2017年2月。
ゴールドアリュール急逝の報せを受けた翌日、ゴールドアリュール産駒のゴールドドリームがフェブラリーステークスを勝利した。
亡き父に捧げるG1勝利に心動かされた人も多かったことだろう。
今やゴールドアリュールの子どもたちは、ダート界で圧倒的な強さを誇っている。
そこで、ゴールドアリュール産駒にはどんな活躍馬たちがいるのか、今一度振り返ってみたい。
エスポワールシチー
母エミネントシチー
母父ブライアンズタイム
2005年産であり、ゴールドアリュールの初年度産駒。
2009年にかしわ記念、マイルチャンピオンシップ南部杯、ジャパンカップダート、年が明けて2010年にフェブラリーステークス、そして再度かしわ記念とG1/Jpn1を5連勝した。
また、2009年かしわ記念でJpn1・同年ジャパンカップダートでG1と、それぞれゴールドアリュール産駒としての初制覇を記録した。
ゴールドアリュールをG1馬の父にしたのは、エスポワールシチーだったのだ。
2010年にはアメリカのブリーダーズカップ・クラシックにも出走。
結果は10着だったが、その果敢なる挑戦は未来の日本競馬、とりわけダート競馬の希望となった。
2012年、2013年にはマイルチャンピオンシップ南部杯の連覇を達成。
2013年JBCスプリントにてG1・9勝目をあげた。
また、2009年、2010年と2年連続でJRA賞最優秀ダートホースに選出されている。
現在は種牡馬として優駿スタリオンステーションに繋養されており、2017年から産駒がデビュー。
ヤマノファイトが地方重賞3勝、モリノラスボスが2017年ジュニアグランプリを勝利、エターナルモールが2018年ユングフラフ賞を勝利するなど、初年度産駒から地方競馬を舞台に活躍の片鱗をみせはじめている。
スマートファルコン
母ケイシュウハーブ
母父ミシシッピアン
エスポワールシチー同様、2005年産の初年度産駒。
2007年の2歳時にダートで2勝をあげた後、年が明けて2008年、初の芝のレースとなったジュニアカップを勝利。
その後は共同通信杯(7着)、アーリントンカップ(10着)とクラシック戦線を進む。
皐月賞へ出走するが、結果は最下位の18着と苦い思いを経験する。
レース後、小崎憲厩舎へ転厩しダート路線へ。
ジャパンダートダービーでサクセスブロッケンの2着となると、快進撃はここから。
中央最後のレースとなったKBC杯では初の古馬勢との対戦を物ともせず、逃げ切り勝ち。
金沢の白山大賞典でも鮮やかな逃げ切りをみせ、ゴールドアリュール産駒の交流重賞初勝利を飾った。
JBCスプリント2着の後、浦和記念、兵庫ゴールドトロフィー、佐賀記念、名古屋大賞典、かきつばた記念、さきたま杯と交流重賞6連勝。
さらに2010年JBCクラシックから2012年川崎記念にかけては負け知らずで、なんと重賞9連勝を達成した。
そして、ラストランは父の渡れなかったドバイの地へ。
結果はドバイワールドカップ10着だったが、世界の舞台にゴールドアリュールの仔が立っている、それだけで胸にこみ上げてくるものがあった。
2010年、2011年にはNARグランプリダートグレード競走特別賞を受賞。
現在はレックススタッドにて種牡馬生活を送っている。
コパノリッキー
母コパノニキータ
母父ティンバーカントリー
2010年産で、ゴールドアリュール産駒の同期にはクリソライト、グレイスフルリープらがいる。
コパノリッキーの現役生活については、フェブラリーステークス連覇をなくして語れないだろう。
2014年G1初出走となったフェブラリーステークスでは16頭中16番人気と評価は低かった。
しかし蓋を開けてみれば、最後の直線で抜け出し2番人気のホッコータルマエを振り切っての勝利。競馬ファンを驚かせた。
そして翌年の2015年フェブラリーステークスでは、JBCクラシックをレコードで制するなど1年を通じた活躍をみせていたこともあり、1番人気に支持された。
今度は人気通りの勝利で、フェブラリーステークス史上初の連覇を達成。
正真正銘のダート界を牽引する1頭となった。
コパノリッキーは同じレースを何度も勝つというのも印象的で、前述のフェブラリーステークス2回をはじめ、かしわ記念3回、JBCクラシック2回、マイルチャンピオンシップ南部杯2回を勝利で飾っている。
ラストランとなった2017年東京大賞典では、スタートから先頭に立つと最後まで他馬に前を譲ることなく逃げ切り勝ち。
有終の美で自らの現役生活に幕を下ろした。
この勝利をもってコパノリッキーは史上最多となるG1/Jpn1・11勝を成し遂げ、同日に大井競馬場にて行われた引退式の他に、2018年1月京都競馬場にて引退式が行われた。
現在はブリーダーズ・スタリオン・ステーションに繋養されている。
クリソライト
母クリソプレーズ
母父エルコンドルパサー
2010年産で、コパノリッキーと同期。
半妹に2015年エリザベス女王杯優勝馬マリアライト、半弟に2015年神戸新聞杯優勝馬リアファルがいる。
2012年7月のデビュー戦は2着。
その後は1着→4回連続2着→2回連続1着と安定した走りをみせ、ジャパンダートダービーに出走の運びとなった。
最後の直線、抜け出したクリソライトは2着に7馬身差をつけて勝利。
父ゴールドアリュールもこのレースを制していたため、親子制覇を果たした事となる。
その後は船橋のダイオライト記念3連覇(2015-2017年)、海外ソウルのコリアC制覇(2016年)と、地方海外と舞台を選ばない活躍をみせる。
ゴールドドリーム
母モンヴェール
母父フレンチデピュティ
2017年、前日に急逝した父ゴールドアリュールへ捧げるフェブラリーステークス優勝を果たす。
次走に選んだのは父の無念が残るドバイワールドカップ。
結果は14着だったが、スマートファルコンに続きゴールドアリュール産駒2頭目のドバイワールドカップ参戦となった。
その後は帝王賞(7着)、マイルチャンピオンシップ南部杯(5着)に出走。
人気を落としていた年末の中央ダートG1・チャンピオンズカップでは、勝利を不安視する声を一蹴するかの末脚で優勝。
ウイングアロー、トランセンドに続き史上3頭目の同一年のフェブラリーステークス、チャンピオンズカップ(ジャパンカップダート)の制覇となり、2017年のJRA賞最優秀ダートホースに選出された。
その他に、オーロマイスター、シルクフォーチュン、グレイスフルリープ、レッドアルヴィス、ウィッシュハピネス、ワンミリオンス、ララベルなど多くの活躍馬を輩出している。
また、ダートだけではなく芝でもタケミカヅチ、フーラブライドが活躍をみせた。
ゴールドアリュールの死は、競馬界に大きな衝撃を与えた。
これだけの立派な成績を残しているゴールドアリュール産駒。
これからもまだまだ新たな産駒を送り出し、ダート界を盛り上げてくれる……そのはずだった。
ここで何を言ってもゴールドアリュールは戻っては来ない。
だが、ラストクロップを迎えるにはあまりにも早すぎた。
思わず、そう呟いてしまうのだ。
しかし、ゴールドアリュールの血が途絶えたわけではない。
上述したように、ゴールドアリュールには立派な後継者たちがいる。
これからは彼らが、その血を未来へと繋いでいってくれることだろう。
現役時代のみならず、父としてのゴールドアリュールが日本のダート界に与えた影響は大きい。
数多の産駒たちは偉大なる父と比べられながら、いつしかその父を越えてゆく。
それはこれから先、日本のダート馬が世界を渡り歩くための下準備なのかもしれない。
ダート名馬・ゴールドアリュールの血が、日本のダート界を永らく支えていってくれることを願う。
写真・ウマフリ写真班