2着、3着で奮闘する馬の魅力

あなたはどんな馬が好きですか?

勝ち続ける馬?
豪快な末脚を見せてくれる馬?
大逃げする馬?

様々なタイプの馬が候補にあがるでしょう。

この記事では、競馬をギャンブルとしてではなく「スポーツ」として楽しんでいる私の視点から「2着、3着で奮闘する馬」の魅力をお伝えしていきます。個人的な感覚ですが、2・3着で奮闘している馬には根強いファンが多いような気がします。
今回はその中から、ステイゴールド・ナリタトップロード・リスグラシューの3頭をピックアップして、その魅力を伝えていきます。

記憶に新しいリスグラシューについては「え? 何で? GIを3連勝したのに?」という意見もあるかもしれません。
しかし生涯戦績は1着7回 2着8回 3着4回で、最後のG13連勝を除けば1着4回と、2・3着の合計である「12回」とはトリプルスコアになります。
しかも2018年のエリザベス女王杯を勝つまでは、G1勝ちがなかったのです。

その2018年の戦績といえば、東京新聞杯(G3)こそ勝ちましたが、阪神牝馬S3着・ヴィクトリアマイル2着・安田記念8着・府中牝馬2着と惜しくも勝ちきれない日々が続いていました。だからこそ当時エリザベス女王杯を勝利した時には、リスグラシューファンとして喜びもひとしおでした。

そこから一気に開花したかといえばそういうわけでもなく、エリザベス女王杯の次走かあらは、香港ヴァーズ・金鯱賞共に2着、QE2世Cで3着とまた勝ち切れなくなり、ファンは悶絶することに。
そこからようやくG1を3連勝して引退となりましたが、この3戦も走り終えるまでは期待と不安が入り混じり、祈るように応援していました。
こんな気持ちで応援したのは、ステイゴールド・ナリタトップロードの現役時代以来かもしれません。

その、ナリタトップロード。
最近の馬であれば、キセキがイメージとして近いのではないでしょうか。
2着・3着の合計はリスグラシューを上回る14回にのぼります。
しかしリスグラシューよりG1勝ちは早く、クラシックの1冠である菊花賞を勝っているのです。
同期にテイエムオペラオーやメイショウドトウがいたせいか、G1勝ちはこの1勝のみ。しかし7歳(当時)まで現役を続け、ファンに夢を見せ続けてくれました。

種牡馬になって3世代を残した後、訃報が届いてしまいます。
もっともっとトップロードの子供達と夢の続きを見たかったファンも多かったのではないでしょうか?
少なくとも私は、もっと長く、たくさんの子供達の活躍を見たかったです。

そして最後は、今も夢の続きをみせてくれているステイゴールドについて触れてみます。
現役時代はなんと、50戦も走っています。その中で1着7回 2着12回 3着8回と、数字上ではぶっちぎり(!?)の戦績です(もちろん、褒めています!)。
そしてステイゴールドこそが「2着3着で奮闘する馬」の中興の祖だと、私は考えています。
私が2着3着で奮闘する馬を好きになったのも、ステイゴールドがきっかけでした。

ステイゴールドに関しての紹介は他の方が記事にしているので詳しい説明などは省略させていただきますが、ステイゴールドの競走馬としての破天荒ぶりを知っても最後には「憎めない」といってファンを増やす不思議な魅力を持った馬だったと思います。
現役のステイゴールドを応援していた私としては、引退して種牡馬になってからもたくさんの感動をもらいました。競馬界では一番の盛り上がりをみせる牡馬クラシック3冠において、オルフェーヴルという歴史的三冠馬を輩出。サンデーサイレンス産駒種牡馬として、初めての牡馬三冠を達成したのが、ステイゴールドなのです。
現役時代に自らの力で種牡馬への道を開いたように、種牡馬としても素晴らしい子供達を残し応援してくれたファンへの恩返しのように夢の続きを見せてくれる──それだけでも感謝しきれません。

最後になりますが、人も馬も……勝ち続けることは不可能なのだと、私は思います。
近代競馬の結晶といわれたディープインパクトでさえも、無敗ではありません。
アーモンドアイも、それは同じです。
人間の人生も同じで、全てが上手くいくということはありません。

私が2・3着で奮闘する馬に惹かれる、魅力を感じてしまうのも自分の人生で「あと一歩」「あともう少しだった」という経験が少なからずあるからだと思っています。
子供の頃に描いた夢通りに夢がかない、何の不満やストレスもなく生きている人は滅多にいないと思います。
誰しも挫折や苦い経験を味わい、努力が実を結び、成功した時には喜ぶ──そんな人生の縮図を競走馬に重ねている人も、競馬ファンには多いのではないでしょうか?

勝ち続ける馬が人気になるのも、潜在的に夢を見るという意味で心理的には当然といえますが、少し違った視点から2・3着で奮闘する馬にも少し目を向けていただけると競馬をもっともっと楽しむことができると思っています。
そして、競走馬の余生も幸せに過ごして欲しいと思えるはずです。

好きな馬の子供に面影を探したり、牧場に会いに行ったり、お墓参りをしたり……そんな楽しみ方をする競馬ファンが少しでも増えることを願いながら、私はこれからも2・3着で奮闘する馬を応援して競馬を楽しんでいきます。

写真:Horse Memorys、かず

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