課題を次走で克服できるか、真価が試されるのはここからだ。
この1年、結果が出なくても自らのレーススタイルを崩さず、今回も最後まで逃げ粘ったホウオウビスケッツも見事だった。
しかし、その最後に迫ったセイウンハーデスは、自らも屈腱炎との闘いから戻ってきた馬。鞍上の幸英明騎手にとっても踵、肋骨など複数箇所の骨折からの復活であり、何より白血病と闘病していた西山オーナーが東京競馬場の馬主席へ戻ってきて、目の前で見届けた重賞勝利でもある。
長く競馬界で勝負を続けてきた三者、そのすべての意地を見せた勝利として記憶されるレースだろう。
セイウンハーデスは次走の天皇賞(秋)をラストランとし、その後は西山牧場で種牡馬入りする予定であることを西山オーナーが発表している。
若馬にとっては7歳のベテランホースへ挑む最後の機会。
そしてセイウンハーデスにとっては、これまで6度挑んできたGIへの最後のチャレンジとなる。
それぞれの勝負の秋へ向けて、長く続いた雨もいよいよ止み、この先は晴れが続く見込みだ。
この日走った人馬の次の舞台も、晴れやかなものになることを願いたい。

写真:@pfmpspsm、ぼん(@Jordan_Jorvon)、うみ
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