[ライバル達の名勝負]「BNWの3強」が分け合った三冠・ビワハヤヒデVSウイニングチケットVSナリタタイシン

ライバルがいてこそ名馬は存在する。
プロスポーツ界はもちろん、経済界や芸能界、どんな世界においても「ライバル」とは貴重な存在となる。
競馬界でも同様で、「ライバル」という存在があってこそ、自身の能力も高まってくる。「あの馬に勝ちたい」「あの馬には負けたくない」という厩舎関係者の思いが自然と馬に伝わり、馬の闘志を燃やしてくれる。これぞ、競馬の究極のおもしろさである。そして、ライバルという存在がいてこそ、競馬という競技は奥深く、美しく、果てしなく広がっていくのだろう。名馬を名馬とする「ライバル」の貴重性ハイグレードなレースであるGⅠ戦において「どちらが勝つのか」、「どの馬が勝つのか」という予想ほどおもしろいものはない。こうしたファン心理をくすぐるのも「ライバル同士の熱き戦い」である。

昭和から平成、そして令和における「競馬界のライバル」を写真とともに46例掲載した『ウマ列伝 ライバル達の名勝負』。タマモクロスとオグリキャップ、メジロマックイーンとトウカイテイオー、近年ではイクイノックスとリバティアイランドなど、ファンをワクワクドキドキさせた名馬たちの熱き戦いを振り返る一冊となっている。

今回は、その『ウマ列伝ライバル達の名勝負』から、「日刊競馬」トラックマン久保木正則さんが振り返った『ビワハヤヒデVSウイニングチケットVSナリタタイシン』をご紹介する。


「念願のダービー」を制した柴田政人

サラブレッドが生涯で一度しか出走できない3歳クラシックレース。甲子園をめざす高校野球にも似た闘いは熾烈を極め、ファンはその姿に魅了される。個人的にもっとも印象深いのはB(ビワハヤヒデ)N(ナリタタイシン)W(ウイニングチケット)が3強を形成した1993年。日刊競馬に入社する前で、ピュアな気持ちで競馬に接していたため余計に印象深い。

2着ステージチャンプに5馬身差の圧勝劇でラスト戴冠。GⅠ3勝、全成績[10・5・0・1]と抜群の安定感をみせたビワハヤヒデ(93年菊花賞)写真:フォトチェスナット

3頭の中で一番早くデビューしたのはナリタタイシンで、7月の札幌競馬場芝1000m。当時は新馬戦の距離体型が整備されておらず、短距離中心のレース構成。後に目黒記念を勝つ同馬にこの距離は短く6着に敗れたが、秋の福島開催で1700mへ出走すると初勝利。その後は様々な距離を試して煮え切らない結果が続いたものの、同馬の代名詞となる「切れ味」を活かした競馬でラジオたんぱ杯3歳S(当時)を制覇。この時点でキャリア6戦は時代が成せる業。レースで馬を造る大久保師ならではの選択でもあった。

9月の北海道開催(当時は函館)で新馬戦を迎えたのがウイニングチケット。不良馬場の1200mで5着に敗退したが、ナリタタイシンと同様に2戦目の1700mを完勝。そこから葉牡丹賞→ホープフルSと中山の2000mを連勝し、一躍クラシック候補として注目を浴びるようになる。

対するビワハヤヒデは9月の阪神芝1600mを大差勝ちするとデイリー杯3歳Sを制覇。勢いに乗って挑んだ朝日杯3歳Sは1番人気に支持されたが、エルウェーウィンにハナ差負けの2着。年明け緒戦の共同通信杯も惜敗の2着とし、続く若葉Sで岡部幸雄騎手へ乗り替わると2番手から快勝。安定感のあるレース運びを身につけた。

BNWでの初対決となった皐月賞は弥生賞を制したウイニングチケットが1番人気に支持されたが、後方で折り合いに専念した武豊騎手のナリタタイシンが、直線で一旦は抜け出したビワハヤヒデを差し切り初GⅠ制覇。道中で力み、早めに脚を使ったウイニングチケットはビワハヤヒデに並びかけたものの伸びを欠いて4着。

先行のビワハヤヒデ、中団からマクったウイニングチケットを最後方からの直線一気で差し切ったナリタタイシン。見事な切れ味だった(93年皐月賞)写真:フォトチェスナット

しかし、ファンはウイニングチケットを見捨てず、ダービーでも人気の中心に。

前走とは一転、中団のインでバッチリ折り合いがついた柴田政人騎手とウイニングチケットは、直線で開いた進路をめがけて早めにスパート。内からビワハヤヒデ、外からナリタタイシンが襲いかかり3強の壮絶な叩き合いになるが、マサトの右ムチに応えたウイニングチケットが半馬身差でゴール。

柴田騎手は念願のダービージョッキーとなった。

内側が荒れていたにもかかわらず、内を突いて抜け出し迫るビワハヤヒデに半馬身差で先着、ダービーを制したウイニングチケット。ムチを振りながら「我慢してくれ!」と愛馬に叫んだ(93年日本ダービー)写真:フォトチェスナット

BNWが3強の手本なのは、三冠を仲良く分け合ったこともあるが、競走馬としての個性に長けていたため。ウイニングチケットはバランスの良い漆黒の馬体が魅力で、芦毛のビワハヤヒデは愛嬌のある大きな顔がトレードマーク。ナリタタイシンは430キロ前後と小柄ながら闘争心を直線での爆発力に転化し、後方から小さな体をムチのようにしならせて優等生のレース運びをするビワハヤヒデと、中団から長くいい脚を使うウイニングチケットを狙う。そして、その持ち味をフルに発揮したのが岡部、柴田、武のトップジョッキー。三者三様という言葉がこれほど当てはまる戦いはない。1000m60秒0のペースで逃げたアンバーライオンを筆頭に脇役たちもきっちり仕事をしたあのレースは私の“ベストオブダービー”。その主役たちが最高の3強なのだ。

(文・久保木正則、写真・フォトチェスナット)


昭和から平成、そして令和における「競馬界のライバル」を写真とともに46例掲載した一冊、『ウマ列伝 ライバル達の名勝負』。

製品名ウマ列伝 ライバル達の名勝負
価格定価:1,250円(税別)
ISBNISBN-10 ‏ : ‎ 4867303348、ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4867303344
判型ムック本(21 x 0.9 x 29.7 cm)
ページ数112ページ
出版社英和出版社
目次

Part I 2強対決
オグリキャップVSタマモクロス
トウカイテイオーVSメジロマックイーン
ミホノブルボンVSライスシャワー
ナリタブライアンVSマヤノトップガン
テイエムオペラオーVSメイショウドトウ
アグネスフライトVSエアシャカール
ネオユニヴァースVSゼンノロブロイ
グラスワンダーVSスペシャルウィーク
キズナVSエピファネイア
ドゥラメンテVSキタサンブラック
イクイノックスVSドウデュース
コパノリッキーVSホッコータルマエ
オジュウチョウサンVSアップトゥデイト

Part II 3強対決
オグリキャップVSスーパークリークVSイナリワン
アイネスフウジンVSメジロライアンVSハクタイセイ
ビワハヤヒデVSウイニングチケットVSナリタタイシン
スペシャルウィークVSキングヘイローVSセイウンスカイ
サイレンススズカVSエルコンドルパサーVSグラスワンダー
サクラローレルVSマヤノトップガンVSマーべラスサンデー
テイエムオペラオーVSアドマイヤベガVSナリタトップロード
ロジユニヴァースVSリーチザクラウンVSアンライバルド
アグネスタキオンVSクロフネVSジャングルポケット
エフフォーリアVSコントレイルVSグランアレグリア

Part III 三冠馬対決
ミスターシービーVSシンボリルドルフ
オルフェーヴルVSジェンティルドンナ
アーモンドアイVSコントレイルVSデアリングタクト

Part IV 牡牝対決
エアグルーヴVSバブルガムフェロー
フラワーパークVSエイシンワシントン
ロードカナロアVSカレンチャン
アーモンドアイVSダノンプレミアム
ジェンティルドンナVSゴールドシップ
イクイノックスVSリバティアイランド

Part V 牝馬2強対決
メジロドーベルVSキョウエイマーチ
メジロドーベルVSエアグルーヴ
スティルインラブVSアドマイヤグルーヴ
ウオッカVSダイワスカーレット
アパパネVSブエナビスタ
ハープスターVSレッドリヴェール
ジェンティルドンナVSヴィルシーナ
ブエナビスタVSレッドディザイア
アーモンドアイVSグランアレグリア
ソダシVSサトノレイナス

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