エルフィンステークスは、桜花賞へ向けての重要なステップレースだ。
近年は以前ほどクラシックに直結しなくなっていたものの、昨年、4馬身差でこのレースを圧勝したデアリングタクトが大ブレイク。続く桜花賞・オークス・秋華賞もすべて勝利して、中央競馬史上初めて無敗の三冠牝馬に輝き、改めてこのレースの重要性が浮き彫りになった。

今年の出走頭数は12頭。
その中で、抜けた1番人気に推されたのは、外国産馬のエリザベスタワーだった。
父は、2014年の欧州年度代表馬Kingman、母も2015年のドイツオークス馬Turfdonnaという超良血馬で、鞍上も武豊騎手という究極の組み合わせ。キャリア1戦1勝ではあったが、2勝馬や重賞連対馬は、今回の出走馬の中にはおらず、注目を集めた。

一方、2番人気となったのは、こちらも超良血馬のジェラルディーナ。
父モーリス、母ジェンティルドンナが現役時に勝利したGⅠの合計は、国内外合わせてなんと13。さらに、年度代表馬に輝くこと計3度という数字は、現役の良血馬の中でも屈指の存在といえる。未勝利戦勝利から果敢に挑んだ、前走のGⅠ・阪神ジュベナイルフィリーズでは、勝ったソダシから0秒5差の7着に健闘しており、その実績は、今回のメンバーではやや抜けていた。

以下、ヴェールクレール、マリアエレーナ、サルファーコスモスの順で人気は続き、それら5頭が、単勝オッズで10倍を切っていた。

レース概況

ゲートが開くと、クァンタムレルムのダッシュがつかず最後方。そして、エリザベスタワーのスタートもあまり良くなく、後方からの競馬となった。

一方、まず先手を取ったのはルージュグラースで、2番手にデルマセイシ、以下、ナムラメーテル、ディヴァインラヴ、スンリまでの5頭が、半馬身差の等間隔で先行集団を形成。サルファーコスモスが6番手を単独追走し、他の上位人気馬は、すべて中団より後方を追走した。

先頭から最後方までは、およそ10馬身。前半の600m通過は36秒5のスローペースとなり、1番人気のエリザベスタワーは、口向きの悪さからか、やや折り合いを欠くようなシーンが見られた。

3~4コーナーの中間点付近で馬群はさらに凝縮し、6~7馬身ほどの差になったものの、依然として、人気馬2頭は後ろから2番手と最後方のまま4コーナーを回り、レースは最後の直線へと入った。

直線に向くと、先頭をキープしていたルージュグラースが、馬場の中央に進路をとって逃げ込みを図る。坂を駆け上がって残り200m地点まで先頭を守っていたが、スタートで出遅れたクァンタムレルムが内から差を詰め、残り100m地点で先頭に立った。

しかし、馬場の中央より外目から追い込んでくる馬達の勢いが良く、とりわけ、ルージュグラースの外から追い込んできたスンリと、大外に進路を取ったサルファーコスモスの末脚が目を引く。

最後は、ゴール寸前でサルファーコスモスがわずかに前に出て1着でゴールイン。クビ差の2着にスンリ、さらにクビ差でクァンタムレルムが続き、1番人気のエリザベスタワーは9着、ジェラルディーナは10着に終わった。

良馬場の勝ちタイムは、1分36秒0で、上がり3ハロンは34秒3。上位4頭はいずれも33秒台の脚を使っており、完全な上がり勝負のレースとなった。

各馬短評

1着 サルファーコスモス

前走で未勝利を脱出し、格上挑戦が実を結んで2連勝となった。
常に全力投球のタイプが多いキングカメハメハ産駒のため、前走から間隔を開けたことも良かったのではないだろうか。また、道中はスローペースだったため、後方に控えた上位人気馬が、伸びあぐねたことにも助けられた。

しかし、同馬の全兄には2018年のダービーで3着に入ったコズミックフォースがいるという血統だ。
他の兄姉3頭の内、2頭も3勝クラスまで出世している良血馬で、そもそものポテンシャルは高い。

上述の通り、全力投球タイプの可能性があるため、桜花賞への直行が理想かとは思うが、賞金的にはかなり微妙なライン。今後のローテーションが注目される。

2着 スンリ

最低人気の評価を覆す激走で、あわやの場面を作った。デビュー戦と前走の紅梅ステークスは崩れたが、それ以外のマイル戦は4戦して大崩れはない。

キズナ産駒は、これまでにJRAの重賞を8勝しているが、その内の4勝は1~3月に行われた重賞だった。また、産駒がデビューした2019年から2021年1月31日まで、栗東所属の牝馬が芝のレースに出走した場合、累計368走と多くのサンプル数があるものの、勝率12.2%で単勝回収率は132%、複勝率は30.7%で複勝回収率111%(今回のスンリの激走で、さらに数字は伸びる)と、超優秀な成績。芝の1200m~2000mに限れば、さらに成績はアップするため、馬券的にはかなりおいしい種牡馬となっている。

3着 クァンタムレルム

もともとスタートが良くない馬だが、前々走に続き今回も出遅れてしまった。しかし、道中は各馬が避ける内目を通って徐々に差を詰め、直線も馬場の内側を伸びて大接戦に持ち込んだ。

京都競馬場の改修工事が終わるまでは、代替開催によるロングラン開催が多くなるため、こういった荒れた馬場で行われる芝のレースが、今後もかなり多くなると予想される。そういった状況で行われる芝のマイル前後のレースでは、警戒すべき存在になるのではないだろうか。

レース総評

スローからの上がり勝負となってタイムも平凡だっただけに、今回の結果だけを見て「即クラシックで通用!」とは言えないが、では、本番で全く通用しないかといえば、そうとも言い切れない。

というのも、今年の阪神開催は例年より2週間早く始まるため、桜花賞の週は、今回の馬場と同じような時計のかかる荒れた馬場で行われる可能性がある。また、右回りと左回りの違いはあるものの、直線が長く、坂のあるコースという点は、桜花賞が行われる阪神競馬場の外回り1600mと共通する部分でもある。

そもそも、中京競馬場の芝コースは非常にタフなコース設定のため、この時期の3歳牝馬にはかなり厳しい条件。そういったコースの上級条件で好勝負した馬の実力が低いということは、あまり考えられない。

勝てるかといわれれば微妙だが、サルファーコスモスが桜花賞に直行して出走が叶った場合は、1月の紅梅ステークスを圧勝したソングラインと共に注目したい。

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